第15話
ギルドでの処理はミルキーに任せる。私には任せる以外の選択肢がない。
盗賊達は何処かに連れて行かれた。ミルキーは見向きもしなかったな。彼等に更生の機会は与えられるのだろうか?
時間がかかるということなので、私は物資の補給に向かった。私も、マジックバッグは持っているのだ。
街を散策していると、ジョブスに会った。数日前まで、パーティーを組んでいた相手だ。
「フラフラだな……」
何かあったのだろうか?
「あ、ヘーキチさん……」
「数日ぶりだな、ジョブス。しかし、どうしたんだ? そんなに憔悴しきって?」
「いや~。カジノでスッちゃって。今後どうしようかなって……」
あれだけの資金を溶かしたのか。ある意味凄い。才能なのだろうな。
話を聞くと、冒険者として必要な道具も全て質屋に入れてしまったらしい。家も今月末で退去しなければならないのだとか。
「また、一から出直しっすわ。何処かの街で合いましょう!」
ジョブスに笑顔が戻った。彼も死線を潜り抜けて来た者なんだ。立ち直りも早いし、立ち直り方も知っているのだろう。
そして金の無心はして来なかった。この様な者が、最終的に成功するのだろうな。
握手して別れる。いつかまた組む日も来るだろう。
ここでふと思った。
「他の二人にも会っておくか」
トウカは、キャバクラを開店させていた。誰かの入れ知恵なのかもしれない。まあ経済が回るのであれば、私が止める理由もない。
アルコールをかなり高値で売りつけている。市場価格の倍以上だな。
それでも街の冒険者達は、足繫く通っている。それだけの価値があるのか。トウカも私には理解できなかった。
それと私は、アルコールを嗜まない。感覚が鈍るからだ。
トウカの店には入れなかった。
私はトウカの姿を遠くから眺めることに留めて、店を後にした。
最後に気になったので、シャドウを探した。
ギルドに聞いたのだが、パーティーを解散してから活動が止まっているらしい。
彼も心配になった。
街中を探して行く。そして……、見つけた。
シャドウは、所帯を持っていた。
言い方を変えるとハーレムだな。シャドウにあんな一面があったとは……。
女性を引き連れて、豪快に買い物をしている。
シャドウとも、会わずに遠くから観察することに留めた。
「上手く行っているみたいだ。それを、壊したくない」
私は良く場の雰囲気を壊すことがあった。シャドウの邪魔はしたくない。
独り歩を進める。
「ふう~。三人共変わってしまったな。もう、冒険者には戻れないだろうな」
ジョブスは……、いやジョブスが一番危ない。もう、ゴブリンすら狩れないのではないかと思う。そう思えるほど、彼は感覚を鈍らせていた。
だがもう手助けなどできない。各人で頑張って貰うしかないのだ。
「自己責任の世界……。何処も同じだな。私も更に気を引き締めないと」
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