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「今回の宿泊って天宮の兄さんが手配してくれたんだよな。挨拶しておきたいんだが」
「あ、えっと、兄はその……今日はいないんです」
「そうか。じゃあ悪いけど礼を伝えておいてくれるか? アンケートにももちろん書くけど」
「は、はい!」
天宮は何故か歯切れ悪く答え、少し前を歩く花宮の隣にそそくさと移動してしまう。
「あら星七ちゃん、色々手配ありがとうね」
「いえいえ! ホテル、気に入ってもらえるといいんですけど」
「去年の社員旅行も、AMA系列のホテルだったのよ。そこもサービスが行き届いていて居心地が良かったわぁ」
「あっ、それ面接のときに聞きました! 確か井坂さんがそう仰ってて――……」
会話に花を咲かせる天宮の背後で、浬は首を傾げる。どうも、最近天宮の態度に違和感が残る。それが何のフラグなのか、見当もつかない。
AMA初のゲーミングホテルは、ゲーマーたちを喜ばせるには十分な設備と環境を整えていた。利用は予約制となるが、パソコン、モニター、音響、どれもこれもハイスペック機器が揃ったゲーミングルームなど、まさに天国だ。この大部屋はホテル内に3つも存在するらしく、その内のひとつを浬たちは借りることになった。
「イヤーッ! 浬ちゃんが甲羅ぶんまわして追いかけてくる! ちょっとやだ近付かないで!」
「ゲームとはいえなんか傷つく言いようだな」
「浬ちゃんはもう分かってたことだけど、雪平さんも上手いわね。パズルゲームしかしないのかと思っていたわ」
「普段はやりません。ただこの合宿でやろうって話が出ていたので、事前に購入して練習しておきました」
「真面目ッ!」
「久城さん、なんでそんなに私を避けるんですか? 仲良く一緒に走りましょ!」
「スター持ってんの知ってるぞ天宮!」
賑やかなカーレースのゲームや、
「あら、また良いカードが手に入ったわ。ハイ、浬ちゃんにあ・げ・る」
「なんで俺ばっかり! 今は東の方が金持ってんだぞ!」
「浬が連れてるデビル多っ! 野球出来るじゃん!」
「夢実ちゃん、カードの引き良いわねぇ。あ、小樽に着いたわ。一番遠いのは久城君ね」
「運要素がでかいゲームは苦手だ……」
金が物を言うボードゲーム、
「あーっ! 天宮チェイス入りました発電機9割です!」
「了解、俺が引き継ぐ」
「なるほど、連携が重要ってこういうことなんですね」
「うう……観てるだけでもコワイ……」
非対称型のサバイバルホラーゲームまで。
とにかく色んなジャンルのゲームを遊び倒し――気付けば、あっという間にゲーミングルーム利用終了時刻を迎えていた。
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