第3話

 翌日の朝。

 僕は早起きをして身支度を整えた。

 両親は驚いた表情をしていたけれど、学校へ行く気がある様子を見て、嬉しかったようだ。すぐに朝食の準備をしてくれた。

 学校へは八時二十分に着いた。自分の教室へ入る。

 ざわついていた生徒達がこっちを見やる。僕が来たことに驚いている様子だった。全員が驚いている。特に明確なイジメがあったわけでもない。ただ、気が重いだけだ。

 僕の机はそのままだった。いたずら書きがされているわけでも、傷だらけでもない。何も時間が経っていない様子だった。

 席へ座り、荷物を下ろす。時間割は覚えていないので全教科持ってきた。

 まず、時間割表を貰っていなかったことに気付く。担任が渡してきていたような気もするが、どこにやったか記憶に無い。記憶に無いものは気にしない。

 ひそひそ……、小声で話している。

 僕の悪口でも何でも言えば良い。僕は無敵だ。僕には、あの少女がついている。あの狂気が、僕を助けてくれるんだ。

 チャイムが鳴り、教室に先生が入ってくる。

 先生は僕を見て目を大きく見開いていた。教師までもが驚くとは、最低だ。こんな学校なら入学しなければ良かったかもしれない。

 だが、両親の期待には応えたい。今の僕ならば、何でもやれるはずだ。

 出欠の確認が終わり、一限目が始まる。数学だ。

 僕が保健室で自主的に学んだ内容よりずっと前の内容だった。まだここをやっているのか。これなら、僕がわざわざ教室で授業を受けることもないか。

 この教室にいるやつらが誰もが僕よりも劣っている。共に勉学を励む必要なんてない。僕が一番なのは決まっているんだ。

 こういう時は空想するのが楽しい。この教室に悪霊がやってきて、そこの根暗眼鏡女に憑りつき、ハサミで誰かを切りつけ――……。

「きゃあああああ!」

 女の悲鳴があがる。

 陽キャと言われるような女が血まみれになっていた。根暗眼鏡女の手にはハサミが握られている。

 陽キャの取り巻きが文句を言っている。文句を言う前に助けたらどうなんだ。

 ほら、根暗眼鏡女が陽キャ女の首にハサミを突き立てた。

 血飛沫があがる。

 教室が赤く染まる。

 それから、根暗眼鏡女は警察に連れていかれた。

 陽キャ女は救急車に乗せられた。あれだけめった刺しにされているなら、死んでいそうだ。

 こんなに面白いことが起こるなら、明日も学校に行こうか。

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