第4ステージ それは、七つの星の物語
1
「
「当選チケットをお持ちの方はこちら! 記者の方は入場証を見せてください!」
「ゲストにはなんと、主人公ノウスの声優、
「オープニング曲の歌唱を担当するRiMEさんとのトークショーもあります!」
会場に客が流れてきたのを観て、すぐさま
「いやぁ、悪いね。うちのブースが騒がしくて」
「アスクロはどう? あれ、まだ客なし?」
戸部がにやけながら背伸びをして、アスクロの入り口をのぞき込む。そこにいるのは受付を担当する黒木だけだ。浬はタブレット端末に目を落としたまま「あぁ」と生返事をするのみだったが、戸部は構わず続けた。
「つーかあの亜音っていうコスプレイヤー雇ったんだろ? 写真見たけど結構美人だよな。あれ加工? なぁ、実物も美人で巨乳だったら紹介してくれよ。つーかどこにいんの? 亜音のファンくらいは来そうなもんなのに。おっと、しつれ……」
「さっきからうるさいわね、そこのモブ男」
台詞ウィンドウからはみ出す勢いでしゃべり続ける戸部に、黒木が大きな舌打ちと共にドスの効いた声で言い放つ。
「……えっ、モブ男って俺のこと?」
「他に誰がいるのよ。顔の上半分を影で塗りつぶすわよ」
「お、おまえのチーム、やべー女しかいねぇなマジで!」
「黒木」
浬は軽く手を上げて黒木に呼びかけた。
「一組来る。よろしく」
「えぇ、分かったわ」
黒木はころりと表情を変えて微笑むと、受付用のタブレット端末を手に取った。縁や背面が、発泡スチロールで作った石のカバーで覆われたものだ。
「あっ、あれじゃね?!」
そこへ、3人組の少年グループがアスクロのブースを指さしながらやってきた。
「やべー見つかんないかと思った! ブースちっさ!」
「つか、俺たち一番乗り?」
ワイワイと楽しそうに話しながら、少年たちが受付の前に立つ。中でも、一番わかりやすく目を輝かせていた眼鏡の少年が、友人に背中を押された。
「ほら、多田やん、おまえが出せよ。楽しみにしてたんだろ?」
「う、うん」
「こんにちは、旅のお方」
先ほどとは打って変わり、甘い天使のような声で台詞を口にする黒木。戸部が隣で「別人じゃねーか!」と震える。
「この先は選ばれた方しか進むことはできません。
「あ、え、えと。これ……集めました」
眼鏡の少年はおずおずと七枚のタロットカードを差し出す。フライヤーとして会場の各所に置いていたものだ。黒木はその七枚を確認すると、持っていたタブレット端末を差し出す。
「ありがとうございます。こちらの石版に名を刻んでいただけますか?」
黒木と少年たちのやりとりを見て、戸部が「ハッ」と小さく笑う。
「まじ? あれ集めた客しか入れてねーの? 入り口狭めてどうすんだよ。なんでこんな馬鹿げたやり方にしたんだ?」
「なんでって……」
浬はタブレット端末に視線を落とした。画面には、会場内に設置された定点カメラが六分割で表示されている。そのうちの一つに、アスクロのフライヤーを見つけて喜ぶ女性客二人組が小さく映し出されていた。
「──そのほうが、面白いからに決まってるだろ」
石像を正しい順番で動かすと毒ガスが止まる。
噴水の水を抜くと鍵が浮かび上がる。
ピアノを弾くことで隠し扉が現れる。
「はぁ? そんなガキが考えためんどくせー遊びみたいな企画で、集客できるかよ」
ゲームの仕組みの多くは面倒で馬鹿げていて、でも、その面倒で馬鹿げたことにワクワクする。そんな
「あったぁ! ゆまてゃ、こっちこっち!」
「うっそ、笑魅たん神ぃ!」
『どうせなら、ブースが小さいことを利用しちゃいましょう! ほら、隠しダンジョンは見つけづらい上に、簡単には入れないものですから』
そう言って笑った天宮星七を思い出しながら、浬はタブレット端末をコントローラーのように両手で握りしめた。
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