第6話 変異
突然に意識がなくなることがあるんだ。
私はマスターに相談していた。
「ああ、身体が変わったのか。」
彼はただ、独り言のようにそう答えた。
「身体が変わったとは?」
「その通りだよ。身体が魔物から人に近づいてる。前に言ったろう?」
強い魔物ほど人の姿をしているって
「言っていなかったけれど今のキミは随分と人に近い見た目だよ。ほら。」
マスターが私に丸い板を渡してくる。丸い板には様々な物が映っていた。
「それが鏡。本に書いてあったりしたでしょ。」
「ああそうか。知識があるのと実際に体感するのとでは随分と違うのを知ることが出来たな。」
つまりここに映っているのは私だということか。これが人に近い姿なのか。というよりもこれは...。
「マスターに似ているな。」
「そうだね。僕人間だし。」
それを聞いた時、私はこれまでの疑問が頭の中でほどけていくのを感じた。
「なるほど。マスターは私で実験をしていたのか。本来、マスターの専門分野は苔植物の医療における有効性を模索するものであったが、苔を繁殖させるために用意した洞窟で私が生まれた故に私の成長を自ら促すことによって、実験材料である苔植物の安定供給を目指すことに労力を割くようになったというところだと思うがどうだろう。伝説における魔物使いの存在と、魔物を使役する一族の噂がありうるのかの実験も兼ねているよい実験だ。最初はある程度の知識を与えて苔を収穫させるぐらいに思っていたが、私からマスターへの親愛を察して知識を与えても味方で居続けるかを試したかった。加えて以前よりも良い状態で採取をしてくるようになって本来の目的以上の結果も出すことが出来た。さぞ実験も進んだのでは?」
マスターは私の推論を聞いてにやりとした後、声を上げて笑い始めた。
「成功。いや、それ以上の成果だよ。キミがここまで賢くなるとは思っていなかった。キミの推論は概ね正しいし、僕が渡した情報から推測できる範囲としては最も正解に近いと言える。誇って良いよ。」
「それじゃあ、今日の情報は本当の外について聞いてもいいかな。」
私がそう尋ねると、マスターはゆっくりと話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます