30
「え、星七、なんて?」
「私が初めてプレイしたゲーム。四角の中に星を七つ探す、ゲームなんです」
さっきの話の続きかとようやく理解しつつも、天宮の言うゲームが一体何のタイトルを指しているのかが分からない。
「何てタイトルだ? 四角の中に星を探す? スーパー配管工64は七つじゃないしな……」
「っていうか星を七つって、星七の名前じゃん。もーこの子、酔ってるなー」
笑い声が響く中、天宮は浬だけを見つめていた。
あぁ、またこの目だ。瞳の奥に、強く、激しく輝く星を宿したような――
「久城さん、タイトルあてゲームです」
そう言って、天宮は仄かに色づいた頬を緩ませる。その、どこか掴み所の無い笑みにどぎまぎしながら、浬は視線を彷徨わせた。
「タイトル……今のところ思いつかないな。……というか何で俺に?」
「久城さんはゲーマーの鏡なので、きっと分かると思いまして!」
そう言われると、ゲーム好きとして挑戦を受けないわけにはいかない。
「わかった。正解を思いついたら言う」
「はいっ、楽しみにしてます!」
元気よく天宮が頷くと同時、再び肩に重みを感じた。ギョッとして隣を見やると、雪平が浬の肩に頭を預け、すやすやと寝息を立てている。
声にならない悲鳴をあげていると、他のメンバーもこの事態に気付いたようだった。
「うわっ、雪平ちゃん大丈夫?! 潰れちゃった……?」
「あらあら」
「ギャルゲーならスチルになるところね」
黒木はのんびりと酒を飲み干しながらそんなことを言うが、浬は気が気では無かった。
「お……俺は一体どうすれば……」
「しばらくはそのままにしておいてあげたらどうかしら。すぐに目を覚ますかもしれないし」
と花里アドバイスをもらい、浬は極力動かないよう努めることにした。しかし――……
――――……
「雪平ちゃん、起きないわねぇ」
困ったような花里の視線は、浬が背負った雪平に向けられている。ほんの少しのアルコールでぐっすりと眠ってしまった彼女は、退店の時間になっても目覚めることはなかった。店に迷惑をかけるわけにもいかないので、とりあえず浬が背負ってビルの外まで出て来たのだ。
時折耳にかかる吐息や、背中の温もりや感触には全身全霊で意識を向けないようにしつつ、これからどうするか思考を巡らせる。しかし答えを出す前に、宇佐見から救いの手が差し伸べられた。
「あっ、あたし雪平ちゃんの最寄り駅なら知ってるよ! 前に聞いたことあるんだよね」
「た、助かる。とりあえずその駅までタクシーで送るか……」
宇佐見のコミュニケーション能力に感謝しつつ、駅名を聞いてタクシー乗り場に目を向ける。
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