第26話
「リッカ
ガルーダも腰が低いな。それと、姐さん固定なのか?
魔王が、『姐さん』と呼ばせていた?
「ガルーダ……。精霊界に戻っていなさい」
「サー、イエッサー!」
ガルーダが消える……。
「さて、次は、水か土だよな?」
「う~ん。わたしにとって、一番相性のいいのが土であり、悪いのが水なのです」
ほう……。先を見通しているな。
私なら、罠を噛み破って敵に刃を突き付けるのみだが。
「無理に相性の悪い相手と戦うこともあるまい。土に行こう」
「へぇ~。ヘーキチさんでも、そんな考えをするんだ」
「……なら、魔王城へ向かうか?」
◇
協議の末、土属性の砦に向かう事になった。
今は、リッカの意見を尊重しよう。
野を進む。
魔族領なので人里もない。人影も私達だけだ。
魔族や魔物を見かけたりもするが、避けられている。というか、逃げている。
そして、目の前に砂漠が広がった。
「土の四天王は、砂漠に住んでいるのか?」
「……前情報では、岩石地帯だったのですが。地形を変えましたね。無意味だというのに」
「距離は?」
「ここから、10キロメートル……かな。ダメですね。一度、飲料水を取りに戻りましょう」
ふむ……。地形を変えて、防衛戦を張って来たか。
リッカの怖さも伝わっているな。
「ガルーダに乗せて行って貰い、時短してはどうだ?」
「逃げますね……。この、砂漠のフィールド内なら何処にでも移動する相手です」
凄い情報量だな。
「勇者は、どうやって倒そうとしていたのだ?」
「う~ん。挑発して、おびき寄せるとか言っていました。でも、もう無理ですね」
土の四天王を、始めに倒すべきだったんじゃなかったのか?
この広さは、骨が折れそうだ。
戻りながら、作戦を練る。
私としては、短期決戦だ。長期戦など、時間の無駄だ。
だけど、リッカは長期戦を提案して来た。
「砦を徹底的に破壊します。そうすれば、土の四天王は、魔王城へ向かうでしょう。私達は、雑魚の掃討後、土の四天王が住めない状態にすればいいだけです」
それは、ただの破壊者ではないか?
危ない思想だな。
「その砦には、戦えない者もいるのだろう? 歯向かって来ない者に手をかけるのは、気が引ける」
「ヘーキチさんでも、そんな思考をするんですね……」
私をなんだと思っているんだ?
「私は、猟師だ。いや、狩人だな。人に仇名す獣を狩るのはいいが、殺戮は望まない」
「うふふ……。あはは……」
リッカが、怖い笑顔で笑い出した……。
◇
「イフリートに地面を温めさせて、ガルーダにハリケーンを起こさせる?」
「うむ。そうすれば、高気圧が生れて、大気が不安定となり、魔族領に雨が降るだろう。そもそも、砂漠と言うのは、赤道付近に発生する偏西風が生み出すモノだ。それを、魔力で再現しているというのであれば、魔力が尽きるまで環境を変えるのがいいだろう。魔力量の勝負なら、リッカに敵う者などいない」
「ヘーキチさんが、科学を語っている……」
私をなんだと思っているんだ?
高校くらいは、出たのだぞ?
リッカの反対もなく、すぐさま実行となった。
リッカが精霊を召還する。
「イフリート、ガルーダ。頼んだわね」
「「サー、イエッサー!」」
信頼関係も厚いようだ。
――ゴ~~~~
目の前で巨大なハリケーンが出来上がる。これ、カテゴリーはいくつだ?
イフリートとガルーダは、リッカの魔力を使って頑張っている。
頑張っているが……。大きすぎるぞ?
その日、魔族領が水没した。
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