21



「商用不具合です。影響範囲は全ユーザー。推定重要度……S1最大


 沈黙が落ちたのは一瞬のこと。


 急いで雪平のパソコンを覗き込んだ浬は、血の気が引いていくのを感じながらも、頭の中で複数のタスクを整理して指示を飛ばした。


「――花里。ユーザーから問い合わせが届き始めるだろうから、カスタマーサポートチームに取り急ぎ連携を頼む。状況把握が済んだら改めて説明に行くと伝えてくれ」


「わかったわ」


「黒木、宇佐見、商用で確認を頼む。合間にSNSにも目を通しておいて貰えると助かる。天宮、過去の不具合対応の資料を出して準備を」


「はい!」


「雪平、……まずは落ち着こう。順番に確認して……」


 自分の声が、遠くから聞こえるようだった。いくつもの記憶セーブデータを引っ張り出して、どこで選択肢を間違えたのかと考える。しかし答えには辿り着かない。


 思考は、ローディング画面でフリーズしたまま――――……


 






 久城浬は、気付いていなかった。


 ずっと前から、ゼノ・ゲームスに蔓延はびこ不具合バグに。


 このストーリーに辿り着いた原因は、選択肢の誤りではないという事実に。


「――ゲームオーバーだよ。久城くん」


 何も知らないプレイヤーの動揺を、不具合バグは人知れず嗤う。


 ゲームは予定通り、バッドエンドを迎えようとしていた。




 2nd S?A*E CL❒R!

 T❒ ❒❒ ❒❒❒❒❒❒❒❒❒...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る