第17話

「ぐっ!」


 重い一撃だった。

 戦槌で迎撃したが、足場が悪いため私の方が吹き飛ばされる。

 いや地面は、岩場だった。

 足を埋めるほど踏み込んだのだが、体重差で負けてしまったみたいだ。


 空中で一回転して、少し距離をとった所に着地する。


「ふ~。流石に一筋縄では行かないか」


 目の前のドラゴンを賞賛する。

 長高二十メートルと言ったところか。

 尻尾を振り回して来たが、避けきれずに吹き飛ばされてしまった。


 ここで、ドラゴンの追撃が来た。

 突進して来たのだ。

 私は……、躱さない。


「受けて立とう! 来い!!」


 ドラゴンの前脚が、私を襲った。

 今回は私も全力だ。

 全力で走り、体重を乗せた一撃でドラゴンの前脚を迎撃した。


 ――ベキ


 戦槌が……、折れた。いや、砕けた。

 だが、竜の前脚の指を一本折ってもいる。


「行ける。負傷を負わせられると証明できた。ならば、倒せない道理などない!」


 私は、ドラゴンにしがみ付いた。

 そのまま登って行く。

 もしこの戦いを見ている者がいるのであれば、私は害虫に見えるだろう。

 壁に貼り付いた、黒い楕円形のあれだ。

 だが、格好を気にしている余裕はなかった。

 それほどの相手なのだ。


 鱗に指をかけながら登れるので、瞬時に前脚を登りきり、そのまま肩へ移動する。ロッククライミングの経験が生かせたようだ。


 ドラゴンは、不快みたいだ。

 体をゆすって、私を振り落とそうとしている。

 例えるなら、人が蚊を払うようなものだろう。いや……、体に黒い楕円形のアレが付いていたら不快か。

 だが、ドラゴンの関節は、硬いみたいだ。可動域が狭すぎるので、私を潰すことはできていない。

 私はそのまま、ドラゴンの頚椎部分まで移動した。もう、首も前脚も届かない場所だ。


「うお!?」


 ドラゴンが揺れた。

 いや、翼を広げたのか!

 そのまま、上昇する。


「ぐっ!」


 私は、振り落とされない様に更に指に力を入れる。

 ドラゴンは、旋回して背中に山を擦り付けて来た。

 私は、山肌とドラゴンの鱗に押し潰される。


 ――ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ……


「……結構痛いな」


 山肌が削れるほどの体当たりは止めて貰いたい。


「グオオオォ!!」


 ドラゴンが吠える。

 耳障りだな。

 そして、ドラゴンが上空にブレスを放った。

 雲を突き抜けて、雲が一瞬で霧散させされた。空は、青空が広がっている。


「あれを地上方向に撃たれたら、地形が変わるな……」


 そう思えるほどの、威力が込められたブレスだった。

 例えるなら……、いや、近代兵器には例えられないな。核兵器まで届くのかどうかといった威力としか言えなかった。


「むっ!?」


 ――ゴロゴロ……バリバリッッズガァアアアアン


 次の瞬間に落雷がドラゴンを襲った。

 さっきまでは、晴れていたのに急激に雲が集まり出している? 魔力に関係していそうだな。いや、帯電か?

 当然私は、ドラゴンにしがみ付いているので、落雷を受ける。大電流が私を流れて行く。なかなかに痛い。


「そうか……。ブレスは、落雷を生み出すために放ったのか。気圧の関係もある。このドラゴンには、知性があるのかもしれないな」


 ――ゴロゴロ……バリバリッッズドガァアアアアン


 二撃目が来た。

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