第4話 夕焼けと映画館
店を出る前にアイスコーヒーを飲みながら考えていた次の目的地は、映画館だ。私は実を言うとだいぶインドアな性格の女で理由なく外出をしない。友達から誘われても気分が乗らなければきっぱりと断る。そんな私の趣味は、映画鑑賞だ。この世には、いろいろな映画がある。悲劇に喜劇、サスペンスにスプラッター映画にホラーにアクション。いろんな映画がある。けれど所持金の関係上、家でレンタルで見ていることが多い。だけど今日くらいは、映画館で見てしまおう。ヤッターうれしいー。
そうしてウッキウッキで映画館にいって気づいたことがある。なんか団体さんが多いのだ。あれ映画って一人で見るもんじゃないの?。そう思いながらも見る映画を決める。見る映画は、私が愛してやまない監督さんの最新作の恋愛映画をみることにした。チケットを買いポップコーンとコーラを買うために列に並ぶ。映画には、ポップコーンとコーラがあった当たり前なので。これ常識だから。私は、家で映画を見るときにも絶対に用意する。だから家には、小さいけどポップコーンメーカーがある。
そうして私が列の先頭になる。私は、衝撃を受ける。少し逸れるけれど私は、幼少期に映画を家族で一度見に行った以来行ったことがない。そしてその時に親から買い与えられたのがコーラとポップコーンだった。理由を親に聞いたところ常識だと教えられた。しかし私の前には、コーラとポップコーン以外にも選択肢が広がっていた。
ホットドックにチュロス、フライドポテトなんてものもある。なんてことだ。チュロスなんてあの夢の国でしか売ってないと思ってたしホットドッグやフライドポテトを食べながら映画鑑賞なんて悪魔的だろっと思った。思考が停止して硬直してしまう。
「お客様どうなさいましたか」店員さんが心配して声をかけてくれた。ハッと思い何でもないですといたって冷静そうに装ってチュロスとポップコーンとコーラを頼んだ。そしてスクリーンへと向かった。
スクリーンの真ん前の席が取れたので私はそこにゆっくりと腰を掛ける少し怖い知らない人が周りにいる暗いこの部屋が少し怖いと感じた。そして幾分も経たないうちに映画が始まる。ビックっとしてしまった。音が想像以上に大きかったのだ。こんなにも大きかったのか。私は、いつもマンションで見るため音を落としてみているのでこんな爆音には、慣れてなかった。けどすごい。。いい音だ。音が四方八方から聞こえる。映像もいつも私が使っている小さいテレビでは、無くスクリーンで一体何インチあるんだろうと思ってしまう。いやそんなことを考えずに映画の内容が見よう。そうだ。そうしよう。
映画が終了した。いまボロボロだ。私向けに作ってるんじゃないかなっと思うほどヒロインの女の子と境遇が似ている。すごい感情を代入してしまった。いい映画だ。ブルーレイやDVDが出たら何が何でも買おうそうしよう。私は、そう思いながら映画館を後にした。次は、絶対にアイツ一緒に来よう。冬休みには、絶対に来よう。
映画館を出るともう日が沈みかけていた。夕焼けをした紅い空に冷たい風が揺蕩う。ここに来たばっかのころは、風が吹くたびに香る潮の匂いに心を躍らせいたがそんなことももうなかった。ここは、建物の背が高すぎて夕日が見えないな。そう思いながら夕日の沈んであろう方に目を向ける。夏が終わるんだ。この夕日とともに夏が私の今年の二度ともう訪れない夏が終わるんだ。私は、近くにあったベンチに座り込んだ。見えないけど落ちる夕日を見ていたかったんだ。不思議と泣きそうになる。
私夏に何してたんだろ勉強してアルバイトして先生に言われた手伝いして疲れて家帰ってポップコーンとコーラを用意してぼーっと映画を眺めて本当にしたいことなんてしなかった。疲れているとか時間がないとか言い訳して本当にしたいことなんてしなかった。アイツをデートに誘わなかった。ちゃんと地元に帰らなかった。友達と遊びにいかなかった。何もなくてもやりたいことをもっとやれば良かった。
今日だって焦りから始まった旅だ。本当にやりたかったじゃない。ほとんど惰性に近いなにかだ。目頭が熱くなるそれからツーっと一筋の涙が流れる。夕日の光が歪んで見えた。
「何してるんだ茜」
後ろから私の名前を呼ばれた気がした。振り返る。君がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます