第16話

 あれから一ヵ月が過ぎた。

 私はウィアイスの街周辺の熊の魔物を全て討伐した。パーティーを組んだり組まなかったり……。忙しかったな。

 人によっては、一日で辞めて行ってしまった。私には付いて行けなんだそうだ。少し凹んだりもしたが、背中を預けられないのでは、しょうがない。

 だが熊の魔物は、掃討できた。


 ウィアイスで残っているのは、迷宮ダンジョンくらいだが、私が攻略に乗り出したら、破壊してしまうかもしれない。そうなると、冒険者達がいなくなり、街が不景気になる。

 それくらいの知恵は、私も持っているつもりだ。

 困った問題を抱えている、次の街に向かおう。


 ミルキーは、成長していた。

 数日間、行動を共にしただけだが、目を見張る成長を遂げていた。

 街で一番の冒険者との決闘など、瞬殺だった。


「……火山の噴石に比べれば、何の怖さも感じないニャ。それと、遅すぎるのニャ。スタミナもニャいし、レベルも低い。雑魚ニャ!」


 この一言で、街のまとめ役になっていた。


「ミルキーはもう大丈夫だな。初めて出会った頃は、頼りなかったが、死線を潜り抜けた彼女は、もはや別人だ。いや、あれが潜在的に彼女が持つ素質だったのだろう」


 目に光がないのが、気になるが……。それと、髪も白いままだ。

 目は濁っている訳ではないので、若干の精神の混乱があるのだろう。特殊部隊にいた時に、あんな目をした奴が大勢いた。

 表情もあるし、問題なしとする。





 次の街に着いた。

 ……喧騒に満ちていない。

 噂通り、魔物の脅威に怯えているようだ。まだ蹂躙されてはいないだけなのだろう。助け甲斐があるな。

 私は、ギルドを探した。


 ギルドは、閑散としていた。まあ街の様子からすれば、当然か……。

 ギルドのカウンターに受付嬢がいたので、聞いてみる。


「こんにちは。初めてこの街に来たのだが、活気がないな?」


「こんにちは。噂を聞いていないのですか? 近くにドラゴンが住み着いて、街の放棄が話し合われている最中ですよ? 何しに来たのですか? 冒険者……ではないのですか? 情報が伝わっていない?」


 ドラゴン。異世界の定番であり、憧れだな。

 ドラゴンスレイヤーの称号。私も欲しいと思う。

 口角が上がったのを自覚する。


「そのドラゴンは何処にいる?」


「何人も返り討ちにあっていますよ? 行くのですか?」


「誰かが行かなければならない。それならば、私でもいいはずだ」


 受付嬢は諦めたらしく、依頼書を見せてくれた。


「金貨……、一万枚?」


「倒せるわけがないって金額ですよね~」


「ふっ……」


 笑いが込み上げて来た。誰が考えたかは分からないが、その常識をぶち壊してやろう。ドラゴンとて生物なのだ。倒せない道理はない。



 私は、ドラゴンの巣に向かった。

 街で銃弾が補充できたのは、大きかったな。それと、誰かスコープを開発して欲しい。

 もっと言えば、アサルトライフルが欲しい。連射式の銃でなければ、私の本領は発揮できない。


「火薬の爆発力で、次弾を空気で押し上げる構造だったが……。機械式の装填だと、どうしても連射が遅くなる。まあ、銃を作り出す知識を持った者はいるんだ。期待して待とう。資金はあるんだし」


 そして飛行能力だ。やはり戦史を知る身としては、三次元の戦いの有利を説きたい。魔法で発現している者もいるが、戦闘ヘリコプターに比べれば、まだまだだ。


「ペガサスがいれば、騎馬に欲しいのだが、出会いがないんだよな」


 いるのかどうかも分からないが、人を乗せて飛べる騎獣がいるのであれば、騎乗してみたい。これも異世界ならではの願望だな。


 最後に魔法だ。私も覚えたいと思う。まだ種類は決めかねているが。

 ステータスごり押しの私では、罠に嵌った時に危機に陥る。希望は、移動系の魔法だな……。それと、定番の『鑑定』が気になってもいる。


 考えながら、歩を進める。

 今回は単独ソロだ。街に冒険者はいなかったからだ。まあ、ドラゴン討伐に参加してくれる者がいるのであれば、もう向かっているか。

 だが物資はある。私にはこれで十分だ。


「さあ行こう。私の異世界召喚された意味を求めに!」

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