第7話 夏休み。綴方教室。
夏の夜明け、静寂で涼し微風の中、西洋楡の梢の向こうの空の変化。雲、刻々と変わりめく空の色。縁起の風にノミコマレタ。
その小さく狭い横穴から質素な丸木舟に乗せられ送り込まれた遺体の肉はボロ布の下で風雪の風に削がれ時間の支配に平伏す。
全ては138億年の時間の中に浮かんでる、アノ噂の神でさえ時間の力の囚人だ。
試しぬかれた技を駆使されたミイラはそこに横たわっている。
注視すると砂埃に纏われ青白い月影の冷気に塗り込まれ萎びた頭部がそこに転がっている。
当初は繋がっていた頭部だ。
鏡を差し出し「これがオマエさんの希望」。
辛うじて土埃寸前の処で踏みとどまっているオマエさんの頭。
五千年、時間に抗してきたの?ただ、そこに寝転がって。
宇宙は138億年、働きっぱなし。知ってた?
死に抗えば抗えるほど不完全に死にきれない醜さが浮かんでくる。
切断され液体窒素漬けになった頭部にガンジス川が問う。
執着心を止揚しない限り平安は訪れはしないとの事だがと?
そのガンジス川を火葬代を払えない死体が一つ二つ三つと犬や牛の死体とともに大洋を目指して流れていく。
もう個々の死の面影はなく一つの死の雰囲気の中に骨達は染まり込んでいた。
青空文庫で梶井基次郎の「城のある町」を読む。
ベクトルに言わせば阿頼耶識、八識は希望だと。
無常から転げ出た思惟は宇宙の地図を炙り出す。
それが、どうしたというのだ。
悟りのために何も特別な場所に行く必要はないのだ。ヒマラヤでなくてもイイのだ。
監禁中のニコライ リョーリフと彼等の希望。
時間と空間?
突然訪れる突然去っていくfragileな命。
元々墓場は生きている自分たちの生活圏から面倒な扱いにくい存在の死者を円滑に隔離するために「死後寂しくありませんよ!先祖さんやお友達も居ますよ!」。
「さあさあ、此方にどうぞ!」。
新しく昨日アル分岐点を越えていった死者達が西方の青の色の中に消えていく。
背後には死者も今生きている我々にも不必要な乾いた骨と皮。
見捨てられ、素粒子の雨に打たれながら此方を見つめている。
縁起の連鎖の中では僕等は一なんだってさ。
宇宙はモノでなくて状態だってさ。
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