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「狭いわね」
ドン! という効果音がつきそうな勢いで、黒木が素直な感想を言い放った。続いて天宮も難しい顔で「一刻も早くタヌキにローンを払いたくなる狭さです」と呟く。
ブース面積については事前に連絡を受けていたし、それに合わせてあれこれ準備してきた。だが、実際に目にすると狭さが際立って見え、不安を感じずにはいられない。
その不安に拍車をかけているのは、すぐ隣──凄まじい規模の
高さのある舞台に掲げられた
ブースの広さ、金の掛け方、何もかもが桁違いだ。
「あ、アスクロチーム。お疲れ様でーす」
舞台横で雑談をしていた
「本当に出すんだ、ブース」
「ね、びっくり。炎上してたし、出展は遠慮するのかと思ってた」
「つか狭くね? もはやトイレだろ、あれ」
「ちょっ、それは言い過ぎでしょ! やめてよもー」
アハハハ、と明るい笑い声が響く。入り口に飾るパネルを取り出していた黒木が立ち上がり、
「呪いと猛毒と麻痺と混乱を付与してやる……」
「や、やめなよ夢実」
「デバフも良いですけど、馬鹿みたいにレベ上げてワンパンするプレイスタイルのほうが私は好みです」
「星七まで闇墜ちしてるー!」
光の星七よ戻ってこーいと叫びながら、宇佐見が天宮を両肩を掴んで揺さぶる。その傍ら、黙って会場の地図に目を落としていた浬は、ふと
スーツ姿の女がひとり、男がふたり。
「
先頭に立っていた、金髪に赤眼鏡の女がにこやかに挨拶をした。
「
「今日は井坂プロデューサーはいらっしゃらないの?」
「はい、プロデューサーとディレクターは出張中でして」
「そう。お目にかかれなくて残念だわ」
長い金髪をかき上げて、阿斗里と呼ばれた女は続ける。
「なら代わりに伝えておいてくれます? ゲームフェスティバル大賞、ソーシャルゲーム部門の有力候補として期待していると」
「いやー、ハハハ。超有名ゲーム揃いですし、さすがのうちでも大賞は厳しいでしょうけど。井坂さんにはそう伝えておきますね」
「ふふ、謙遜を。今年のトロフィーはガラスを用いたクリスタルトロフィーになっているの。とっても素敵だから、是非手にしていただきたいわ。……あら」
眼鏡の下の視線が浬たちに向けられる。阿斗里がすっと手を掲げると、後ろにいた男がすかさずタブレット端末を渡す。阿斗里はそれに目を落とし、「アストラ・クロニクル……?」呟いた。浬は前に進み出て、名刺を差し出し挨拶をする。
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