第3話 千雪覚醒と香奈子

 ハルトは,適当に車をあちらこちら走って,無人の一軒家を見つけて,身を隠し始めた。


 千雪には着る服がない。もともと霊力で服を構築していたのだが,メーララに霊体をいたずらされた後,霊体の服は消えてしまった。ハルトは,そこら辺に放置されている服を適当に見繕って,千雪に与えた。


 この日から,ハルトは,千雪の母乳を毎日1リットルほど飲んだ。でも,千雪は,いっさい,水とか食料も体内に取り入れなかった。そのため,千雪は,自分の体重をを毎日1kgほど減少していった。


 ハルトは,悪霊大魔王から,千雪に『生気』に満ちあふれるものを集めて傍に置いておくように言われている。最初の頃は,生きている草花,昆虫,小動物などなどを採取して千雪の傍に置いた。しかし,今では,彼のネバネバの液体をコップに絞り出してそれを置くようにしている。


 というのも,彼は,毎日,千雪が母乳を絞り出すところを見ている。乳首を絞ってドンブリ容器に母乳を貯める。その姿を見るたびに,彼は性的に興奮してしてしまい,自慰してネバネバの液体を放出するようになったからだ。しかも,千雪は,1日5回ほど搾乳するので,彼もそれに合わせるかのように放出した。


 搾乳の行為は,千雪は手際よくすることができた。また,ネバネバの液体は,翌日になると,すっかり枯れてしまっていた。その理由は,ハルトはよくわからない。


 ハルトは,いつでも千雪に触りたかった。だが,悪霊大魔王から厳重に注意されいる。


 その後,その理由を悪霊大魔王に聞いてみると,千雪の体に無防備に触ってしまうと,千雪は,相手を餌だと思って,寿命エネルギーを奪ってしまう可能性があるとのことだった。


 ハルトは,あまりにびっくりした。寿命エネルギー?? まったく理解が追いつかないものの,彼は,悪霊大魔王の指示に忠実に従った。 


 実は,ハルトは,千雪に保護者だと認識されているので,実際の所,そんな心配は無用だった。悪霊大魔法は,ハルトが千雪の体に触るのを阻止したかっただけだ。仮に,ハルトが千雪の体に触ったところで,ハルトは,充分に千雪の体に触るだけの努力をしているし,ハルトを殺す行為は,共倒れになってしまうので,見逃さざるを得ないのだが,,,


 ハルトは,毎日,あぐら座りをして,霊力を体表に流すというイメージトレーニングをした。悪霊大魔王の指示だ。悪霊大魔王も霊力のことはよくわからないけど,基礎的なトレーニング方法は,普段から千雪がしていたので見知っていた。それをハルトに教えただけのことだ。


 悪霊大魔王と名乗っていはいるが,その本体は,千雪している指輪の亜空間の中にいる。今,千雪の周囲にいる悪霊大魔王は,その小分体だ。日替わりで,何千という小分体の中から選べて,終日,千雪の周囲に纏わり付いて,千雪の玉の肌に触る連中を懲らしめるのが役目だ。

 ただし,千雪がこの月本国に来てからは,代わりの小分体がいないため,已むなく,同じ小分体が千雪の周囲を守っているという状況だ。



 一軒家に来て2週間目。


 この一軒屋の周囲の状況が徐々に変化していった。草木が枯れ出したのだ。最初は,小さな変化だった。千雪のいるところを中心として半径1メートルから始まった。次の日は,半径2メートルの範囲になり,その次の日は,半径3メートルになった。


 千雪は,自分の意識とは関係なく,生気吸収能力を目覚めさせた。


 だが,この変化は,まだ顕著ではなく,ハルトもこの変化に気がつかなかった。ハルトは,千雪の変化よりも,自分の変化に気がつきつつあった。体内の丹田の位置に,軟式テニスボールと同じような大きさの核のようなものが出来ていて,そこから,体内に何かが循環する感覚を掴んだ。


 ハルト「もしかして,これが『霊力』というものか?」


 ハルトは,1日10分間しか,悪霊大魔王と会話することができない。だから,悪霊大魔王のアドバイスを,何度も試行錯誤しなければならない。それでも,この日,ハルトは,『霊力』を感知することができた。ハルトの霊力使いとしての始まりだった。



 一軒家に来て3週目。


 千雪は,徐々に『飢餓感』を感じ,それを強めていった。その飢餓感を満たすため,自分の中心から半径10メートル,20メートル,30メートルと,範囲をさらに拡げていき,草木を枯らしていった。


 千雪は,草木の生気をどんどんと吸収していき,失った霊力を徐々に取り戻しつつあった。


 一方,ハルトは,体内の霊力を,体表に移動させることができるようになり,さらに,その霊力を硬い物質に変質させる訓練をしていった。



 身を隠し始めて1ヶ月が経過した。


 千雪は6歳の知能しかないのに,頭が何か薄らとしたものに覆われいるのを感じた。もう少し,霊力のパワーを引き上げれば,スッキリすると感じた。それに,飢餓感も全然解消されなかった。千雪は,思い切って,生気吸収の範囲を一気に拡げた


 その範囲は,半径1km,2kmへと拡がり,とうとう,半径10kmにも及んでしまった。その周辺には樹齢2,3百年の杉林が群生していたのだが,そのすべてが完全に枯渇してしまった。幸い,人はいなかった。でも,野ねずみ,うさぎ,鳥類,鹿,昆虫類などの動物は,ことごとくその生気を奪われてしまった。


 パシューーン!(千雪の頭の中に響いた音)


 その音と共に,頭の中にあったモヤモヤが一気にはじき飛ばされた。


 千雪の口が,微笑みの形に変化した。千雪は,この月本国に転移する前の自分を完全に取り戻した。

 

 千雪は,この1ヶ月の断食のような生活で,Gカップの胸に縮小し,お尻の脂肪も大幅に減って,尻周りは105cm程度にまで縮小した。それでもまだ大きい方なのだが,均整の取れた,かつ常識的な性感的な体に変化した。


 千雪「やっと,頭がすっきりした感じだわ。いままで夢を見ていたみたい。ハルト,今の状況を詳しく説明しなさい」

 

 ハルトは,千雪が知的障害から回復したと思って,超嬉しくなった。


 ハルト「はい!千雪様!」


 ハルトは,自分の素性,暴力団に追われていること,この場で1ヶ月もの間,このボロの一軒家から一歩も外に出なかったことなどを説明していった。

 

 千雪「なるほど,,,もう隠れる必要もないわ。この場所をあなたの仲間に教えてあげて。彼らは勝手にここにくるでしょう」

 ハルト「え? それでいいのですか? われわれは,銃も刀もないのですよ」

 千雪「ハルトの体は,もう銃でも刃物でも傷つくことはないわ。この月本国では,その未熟な霊力操作でも,最強の戦士になったと思うわ。問題は,人を殺す勇気があるかどうかだよ。その勇気はあるの?」


 ハルトはブルブルと震えた。「殺す??」


 ハルト「ちょっと,,,ないです」

 千雪「私の奴隷なら,相手をゴキブリと思って殺しなさい。何もためらわないで!!ここに何人来るかわからないけど,ひとりだけ生かしておいといてあげる。そいつを殺しなさい。その霊力の体で殺しなさい。奴隷としての第一歩です」

 

 ハルトに拒否権はない。彼は覚悟を決めた。この場所を知らせるには,奪った携帯の電源を入れるだけいい。早速,ハルトは,奪った6台の携帯の電源を入れた。GPSは自動でオンの状態となった。


 ハルトは,これからいったい,どうなるのか不安だった。この場所は,東都から地道で3時間ほど離れた場所だ。高速でも2時間はかかる。気持ちの整理をするには,充分な時間だった。


 

4時間後,,,


ブーブーブー!!ブーー!!ドードーー!!ブーー!!


 車が4台,この一軒家に集合した。『木の葉会』だった。東都本部長のカイラ,部下のチョウキチ,ミチルたちもいた。


 総勢16名の団員たちだ。


 カイラ「よし,この建物を包囲して,襲撃しろ」

 長吉「了解です。本部長」


 長吉は部下に命じて,周囲を包囲させた。皆,拳銃を持っている。かつ,防弾チョッキも着用していた。


 長吉は,注意深く玄関のドアを開けた。


 長吉は,手のサインで,さらに奥に行くように部下に合図した。部下は,恐る恐る奥に移動していった。


 奥の部屋では,千雪とハルトが並んで座禅の姿をしていた。何やら瞑想をしてるように見えた。


 部下たちは,拳銃をその男女に向けた。


 部下「動くな!さもないと撃つぞ!」


 そうは言っても,千雪とハルトは,もともとまったく動いていなかった。 


 その後,他の部下かちが集まってきて,長吉も千雪とハルトを見た。ハルトは,パンツ1枚の姿で,千雪は,空手着のようなものを着ていた。ただし,それは霊力で形勢されたものだ。千雪もハルトも武器は持っていなかった。その必要もなかった。


 長吉は,部下に,本部長に来てもらうように言った。安全が確保されたと判断した本部長は,千雪とハルトの前に現われた。


 本部長「ハルト,久しぶりだな。よく,1ヶ月も隠れていたな。それに,この女,あの巨乳の女か?ずいぶんと,おっぱいが縮小してしまったな。おい,女,俺にも抱かせろ」


 千雪「どうぞ。そのつもりよ。みなさんも裸になってください」

 本部長「ものわかりがいいな。おい,携帯でいいから,ビデオを撮れ。AVにすれば少しは金になる」


 3名ほどが,高性能な携帯を取り出して,録画を始めた。


 本部長「ハルト,逃げるなよ。逃げれば,撃ち殺す」

 ハルト「逃げませんから,殺さないでください」

 本部長「今,すぐには殺さん」

 

 本部長は,ハルトが,パンツ姿で武器を持っていないので,安心しきった。ハルトをその場で放置した。


 本部長「おい,女,抵抗すると蜂の巣になるぞ。俺の言うことを聞けば命はけは助けてやろう」


 本部長は,その場で服を脱ぎ始めた。だが,彼は,周囲の異変にまだ気がついていなかった。


 部下たちは,その場で,いっさい身動き取れない状態にされ,声も発することもできず,徐々に年齢を重ねていき,ミイラ状態になって死亡した。その後,さらに灰燼にまでされた。


 ダン!ドサ!ーーー(拳銃や服などが床面に落下する音)


 本部長は,その物音で後ろを振り向いた。


 本部長「え?おい? どうした? 仲間はどこに行った?」


 本部長が,状況をまったく把握しない中で,千雪はハルトに一言命じた。


 千雪「ハルト,お仕事よ」

 ハルト「・・・」


 ハルトは,本部長意外の組員全員が,ミイラになって,さらに骸骨にまでされて,とうとう灰燼にまでされたことを知った。でも,その驚愕を感じている暇はなかった。


 ハルトは,つい先ほど,千雪から霊力を体表に流して,体表を鋼鉄状態にて,手刀部を,鋭利な刃に変化させる指導を受けた。つけ刃だが,なんとかそれを実現させた。


 本部長は,ことの重大さに初めて気がついた。


 本部長「え?やつら,どこに消えたんだ??」


 ハルトは,すくっと立ち上がり,自己最高の速度で本部長に迫った。その速度は,ハルト本人にも気がつかないうちに,3倍速を達成していた。


 シュパーー!!


 本部長は,首と胴体が離れた。だが,それよりも先だって,千雪が生命エネルギーを先に奪っていたので,骸骨状態の本部長の首を刎ねた。


 コロコロコロ,,,


 頭蓋骨が転がった。千雪は,灰燼にまでするまでもないと思い,そのまま放置しておいた。


 ハルトは,すぐに,携帯の電源を切ってまわった。財布,貴重品など,金目のものはすべて鞄に入れた。


 ハルト「千雪様,これからの予定はどうしますか?」


 千雪「あなたの組って,どれだけ大きいの?」

 

 ハルト「総勢500名くらいにはなるでしょうか。直系だけのメンバーであれば,100名くらいです」


 千雪「あなたの組織で,トップとは言わないけど,トップ5くらいには入りなさい。期間は,そうね。3ヶ月ってとこね。どう?できる?」


 ハルト「3ヶ月ですか,,,尋常な方法では無理ですね。でも,考えてみます。ところで,千雪様,これからどうしますか?」


 千雪「私を東都の自宅まで送ってちょうだい。私は,これから離ればなれになった仲間を探すわ,,,あっ,そうか。標的魔法陣で呼びつければいいのか,,,じゃあ,慌てることはないわね」


 ハルト「では,一番良さそうな車で自宅まで送らせていただきます。死体はそのままでいいのですかか?」

 千雪「いいわ。別に隠すこともないわ」

 ハルト「千雪様,了解しました」


 ーーー


 ハルトは,車を選んだ。ところが,一番いい車の後部座席にひとりの女性が乗っていた。


 ハルトは,後部座席側のドアを開けて,その女を引きずり出そうとした。


 ダーン!ダーン!!


 ハルトは,銃弾の勢いで後方に倒れた。


 その女は,ゆっくりと車から出てきた。女は黒のきついサングラスを掛けていた。そのためか,後から来た千雪に気づくのが遅れた。


 千雪「あーあ,人を殺したわね,あなた,車載カメラには,今の映像が映っているかもしれないわよ,フフフ」


 女「うるさい。お前も死ね!」


 ダーン!ダーン!


 女は容赦なく拳銃の引き金を引いた。躊躇わずに引き金を引けるということは,何度も人を殺してきたのかもしれない。


 ポタッ,ポタッ


 銃弾の弾が地に落ちた。


 女「え?何?弾が当たらない!!」


 ダーン!ダーン!ダーン!ダーン!(拳銃が火を噴いた音)

 カチ,カチ,カチ(拳銃が空回りするする音)


 彼女は,何度も拳銃の引き金を引いた。4発は千雪の体に向けて発射した。しかし,4発とも,空中で何かに阻害されて弾が地に落ちた。


 今度は,ハルトが起き上がってきた。


 ハルト「あーあ,銃弾で服に穴が開いたぜ。困ったな」


 女は,言葉を失い,茫然自失の状態に陥った。


 女「え??ど,どうして??拳銃の弾を防げるとでもいうの??」


 ハルト「千雪様,この女を殺してもいいですね?」


 千雪「問答無用で銃で撃つ女などいらないわ。殺しなさい」

 

 ハルト「はっ!かしこまりました」


 

 このハルトと千雪の問答に,女は顔を真っ青に変化させた。拳銃でも死なない相手にどうすればいいのか??女の判断は早かった。


 女は,護身用の拳銃をすてて土下座した。かつ,なんども地面に頭を叩きつけた。


 女「お待ちください!!お待ちください!!私が間違っていました。お許しください。お許しください」

 

 ハルト「残念だが,お前はここで死ぬ!最後に一言,言葉を発することを許す」


 女「私は,本部長の情婦です。私を生かしてくれたら,あなたを本部長の地位につけてあげます。私は役にたちます。役に立ちます。お金も3000万円あります。それで,命を買わせてください」


 ハルト「3,3000万!!千雪様,どうしましょう?」


 千雪「3000万円か,,,そうね。足りないわ」


 女「ほかに,できることがあれば何でもします!!」

 千雪「・・・,そうね,,,女性の奴隷がひとりほしいかな? どうせなら,頭がピカイチの奴隷がいいかな?」

 女「います!います!!妹が東都超越大学で学業No.1です!!」


 ハルト「千雪様,東都超越大学は,この月本国で最高峰の大学ですよ。そこで学業No.1とは,これは,もう,超天才と言ってもいいのではないでしょうか?」

 女「そっ,そうですよ!うちの妹は,ほんと,超天才さんです!千雪様の奴隷として,充分に活用いただけると思います!!」


 千雪「じゃあ,殺すの止めにしましょう。とりあえず,この女の家に行きましょうか」


 ハルト「了解しました,千雪様」


 ハルトは,女に向かって命じた。


 ハルト「女,お前の家に案内しろ」


 女「はい,わかりました!!」


 女は,東都本部長であるカイラの情婦だ。名を小百合という。27歳。知略に優れているため,本部長の片腕として手腕を発揮してきた。


 東都に向かう車の中で,『木の葉会』を乗っ取る手立てについて小百合からアイデアをいろいろと聞いた。千雪は,小百合がいろいろと使える人材だと思った。


 あの一軒家の出来事については,3人で口裏合わせを行った。すべて,架空の『悪霊大魔王』のせいにした。最初の事件も同様に『悪霊大魔王』のせいにすることにした。


  小百合は,仕事柄,携帯を3台持っている。私用,仕事用,そして情婦としての専用電話だ。その専用電話はもう不要なので,千雪への連絡用に千雪に渡した。


 千雪「携帯か,,,使ったことないわね,,,」


 千雪は,小百合に標的魔法陣を植え付けた。


 千雪「小百合,私からの連絡は,その胸に刻んだ魔法陣を見ればいいわ」

 小百合「千雪様への連絡は,その携帯でいいですか?」


 千雪「あなたの妹が私の奴隷になるのですから,妹にその奴隷を渡せばいいわ」


 小百合「あの,申し上げにくいのですが,妹は,上級官僚を目指していまして,確か,すでに内定が決まったとか言っていたようです。妹は,香奈子というわ。今,23歳で,経済学の修士過程を終了しています。すでに,霞ヶ関の,どこだったかしら?まあいいわ,どこかの省庁に就職が決まったって,喜んでいたわ」

 千雪「Ok,じゃあ,その香奈子を呼んできてちょうだい」


 小百合「わ,わかりました。でも,妹は我が強くて,私の説得では同意しないと思います。妹の説得にお力添えください」


 千雪「ハルト,最初の仕事よ。彼女の妹を私の奴隷となるように説得しなさい。そんな簡単な仕事もできないと,お前は不要よ。私の生命エネルギーの足しにでもなりなさい」


 ハルトは,冷や汗が出てきた。なんと,とんでもない仕事がハルトに降ってきたのだ。


 ハルト「千雪様,奴隷といっても,千雪様の電話当番だけでは,そんなエリートの女性は不要ではないでしょうか? 電話の留守番係でいいなら,バカでもアホでもいいじゃないですか?」


 千雪は,狭い車の中で右足をあげてハルトの頭を足げりにした。


 千雪「バカ,アホと言わないでよ。これまで,さんざん言われてきたのよ。とにかく,何が何でも説得させなさい。力づくはダメよ。報酬は,半年間はただ働きが条件ね。その後は実績しだいかな??とにかく,力づくはだめよ。説得に失敗したら,二人とも命がないと思いなさい」


 小百合もハルトも顔が真っ青になった。

 


 ー 東都の東部高級住宅街,小百合のマンション ー


 小百合のマンションは,名義人は小百合だ。本部長から買ってもらったものだ。2LDKで,4人家族が住むにはちょうどいい広さだ。


 千雪「ここが,私の家なのね。意外といいじゃない」

 ハルト「いえいえ,ここは,小百合さんの家です。われわれは,居候になります」


 コツン!


 千雪は,霊力の腕で,ハルトの頭を叩いた。


 ハルト「え?今のは何ですか?」


 千雪「知らなくていいわ,そんなこと!」

 

 小百合「香奈子には,事前に伝えてありますので,もうまもなく香奈子がここに来ます」


 千雪「じゃあ,私は,奥の部屋で休んでいるわ。説得に成功したら呼んでちょうだい。失敗したら,そうね。ここから死にも狂いで逃げなさい。私に殺されないようにね。でも,標的魔法陣を埋めているから,絶対に逃げれないけどね,ふふふ」

 

 千雪は,奥の部屋でベッドに潜り込んですぐに熟睡した。


 ピンポーン!!ベルがなった。香奈子が来た。


 香奈子「お姉さん,一生の一大事って,何なの?慌てて,タクシー飛ばして来たわよ」

 小百合「あらあら,ご苦労様だったわね。まあ,ソファに座ってちょうだい。おいしいコーヒーでも沸かすわね。あ,そうそう,彼,ハルトっていうの。なんでも,腕っ節は,天下一だそうよ。あなたとは,住む世界が違うかもしれないけど,せっかくだから,少し,おしゃべりしたら?」


 ハルト「へへへ,お嬢様,すいませんね,ここまで,ご足労いただいて」

 香奈子「え?用事があるって,あなたと関係があるのですか?」

 ハルト「大いにあります。早速ですけど,わたしから香奈子様にお願いがあります。決して悪い話ではありません。あなたの就職の話です」

 香奈子「就職?私は,科学先端省に就職が内定しています。来月から登省することになっています。その就職と関係があるのですか?」

 

 小百合「まあまあ,香奈子,落ち着いてちょうだい。コーヒーでもどうぞ」


 小百合は,沸き立てのコーヒーを香奈子に渡した。


 香奈子「姉さん,ありがとう」


 香奈子は,コーヒーを飲んで一息入れた。


 ハルト「では,香奈子さん。話を続けます。実は,女性で,名前は千雪,歳の頃は15,16歳,美人ですが,何を考えているのか,まったくわからない女性がいます。千雪様は,携帯の扱いが苦手です。そこで,千雪様の奴隷,,,イヤ,奴隷ではなくて,『秘書』が必要なのです。彼女が言うには,頭がピカ一というのが条件です。その条件に香奈子さんがピッタリなのです」


 香奈子「話が見えないわ」

 ハルト「つまり,科学先端省の仕事をやめて,千雪様の奴隷,,,ではなくて,秘書になってもらいたい,ということです」

 香奈子「答えは決まっているけど,一応聞くわ。その秘書の仕事って何をするの?」

 ハルト「今は,具体的に決まっていませんが,当面は,千雪様の電話当番だそうです」

 香奈子「エリートの私を誘うということは,よっぽど給与がいいのよね?」

 ハルト「半年は,無給のようです。その後は,実績になります」

 香奈子「姉さん!!こんな話を聞かせるため,私を呼んだの?!!」


 小百合「香奈子,落ち着いて。話の趣旨はそうだけど,まだ,何も説明していないわ。まず,しっかりと,話を聞いてから判断してほしいの。ほら,ケーキ持ってきたわよ。まず,ケーキでも食べて,糖分を補給しなさい」


 小百合は,話の内容をケーキでごまかした。


 香奈子「ケーキでごまかされないわよ。つまり,その子の携帯の留守番係をして,今は,半年は無給??はっ!!冗談言わないでよ!!月が地球に落ちてきたって,そんなバカなこと引き受けるわけないでしょ!!」


 小百合は,ため息をついた。予想通りの香奈子の返事だった。

 

 小百合「香奈子,あなたの気持ちも分かるわ。でも,私たちは,その子のとんでもない能力を見たのよ。彼女には,とんでもない潜在能力があるの。もしかしたら,何億,いえ,何十億,何百億だって稼ぐ力があるわ。あなたが彼女の秘書をすれば,いくらでも,大きな仕事ができるはずよ。決して,悪い話ではないわ」


 香奈子「姉さん,無理よ。私は,この目で見ていないし,それに,上級公務員試験に受かるために,どれだけ努力したと思っているの!!バカもやすみやすみにしなさしよ。携帯の留守番係なら,私でなくても,バカでもアホでも犬畜生でもできるわよ!!」


 小百合「確かに,あなたにはそれを言うだけの資格はあるわ。でも,世の中,受験勉強だけしてきたって,決して幸せになれるものではないのよ」


 香奈子は,さげすんだようなため息をついた。


 香奈子「姉さん,あなたは,そのDカップの巨乳と化粧技術で,こんな立派なマンションに住めるほどに頑張ってのし上がってきたのでしょうけど,それは私の人生とは違うわ。私は,この明晰な頭脳で生きていくのよ。姉さんと一緒ににしないでちょうだい!!」


 ハルトは,クスっと笑った。


 香奈子「何が可笑しいの?」


 ハルト「いやいやすまない。別に,あなたのことを笑ったわけではない。Dカップを巨乳というのが,ちょっとオーバー過ぎて,,,いや,すまない」


 ハルトは,何度か咳をしてから,話を続けた。


 ハルト「香奈子さんには,いずれ千雪様に会っていただきますが,今,千雪様は,床についたばかりです。もう少し寝かせてあげたいと思います。興味がないと思いますが,私と千雪様の出会いについて,聞いてもらいたい。少しは,千雪様のことが,千雪様の能力が分かると思う」


 香奈子「まあ,いいわ。ケーキを食べる時間だけ,話を聞くわ」


 小百合は,もう一個,追加でケーキを香奈子に差し出した。

 

 ハルトは,千雪との出会いについて語りだした。


 ハルト「あれは,もう1ヶ月も前のことです。私は,リーダーが犯した殺人の罪をかぶられて,山中に捨てられて,殺されるところでした。偽の遺言書も用意されられました。私はまだ17歳です。これで人生が終わるのか思うと悲しくなりました。


 私は,これでも,薬の販売ルートの拡販に,それなりに頑張ってきたつもりです。中卒で学歴のない私だが,それなりに一生懸命考えて効率のいい拡販方法を展開してきました。最新の注意を払って客からの信用も勝ち取ってきて頑張ったつもりです。


 それなのに,それなのに,その場で殺されるのかと絶望を感じました。


 そのときでした。晴れなのに雷がなって,全裸の少女が天から降ってきたたのです


 香奈子は,バカにしたような目つきをハルトに向けて,ケーキを口に頬張った。


 ハルト「信じられないでしょうが,本当のことです。彼女は,とても美人でした。仕事がら,美人は山ほど見てきた。客に絶世の美女をなんどもあてがったこともあります。だが,その女性,千雪様は,私がこれまで会った中で,最高に美人だ。たぶん,今後も,千雪様を超える美女に会うことはないと思う」


 ハルトは,手元にあった,水を一口飲んで,話を続けた。


 ハルト「私は,思わず,天から降ってきた彼女に,千雪様に,声を掛けました。『助けてくれ!!』と。その時は誰でもよかった。私を助けてくれるなら,少女でも,犬でも,猫でもよかった。


 リーダーは,私が騒ぐのを見て,私の後頭部を打って気絶させました。リーダーは,手に拳銃を持っていたが,私を撃つことはしなかった。なぜ,リーダーは,私をすぐに撃たなかったのか??今でも,時々,それを考えることがあちます」


 小百合「その答えは見つかったの?」


 ハルト「私の予想では,あの状況では,とても処刑する気にはなれなかったのではにかと思っています。何せ,絶世の美女が天から降ってきたのです。全裸で。しかも,その胸はDカップが巨乳というなら,それは爆乳,いや,超ウルトラ爆乳です。たぶん,片方の部分だけで15kgくらいの重さになっていたかもしれません。それに,乳首の大きさだって,直径と長さが10cm以上もあるようでした」


 香奈子「うそよ!!胸の形はともかく,だいたい人間が何で天から降ってくるのよ! あるわけないでしょ!!」


 小百合「香奈子,信じなくていいけど,彼の話をきちんと聞いてあげてちょうだい。プリンもあるわよ」


 香奈子は,プリンにごまかされた。


 香奈子「じゃあ,プリン持ってきてちょうだい。話を聞いてあげるわ」


 ハルト「まあ,なんせ,千雪様の姿は異様でした。そんな状況では,とても,拳銃の引き金を引くという考えは消えてしまったと思います。


 その後,たぶん,20分後に私は目覚めました。わたしは,まだ生きていました。手首のロープをなんとか解いて,足首のロープも解いて,自由を取り戻しました。そして,千雪様のところに駆け寄った。千雪様の周囲には,6名の組員たちが気絶していました」


 小百合「え?気絶していた?死んでいなかったの?」


 ハルト「死んでいませんでした。気絶していました。息がありました。だから,俺は,慌てて,ロープを引っ張り出して,6名の手首と足首を縛った。意識が回復したら困りますからね。そして,千雪様に,どうして,こうなったかを聞きました。でも,千雪様は,この時,知能障害がありました。自分のことを6歳だと,そして組員を寝かせたのは,千雪様の友達だと言っていました」


 香奈子は,この話は信じなかったものの,淡々と過去を振り返って話すハルトの言葉に,だんだんと聞き入ってしまった。


 ハルト「私は,千雪様に,その友達と話ができないか聞いてみた。すると,話ができました。その友達は,悪霊大魔王と名乗りました」


 小百合「え?悪霊大魔王? 架空のものじゃなかったの?」

 ハルト「実際に存在する化け物です。その悪霊大魔王は千雪様の忠実な部下でした。悪霊大魔王は,『木の葉会』の追跡能力を充分に把握していた。それで,私に,千雪様を1ヶ月,だれにも会わせないようにしなさいと命じられました。この1ヶ月で,千雪様は,知能障害を克服し,能力も回復すると言っていました」


 小百合「それで,あの無人の一軒家に閉じこもっていたの?」

 ハルト「そうです。食料も水もいっさい購入しませんでした。周囲の偵察以外には,一歩も外にでませんでした」

 香奈子「じゃあ,どうやって飢えをしのいだのよ?」

 ハルト「千雪様の母乳です。毎日,1リットルほど飲まされた。それだけです。千雪様は,一切,食事は取らなかった。巨大な胸は,日に日に小さくなっていきました。ある程度,小さくなていったら,今度は,お尻の肉が減少していきました。それだけではありません。あるときから,周囲の草木が枯れ出しました。それは,日に日に広がっていった。今では,半径10kmほどにも,その枯渇が広がってしました。これは,千雪様か,もしくは悪霊大魔王様が行った御業だと思っています」


 小百合「確かに,あの一軒家の周囲だけが枯渇していたわね。それって,いったいどういうこと?」

 ハルト「私が思うに,生気を吸収したと思っています。そして,今日も,千雪様を犯した連中は,千雪様か悪霊大魔王様によって,生気を吸収されて,干からびたミイラのようにされてしまったのだと思う」


 ハルトは,自分の携帯を出して,一枚の写真を示した。


 ハルト「これを見てくれ。この骸骨が本部長で,部下たちは灰燼にまでされてしまった」


 香奈子は信じなかったが,小百合は別だ。


 小百合「間違いないわね。この服は,そうよ。でも,服もぼろぼろね。どういうこと?」

 ハルト「私にもわかりません。だけど,予想するに,服にも生気,生命エネルギーのようなものがあって,それが奪われたのではないかと考えています」

 小百合「え?物質からも生命エネルギーがあるの?」

 ハルト「生命というから誤解を招くが,物質からもなんらかのエネルギーを奪ったものと考えている」

 小百合「ハルトの説明は,下手なりによく理解できるわ。続けて」


 ハルト「それから,私は,小百合さんに拳銃で撃たれて,千雪様も拳銃で撃たれた」

 

 香奈子「え?何?それ??」


 ハルト「私や千雪様が超人でなかったら,香奈子さんは,殺人者の妹ということになる」

 香奈子「うそー!!」


 香奈子は小百合を見た。小百合は否定しなかった。


 小百合「でも,あのときは,私は,殺されると思ったのよ。正当防衛よ。正当防衛!!」


 ハルト「確かに,そうだ。小百合さんを確実に殺す予定だった。もともとは,そちらから殺しに来たのだからな,正当防衛といえるのは,われわれのほうだ」


 香奈子「その話がほんとうなら,その状況で,姉さん,よく命助かったわね。何か,裏取引したんじゃないの?お金と,,,もしかして,私??」

 

 ハルト「ご明察の通りだ。3000万円で小百合さんを生かすことにした。それとあなた,香奈子さんだ。香奈子さんを千雪様の秘書,いや,正確には奴隷になってもらうのが条件です」


 香奈子「はーぁ?? 奴隷?? 姉さん??私を売ったの?もし,私が拒否したらどうなるの?」


 ハルト「香奈子さんが拒否するか同意するかは自由です。でも,拒否されると,私と小百合さんは千雪様に殺されることになる」


 香奈子「千雪様って,まだ15,16歳なんでしょう?なんで怖がるの?戦えば,あなたが勝てるじゃないの?」

 

 ハルト「あなたは,わからないと思うが,私は,一目みれば,その人が何のためらいもなく人を殺せるかどうかがわかります。小百合さんもその一人です。そして,千雪様もそうです。何人も,いや何十人も殺してきたことのある目をしています。千雪様のその目は,絶対的な強者の目です。王者の目です!」


 香奈子「つまり,姉さんの犯した愚かな行いの償いとして,私は人身御供として千雪様に奴隷として奉公しないといけない,ということ?」

 ハルト「簡単に言うとそうなります。でも,拒否する権利はあなたにもあります。決して無理強いはしません」

 小百合「香奈子,ごめんね。私のせいでこんな,,,」

 香奈子「私は,まだ同意していないわよ。なんで,姉さんのせいで,私が一生,棒に振らなきゃならないのよ。自分で犯した罪は自分で拭き取ってよ!!」


 ハルト「香奈子さんの言うとおりだ。もう,説得はやめよう」

 小百合「え?私たち,殺されてしまうのよ。それでもいいの?」

 ハルト「ああ,かまわない。香奈子さんの未来のほうがよっぽど価値があると思う。香奈子さん,この話,拒否していい。いや,拒否してください。でも,最後に千雪様に一目だけ会ってもらいたい」


 香奈子「ほんとうに,いいの??」

 ハルト「かまいません」

 香奈子「・・・,わかりました。では,千雪という女性に会わせてください」


 ハルトは,千雪を呼びに行った。千雪は,寝ぼけまなこで部屋から出てきた。千雪は,裸体で出てきた。


 香奈子「え??裸??なんで??」


 香奈子は,寝ぼけまなこだが,その美貌に,女性ながらびっくりした。おっぱいも巨乳のGカップだ。乳首はごく普通の大きさになっていた。お尻周りが105cmと,やや大きいが,それでも,かなり均整の取れた,性感的な肉体をしていた。


 千雪「ハルト?なんで起こすのよ。気持ちよく寝ていたのに」

 

 ハルト「小百合さんの妹である香奈子さんに来てもらいました。すでに,就職がどこかの省庁に決まっているとかで,千雪様の奴隷になることを拒否されました」


 千雪「なんで拒否したの?」


 千雪は,まだ思考が半分寝ていた。


 ハルト「ですから,今,申し上げたように,香奈子さんは,来月からどこかの省庁に就職が決まってしまったのですから,千雪様の秘書にはなれないとのことです!!」


 ハルトも半分やけになった。殺されるならそれでいいと開き直った。


 千雪「なんで??それでいいじゃない。どこかの省庁に就職すればいいじゃない。それで私の奴隷もすればいいじゃない。どうせ,無給の電話当番しか仕事がないんだから,どこかの省庁から給与もらえればラッキーだわ」

 

 小百合「はーーあ??」

 ハルト「ええーー??奴隷って,専属じゃないのですか?」

 千雪「べつに,どうでもいいのよ,,,」


 小百合とハルトは,閉口した。これから,このようなわけのわからない命令を遂行していくのかと,悲しくなってきた。


 香奈子も,びっくりした。仕事しながらの電話当番でいいなら,拒否する理由は何もない。

 

 香奈子「あの,千雪様,確認ですけど,科学先端省の仕事をしながら,千雪様の電話当番をすればいいのですね?」

 千雪「そうよ。半年は無給ね。お金を稼ぐようになったら,少しは,支払えると思うわ」

 

 千雪は,小百合からもらった携帯を渡した。


 千雪「この携帯の当番をしてちょうだい。電話の内容やメールの内容を魔法陣で連絡してほしいの。それだけよ」

 香奈子「魔法陣??」


 千雪は,亜空間から,魔法石を頂いた指輪と,転送魔法陣が描かれた10cm角の紙を渡した。


 千雪「携帯に連絡がきたら,その内容を,小さい紙に書いて,この転送魔法陣の上に置くの。そして,その指輪の魔法石を魔法陣に接触してちょうだい。そうすれば,その紙は,私の手元に着くわ。それが仕事よ。至急の連絡以外は,仕事が終わってから連絡すればいいわ」


 香奈子「その魔法って,ほんとうにそうなるのか,後で確認させていただきますが,その程度の仕事量でいいのなら,千雪さんの秘書になってもいいわ」


 ハルト「千雪様,あの,,,,文句は言いたくないのですが,現在の仕事と兼務でいいなら,兼務でいいと,なぜもっと早く言ってくださらなかったのですか?」


 千雪「バカね。私がそこまで気が回るわけないでしょ。ハルトが事前に確認すればいいだけでしょ」

 

 ハルトは,反論できなかった。


 とにかく,ハルトと小百合の首が繋がったことは確かだった。


 千雪「秘書の話はどうでもいいわ。小百合,あの一軒家の事件は,明日には,警察と木の葉会には連絡しなさい。それと,3000万円は,ハルトを出世させるために使いなさい。ハルトは,身元がばれないように,くれぐれも注意してちょうだい。それと,不死身なこともできるだけ隠しなさい。いざっというときにその力を発揮するようにね。ハルト,小百合,理解しましたか?」


 ハルト「それは,何度も聞かされていますから,充分に理解しています」

 小百合「私も理解しています」

 千雪「それと,秘書の香奈子,あなたも理解しましたか?」

 香奈子「はい,理解しました。ほんとうに,魔法がうまくいくのか,わかりませんけど」


 千雪は,香奈子にも,標的魔法陣を胸の部分に植え付けた。千雪から香奈子への連絡用だ。


 千雪「Ok,では,各自,がんばってね。私は,自分の家に戻るわ。あ,そうそう,あの奥の部屋,私専用にしてちょうだい。いつでも無人の状態にしてね。鍵を外側から掛けといてちょうだい」


 千雪は,ため息をついた。やっと,ひと仕事終えた感じだ。


 千雪「やっと,自分の家に帰れるわ。バイビー」


 千雪は,転移魔法を発動してその場から消えた。


 ハルト「え??消えた??」

 小百合「ハルト,これって,どういうこと??千雪様,消えたわ?」

 ハルト「私も初めて見た,,,」

 香奈子「千雪様は,自分の家に帰るって,言っていたわね。ということは,SFの世界にでてくる,転移魔法っていうやつ??」

 ハルト「やっぱり,千雪様は,化け物だわ。それも,とんでもない化け物よ。千雪様と子分の悪霊大魔王様は,すでに,22人も殺しているわ。いずれも,正当防衛と言ってもいいから,千雪さんに罪に問うのは困難だけど,,,でも,とても,警察や軍隊がかなう相手ではないと思う」


 小百合「香奈子,千雪様の偉大さが,その能力が,少しは理解しましたか?千雪様の行動のガイドができるとすれば,香奈子,今は,あなたぐらいしかいないと思う。ガイドの仕方によっては,いくらでも,金を稼ぐこともできるわよ。この国をひっくり返すこともできる。香奈子,あなたは,早く社会に出て,いろいろと学びなさい。そして,なるべく早く千雪様のガイドになりなさい。それがいいと思うわ」


 香奈子「・・・,少し,真面目に考えてみる必要があるかもしれないわ。姉さん,今回の件,,,一応お礼を言っておくわ。ありがとう。いい刺激になったわ」


 小百合「そう言ってもらえるならうれしいわ。当面は,ここに来てはだめよ。今日,16名も死んだのよ。その後始末で,警察やら木の葉会の組員がいろいろと動くからね」


 香奈子は,頭をコクッと下げて,小百合のマンションを後にした。


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