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――……
「――で、その場合はゲーフェスでアメニティを配るのはどうでしょう」
「アレ大量生産が難しいんだよな……あと配るなら小さなもののほうが良いんじゃないか?」
「でも、それだと宣伝効果が薄いかもしれません」
「あー、確かに……」
「そもそも、ゲーム内のイベントとリアルイベントを連動させるっていうのが難しいわよねぇ」
「下手をすれば、ゲーフェス来場者だけが有利なイベントになって炎上するものね」
ウーンと考え込む声や、疲れたような溜息が会話の中に混じり始める。気付けば二時間超、アスクロチーム全員で部屋の真ん中に椅子を寄せ合い、ホワイトボードを囲むようにして議論を続けていた。
議題は、ゲーム・フェスティバルとアスクロ三周年イベントについての方向性検討。
――本来、もうとっく準備を進めていないといけない時期だが、アスクロの出展が決まったのが遅かったのと、来週リリースのイベント準備に手間取り、まだアイデア出しの段階だ。
日めくり卓上カレンダーの絵が変わっていくたびに、みんなの焦りは募っていった。
「でも、せっかくアスクロの三周年イベとゲーフェスの期間が被ってるんだし、何かはやりたいよね! あ、声優さんのイベントシナリオ朗読劇とかどう?」
花里たちの尽力もあり、メンタルを持ち直した宇佐見が明るく提案する。しかし、すぐに自らのアイデアを取り下げた。
「あっやっぱ今のナシ!
「いや、みんな色々考えてくれてありがとう。もう二時間過ぎてるし、少し休憩を挟もうか」
長時間の会議は疲れる上に、どんどん頭が回らなくなっていくだけだ。
浬の提案に全員が賛成して、休憩室に行ったり、簡単なストレッチをしたり、ソシャゲの体力消費をしたり、各々好きな過ごし方をし始めた。
浬も飲み物を求めて立ち上がりかけたところで、デスクに残って資料と睨めっこをする天宮の姿が目に入る。
「天宮、休憩しろよ」
「あっ、はい! なかなか良いアイデアが浮かばなくて、つい焦っちゃって」
へへ、と笑いながら天宮は資料をデスクに置いた。
「ほら、面接のときのアイデアを久城さんが褒めてくれたじゃないですか。それが嬉しかったので、もっといっぱい案を出せたらなーって思ってるんですけど」
「良いアイデアは出してくれてるよ。ただ、色んな事情で実現出来なかったりするだけだ」
「んー、難しいですね……」
「根を詰め過ぎるのは良くないぞ。何か息抜きを……あ、そうだ」
息抜き、というワードであることを思い出した浬は、持ち上げかけていた腰をおろし、メール画面を開いた。そして、各チームのプロデューサー宛てに経営企画部から送られてきた添付資料を天宮に見せる。
「うちの会社は二年に一度社員旅行があるんだが、旅行がない年は各チームごとにコミュニケーション費ってのが配られるんだ」
「コミュニケーション費?」
「あぁ。各チームごとに親交を深めろっていう名目で、会社から幾らか貰える費用だ。贅沢な飲み会を開いても良いし、ちょっとした日帰り旅行くらいなら出来る額だな。とにかく、会社に申請さえすればどんな使い方をしても良い」
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