第2話 怪我 1/2
「ようっ、久し振り!」
「
「まぁな」
貴弥さんが泊まりの学会に出かけた日。
私は久しぶりに、従兄の怜ちゃんと飲みに出かけた。
怜ちゃんは、トラックの長距離ドライバーの仕事をしていて、あちこちを飛び回っている。
これまでも、貴弥さんが仕事で家を空ける事もあったのだけれど、怜ちゃんの予定となかなか合わなくて、ずっと会えずにいたのだった。
馴染みの居酒屋で先に飲んでいた怜ちゃんは、相変わらずの優しいお兄ちゃんの笑顔で。
私はなぜだか安心して、カウンターで飲んでいた怜ちゃんの隣の席に腰を降ろし、ウーロン茶を注文した。
怜ちゃんは私の母方の従兄で、5つ年上。
怜ちゃんも私も一人っ子だから、怜ちゃんは私を妹みたいに可愛がってくれているし、私も怜ちゃんをお兄ちゃんのように慕っている。
私の手術の時も、大学に進学せずに高校卒業後就職していた怜ちゃんは、仕事の合間を縫っては足繁くお見舞いに来てくれていた。
だから、私が結婚をする前から、怜ちゃんは貴弥さんとは顔見知りだった。
そして唯一。
貴弥さんとの結婚を心配した人でもあった。
「どうだ?旦那と上手くやってるか?」
「もちろん」
「だろうな。で?ちゃんと主婦やってんのか?掃除とか料理とか」
「もぅっ、怜ちゃんたらっ!結婚してからもう3年も経ってるんだよ?」
「そんな経つか?」
「うん」
運ばれて来たウーロン茶のグラスを持ち上げると、怜ちゃんも生ビールのジョッキを持ち上げて、軽くグラスに当ててくる。
「乾杯」
一口ビールを飲むと、怜ちゃんは不思議そうな顔をして言った。
「具合悪いのか?」
「え?なんで?」
「ノンアルだから。あれ、お前もしかして・・・・」
「違う違う、まだ・・・・」
「・・・・そ、そっか」
「でも。いつできてもいいように、お酒は飲まないでって、貴弥さんが」
「・・・・相変わらず過保護な、あいつ」
呆れた様な顔をしながら、怜ちゃんはもう一口ビールを飲む。
まるで私に見せつけるように、喉を鳴らして美味しそうに。
「で?気配はあるのか?」
「・・・・ない。今、3日目だし・・・・」
「じゃ、飲んじゃえよ。旨いぞ?」
誘うようにニヤッと笑う怜ちゃんの目に。
「うんっ!」
「お姉さんっ、生ひとつ追加ね!」
すかさず怜ちゃんが、すぐ近くの店員さんに生ビールを注文した。
「過保護、と言えばね」
久し振りのアルコールは、すぐに体中を駆け巡ったらしい。
たった1杯の生ビールでほろ酔い加減になった私は、つい、言うつもりの無かった愚痴を怜ちゃんに零していた。
「私ね、今、お料理全然してないの」
「えっ?」
「させてもらえなくなっちゃった。貴弥さんに、美味しいお料理、作ってあげたいのに」
「なんでまた」
空になった私のジョッキを通りがかった店員さんに手渡しながら追加の生ビールを注文し、怜ちゃんがまっすぐに私を見る。
昔はなんでも怜ちゃんに相談してたなぁ。愚痴もたくさん、聞いて貰っていたなぁ。
なんて懐かしく思いながら、私は怜ちゃんに経緯を話し始めた。
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