18
――――……
「――それから、ゲーム機とソフトを買ってもらって……、……あれ。浬くん?」
浬は途中から両手で顔を覆いながら、星七の話を聞いていた。
他人から幼い頃の話を聞くのは、布団の上でジタバタ暴れたくなるほどに恥ずかしい。しかも、自販機に挟まってまでゲームに熱中し、母親に病院内を引きずられていたような過去など……精神的ダメージによりひんし状態である。
そして、顔を覆いたくなった理由はもうひとつ。当時のやり取りを細部まで記憶している天宮に対し、浬は薄ぼんやりとしか覚えていないことへの、罪悪感。
「いや、その……なんでもない」
下手に誤魔化してから、隣に座る天宮を横目に見やる。
天宮はキョトンとした表情で浬を見上げていた。その瞳には、大人になった浬がどう映っていたのだろう。浬は――あの頃、少年だと思っていた少女がこんなにも美しく成長し、しかもずっと自分の傍にいたなんて信じられない気持ちだった。それに、
「……キャラ、変わりすぎじゃないか?」
〝トウヤ〟と天宮は、まさに真逆の性格だ。皮肉屋で、ぶっきらぼうな性格のトウヤ。弾けるように明るく、前向きな天宮星七。一体、どこでどうなってこうなったのか。
「そうかな? 自分ではあんまり分かんないかも」
「……そう言えば、面接のときにはもう俺に気付いてたのか? 昔、病院で会ったヤツだって」
「……………………」
「……天宮?」
「うん、気付いてた」
にこっと微笑みながら、天宮は頷く。
「面接前に会社のホームページを確認してたら、アスクロのプロデューサーとして名前が載ってたから。あとは……目で、分かった。あ、あの時の浬くんだって」
そう言われて、ドキリとした。浬も、天宮の特徴として何より印象深いのはその〝目〟だと思っていたのだ。
「なんだ、すぐ言ってくれれば良かったのに」
「へへ。自分からバラしちゃうより、当ててもらうほうが面白いかなって」
「それでタイトル当てゲームか。星を探すゲームもそうだし、昔からそういうのを考えるのが好きだったんだな」
「うん、大好き。浬くんと出会ってからは、もっと大好きになったよ」
天宮は身を乗り出し、キラキラと顔を輝かせながら言った。あまりに近くで真っ直ぐ見つめてくるものだから、先ほどとは違う意味で心臓が震える。
「ゲームは、私の世界を広げてくれた。病室からでも、どこへでも冒険に行けるんだって教えてくれたから。……今は、浬くんやアスクロチームのみんなで考えたゲームが、誰かをそんな気持ちに出来たらなって思っ――……」
「…………」
「…………」
「どうした? フリーズか? 進行バグか?」
「……ゲーフェスで、出来ないかな……」
唐突に現実的なワードが飛び出し、目を点にしながら「何を?」と聞き返す。天宮はさっきまでとは打って変わって、真剣な面持ちで呟いた。
「アストラたちの冒険を、追体験してもらえるようなブース」
――それはまるで、不思議な武器を手に入れた時のような〝予感〟。
「……追体験、か」
これだけでは、使えない。けれど特定の行動や、アイテムをプラスすることで、何かが起きるかもしれないという――期待。
浬はゲーマーとして、その武器を手に取らずにはいられない。
「もう少し詳しく教えてくれるか?」
だって、そういう武器は大抵、作中最強だったりするものだ。
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