第17話 変化

 木曜日。仕事終わりに健二からメールが来た。


 ‐土曜日10時。坂下駅。楽しみにしてるからな。‐


 こう記されていた。


 (私も楽しみにしてるよ、健ちゃん)


 2日後を楽しみにしながら翌日も頑張れそうだ。


 更衣室で帰宅の準備をしていると、藍子が声を掛けた。


 「何かいいことあったの?ご機嫌に見えるから」


 「土曜日に遊びに行くの。友達と。楽しみで仕方なくて…」


 「友達って男友達?」


 「そうだね。女の子も来るけどね」


 「だったら心配する必要ないか。楽しんできな」


 「ありがとう!」


 藍子は翌日休日。何をして過ごすのだろうか。


 「藍子は明日何してるの?」


 「デート」


 「恋人いるなんて聞いてない!」


 「あれ、言ってなかったっけ。実はいるんだよ。できたのはつい最近だけどね」


 「いいなあ…。楽しんでね」


 「ありがと!じゃあね」


 「うん。また日曜日」


 藍子と別れ、しばらく更衣室に残った。


 (私と同じクラスになったことない人も私のこと知ってるんだよね…。噂でも流れたのかな)


 実際、遊びに行くメンバーは私のことを知っている。だが、話す機会もなく、卒業してしまった。


 元々、健二は私を誘いたかったが、連絡先を知らず、誘うことすらできなかったそうだ。だが、先日コンビニエンスストア前で会い、誘うことができた。先日会えたのは偶然だったのだろうか。


 人生とは不思議なものだ。こうして再び、友人との関係を繋いでくれたのだから。


 荷物を持ち、メガネをかけてアパートへ向かった。


 何事もなくアパートに着き、夕食の準備をした。


 この日は親子丼にした。材料を冷蔵庫から取り出し、調理した。調理中、ふと藍子のことが頭に浮かんだ。


 (藍子は明日どこ行くのかな…。いいな、恋人できて…。私の前にも現れてほしいな…)


 具をご飯の上にかけ、器をテーブルに置いた。その後、サラダを作り始めた。レタスやブロッコリーなどを切り、お皿に盛った。


 栄養バランスはばっちりだ。


 椅子に腰かけ、食事をした。気付くと部屋でもメガネをかけていた。


 (外してなかった…。まあ、いいか…)


 メガネは外さず、箸を進めた。何だか少し新鮮な気分で食事をした。


 食事を済ませ、食器を洗い終えた。特に何もすることがない。私は入浴した。浴槽に浸かりながら、自身の恋愛について考えた。


 (私を好きになってくれる人ってどんな人なんだろう。体目当てじゃなくて本気で好きになってくれる人…。現れるのかな)

 

 恋人ができたらどんなデートをしたいのか。


 (私ってショッピング好きだから長時間付き合わせちゃって退屈させちゃうかな)


 スポーツ観戦もしたい。


 (スポーツ好きな男性もいいな)


 いろいろ考えているうちにのぼせてしまい、フラフラになった。水を飲み、椅子に座った。


 (私ってほんとドジ…。貰ってくれる人いるのかな…)


 叱ってくれる人も必要だろう。


 私はいつもよりも早く寝た。


 翌日。いつも通り出勤し、業務を開始した。みんな、いつもと変わりなく接してくれた。


 営業終了後、私は店内の清掃をしていた。すると、亜希が声を掛けた。


 「ユウちゃん、明日は何してるの?」


 「明日は中学時代の友達と遊びに行くの」


 「へえ!いいじゃん!楽しんできてね!」


 「ありがとう!」


 亜希と雑談をしながら清掃を進めた。


 清掃を終え、更衣室で着替えた。そしてメガネをかけ、店を出た。


 歩いていると、ふと考えた。


 (明日、メガネどうしよう…)


 かけようか、かけないか。少し迷った。


 (行き帰りだけかけようかな…)


 そう決めた。


 アパートに着き、メガネを外した。この日はスーパーでお惣菜を購入した。お皿に盛り、器にご飯を盛って、テーブルに置いた。


 (友達と遊びに行くなんていつぶりだろ…。全然会ってなかったからな…)


 久しぶりに友人と遊びに行けることが嬉しかった。


 (誰が来るんだろ…。健ちゃんと…。たくちゃんは仕事なのかな…。愛梨は来るらしいし…)


 考えているうちにご飯が冷めかかっていた。


 (いけない!食べないと…)


 食器を洗い終え、入浴した。


 浴室の鏡を見ると、どことなく痩せているように見えた。


 (また瘦せたかな…。最近、ジーンズが緩くなった気がしてたんだよね…)


 入浴していると、ある事に気が付いた。


 (もしかして、みんなが言ってた私の変わったところって痩せたところ!?)


 実際、その通りだった。痩せて、少し輪郭が変わっていた。だが、みんなはそのことに気付かなかった。ほんとにわずかな変化だったからだ。


 (わずかな変化だから気付くはずないよね…)


 浴室から出て、鏡を見た。確かにほんのわずかだが輪郭が変わっていた。


 (少しだけ顔痩せしたのかな…)


 体重を測ってみると数キロ減っていた。何故痩せたのだろうか。理由が分からなかった。


 (不思議…)


 だが、痩せたことは嬉しかった。私はプラスに捉えた。


 (食事の量変えたわけじゃないし、ストレスも溜まってないし…。まあ、いいか。痩せたから)


 着替え、椅子に腰かけ、テレビを観ながら翌日のことを考えた。


 (明日はショッピングモールに行って、呑んで…。みんなと話して…)


 他にもいいことがあることを願い、布団に入った。


 ワクワクしてなかなか眠れなかった。


 

 

 

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