第27話

 土の四天王の土地は、低地に作られていた。

 周囲からすると、盆地だな。

 そこに大量の雨が降る。

 大量過ぎる雨か……。


「一面水浸しだな。砂漠だった土地が、一面湖だ……。水捌けのいい土地ではなかったみたいだ。幻影だった?」


「へへ。どうでやす? あねさん。なんなら、ついでに説得に行きまっせ?」


 ガルーダは、リッカに媚びを売っているな。


「そう? お願い」


「サー、イエッサー!」


 ガルーダが飛んで行く。


「契約したからと言って、信用し過ぎではないのか?」


「裏切ったら、魔力の供給を絶って、消滅させるわ。ね? イフリート?」


 イフリートは、片膝をついて敬礼しているが、震えている。

 そうだよな、リッカは、怖いよな。



 ガルーダは、すぐに戻って来た。土の四天王……タイタンを連れて。

 タイタンも、リッカに下るのだそうだ。


「全員、精霊界に戻ってね」


「「「サー、イエッサー!」」」


 リッカは、なにを考えているのだろうか?

 この先どうなる? 精霊王? 魔王軍を吸収して魔王を弱体化?

 いや、魔王の孤立化を狙っている?

 とてつもない逸材を育ててしまったようだ。ただ、走らせただけなのにな。



「さて、最後の四天王ね。水の四天王……リヴァイアサン。行きましょう」


「リッカと相性の悪い相手だったな。私が行こう」


「う~ん。大丈夫……かな? 三属性の下僕も手に入れているし。負けはないでしょう。でも、どうやって倒そうかな~」


 リッカが分からない。頼もしすぎるのだけは確かだが。





 最後の四天王の砦へ向かう。

 向かうんだけど……。


「沼になっているな……。通れんぞ?」


「う~ん。乾くまで2~3日かな……。まあ、待ちましょう」


 一面、水が引いたと言っても、湖から沼地に変わっていた。これでは、歩けない。

 飛べれば良かったのだが、ガルーダは、長距離となると人を運べないと言って来た。

 待つしかないか……。


 その時だった。

 また、私の〈索敵〉になにかが引っかかった。


「なんか来ているな……。川を泳いでいそうだ。大きくて、速いぞ!」


「……向こうから来たのかな? 手間が省けたわ」


 誰が?



 待っていると、デカいうなぎが現れた。

 いや、これが蛇型の竜? 水竜?


 リッカが、3体の精霊を呼び出す。

 イフリートが、語り出した。


「久々だな、リヴァイアサン……。私は負けて契約した。もう、魔王様には従えない。他の者も同じだ」


 短いな~。もっと経緯を話せよ。リッカの強さとか、怖さとか。

 そもそも戦っていないのに、『負けて』ってなんだ? 『降伏』だろうに。


「うむ。勝てる気がしない。ワレも下ろう。それにしても、魔族領を水没させるな。それは、ワレの仕事だぞ?」


 イフリートとガルーダが、笑い出す。

 科学の知識をちょっと使っただけなんだけど。それと、リッカの魔力が多過ぎたからだな~。


「後は魔王様次第だ。まあ、悪い様にはならんさ」


「なんでもいいけど、従ってくれるのよね?」


「うむ。配下に加わらせて頂きたい」


 リッカは、嬉しそうだ。

 リッカの力が、日増しに高まって行くのが分かる。

 もう勇者パーティーなど、秒殺だろうな。


 今、止められるのは、私と魔王くらいか?

 ゴリマッチョな、召喚聖女。凶悪な回復&狙撃付き……。

 とても怖い人材に育ったものだ。


「今、失礼なことを考えなかったですか?」


「いや、なにも?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る