3
天宮はノンストップで喋り続け、六つめのアイデアについて語り出そうとしたところで、井坂によって時間切れを告げられた。
他の面接官たちは疲弊しているようだった。天宮が最後の礼をして、紫のマントを翻しながら面接会場を出て行ったあと、
「いやぁ、変わった子だった。あの格好はちょっと、ねぇ」
「ははは……ゲームが好きなことは伝わってきましたけどね」
これはお断りの流れか、と浬はすぐに察する。
何度か面接官として参加させてもらってはいるものの、浬はあくまで人数あわせのような立場だ。採用は上に立つ人間が決めるもの、といった空気がある。
「
少し言いづらそうにやんわりと、井坂がNOを出した。部長と課長が小さく頷く。決まりかけたその流れを、浬は軽く手を上げることによって制した。
「なら、アスクロチームに来て頂いてもいいですか?」
「……アスクロチームに?」
部長と課長、そして井坂まで全員が一様に目を丸くする。
「アスクロチームにプランナーはいません。俺が兼任しています。なので……」
「いやいやいや、君の稼働が厳しいのは分かるんだけどね?」
やれやれと首を横に振ったのは課長の
「今のアスクロの売上げじゃ、人件費上乗せは厳しいでしょ。井坂くんがプロデューサーをしていた頃なら全く問題なかったけどねぇ」
「どんなサービスも、時間が経てば廃れるものですよ。それに今の売上げ低迷は久城くんの責任ではないですし」
「井坂くん優しいなぁ。ま、久城の前の……
「…………」
浬は黙って、長谷田の艶やかな額を見つめていた。この辺を見ていれば、相手からは目が合っているように見えると何かで学んだからだ。
「でも、ねぇ。サ終部屋に人員強化するのはちょっと……」
「は、長谷田課長!」
「あ、ごめんごめん」
「いいですよ。そう呼ばれていることはチームメンバー全員知ってますから」
――サ終とは『サービス終了』の略。主にソーシャルゲームの運営停止に伴う、サービス提供終了に対して使われる言葉だ。
今のアストラ・クロニクルはまさにサ終寸前といっても過言ではない状況で、アクティブユーザー数や課金率の低迷は歯止めが効かず、僅かに残ってくれているユーザーにさえ、そろそろサ終だろうと噂されているほど。
浬が所属するアスクロチームのメンバーが押し込まれた旧会議室は、いつしか他の社員たちに『サ終部屋』と揶揄されるようになっていた。
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