プロローグ "隠されたオアシス"
─────旅人たちは、雪をかぶった岩山の、截然たる崖の上で、ふと立ち止まる。
そして、まるで誰かに呼ばれたかのように……懐かしい人の声を聞いたかのように、来た道を振り返った。
月影が落ち、灰色に染まった雪原の中に、無数の篝火で彩られた城壁が見える。
飾り気のない、堅牢さだけを重視したそれは、つい先程、彼らが逃げ出してきた都市・ゼルガフォートのものだ。
そして、更にその向こうにあるのは、雪原から一転、どこまでも続く砂の海─────またの名を、"死の砂漠"ゼルガ。
その中には、彼らが帰るべき故郷が存在している。
しかしその場所に、彼らはまだ帰れない。
……否。帰るための旅が、これから始まるのだ。
◇ ◇ ◇
話は一週間ほど前に遡って。ここは"隠されたオアシス"マカブ。PC達の故郷である小さな村。
PC達は、そこでいつものように、平和な日常を過ごしている。
本編に入る前に、メンバーの紹介からしていこう。
◇ PC紹介 ◇
「……異常、なし。本日も、ご安全にー」
一人目。筆者が操作するのは、森羅導師にしてライダーのティエンス、セレスティア。
野伏としての知識・技術も持ち合わせており、それを活かして、毎日オアシス周りの哨戒を行なっている。
相棒の騎獣・ホースのアルヴェールも一緒だ。哨戒ついでに、水を汲んで帰るので、その手伝いをさせられている。
彼女の生まれはマカブではない。もっと言うなら、何処なのかも分からない。オーレルムの外だった可能性もある。
そんな彼女は三年前、ゼルガフォートの近くの遺跡で、仮死状態だったところを起こされた。そこから一年働いて、魔晶石の代金を返して……森羅導師故にか、人混みや都会があまり好きでなかったため、都市を離れ、マカブへと辿り着いた。
ちなみに今回、GMは各話、担当のPLが行なうことになっている。私はプロローグと一話、そして十二話担当だ。
その為、担当話以外の回は、GM視点でないと分からない事柄については触れられない。その点ご了承頂きたい。
◇ ◇ ◇
「……すぴぃ……。えへへ……これが……」
二人目。藁の上に寝転び、昼寝をしている少女は、バジリスクのウィークリング・ホープ。
マカブの老エルフに拾われ、妹のマウアーと一緒に、ここで暮らすことになった。育ての親であるエルフは、二年前に流行り病で他界してしまっている。
その際、『悔いなき選択をし、この世界を精一杯生きろ』という遺言と、アールマータの声を聞き、神官としての力が目覚めることとなった。
拾われる前からそういう仕事をさせられていたのか、料理や給仕が得意であり、幼いながらもそれらを活かして村に貢献している。
「ちょっと退いて退いて。……よし。また寝ていいぞ」
そんなホープを一旦藁の上から退かし、運んできた藁束を重ねて置いているのが三人目、ナイトメアの少年・ローランド。
斧と"盾を"使う、トリッキーな戦い方をする戦士である。
彼もまた、マカブの生まれではない。自身の過去について、彼はこう語る。
『面白い過去話じゃないさ。ナイトメアなんて、みんな似たり寄ったりな話だろう?』
『端的に言えば、やらかした兄弟の身代わりになって故郷を追われて、ここに流れ着いたのさ』
彼のような経歴を持つ者も、この村には少なくない。良くも悪くも、来るもの拒まず、去る者追わずの村なのだ。
◇ ◇ ◇
「え、また壊れたのでありますか!?……あー、これはそろそろ限界でありますな……部品ももう無いでありますし……」
四人目。思案顔で魔動機の修理に従事しているのは、エルフの魔動機士・フェルーザ。
彼女はマカブどころか、オーレルムの生まれでもない。曰く─────
『小職は帝立マギテック協会第7支部鉄道部技術課国際協力係所属、技師補のフェルーザ・ウマル・アル=タシュカンディアであります。故郷は一面の砂に緑が少々、水を一摘みという感じであります』
『小さい頃から魔動機が好きでありまして……そのおかげもあって、帝国のマギテック協会に職を得られたのは良かったのでありますが……』
『鉄道での移動中、蛮族の襲撃に会いまして、そこからなんやかんや拾われ先での酷使&脱走で、此処へ流れ着いた次第であります』
……つまりは、ブラック企業から脱サラしての田舎暮らしである。
技術職が世知辛いのは、現実もラクシアも変わらないらしい。
◇ ◇ ◇
「セレち、見張りおつかれはん!なんやおもろいもんみっけた?」
「ううん、なんにもー。強いて言うならー……今日のアルは、いっぱい食べていた、かしらー」
癖のある喋り方をするリルドラケンの少女が、五人目・ダシュア。
真っ当なデーモンルーラー……であるのだが、元・故郷である砂漠の集落が魔神に襲撃された際、犯人の濡れ衣を着せられ、追放処分を受けた。
そして、自決を迫られ、川に飛び込まされることになったのだが。
『でもなぁ、うち強いから泳げてしまったんよねぇ。めっちゃ』
めっちゃ生き延びてしまったのである。
『てことで、元居た集落はもう関わりあらへんし、オアシスでのんびりやらしてもらってたって感じ!戦闘では、みんなをばっちり守っていこうと思っとるよ~』
装備は魔法使いらしからぬ、金属鎧と盾。それもそのはず、彼女は《かばうⅠ》持ち。
味方をかばいつつ、召異魔法を活用して攻撃や更なる補助を行なう……というスタイルである。
「おー、たくさん食べはったん。マジえら」
「寝る子と、食べる子は、よく育つのよー」
「おや、……では、もう少し大きな獲物を探してきた方がよかったでしょうか?」
そして最後、狩りから戻ってきた男が六人目、シャドウのアルゲス。
『マカブには、産まれて間もないころに流れ着きましてね』
『度々眼鏡を外しているのは……それなりの値段だから、というのもありますが。実は、目が悪いわけでもなんでもないので』
『言ってしまえば見栄でかけているのですが……、このことはご内密に』
村の中でもそこそこ年齢が上の方である(PC内に限って言えば最年長)彼だが、意外とお茶目なところが多い(PLの"癖"とも言う)。
ちなみに彼は"拳闘士"を名乗りつつも、拳ではなく足で戦うのだが─────
『足だけで戦う理由、ですか?───ほら、あまり"手を汚す"ことはしたくないので。それに、足ならば"洗う"ことはできるでしょう?』
『……冗談ですよ』
……とのことである。
ダシュア:「お、アルぴ!えらいでっかい獲物やねぇ。今日はうちおらんでもケガせんかった?」
アルゲス:「今日が運がいい方でしたから。この通り無事ですよ」
ローランド:「そりゃあよかった。で、そいつは丸焼きにするのか?」
ホープ:「煮込んで鍋にするのもよさそうだよ。この量なら」
アルゲス:「そうですね……。まだ備蓄に余裕はあったはずですし、早めに食べてしまうのもいいですね。そのように打診してみましょうか」
フェルーザ:「おお、それは期待できそうでありますな!」
セレスティア:「がまん続き、だったから。たまにはぱーっと、ね」
─────とまぁ。過酷な環境でこそあるが、君たちマカブの民は逞しく生き、平和な日常を送っていた。
そんな日常が、その日の夜、突然終わりを迎えるとも知らずに。
◇ プロローグ(P.22~25迄) ◇
GM(私):さて、ホープ。その日の未明、君はふと、目を覚ました。かすかな物音と、住居の扉の外で、何者かが動く気配を感じたからだ。
ホープ:「……??なにか、いる?」と起き上がり、ランタン片手に外へ。
GM:ではそうすると、同じく灯されたランタンを手にした一人の少女が、集落の外へと駆けていくのが見えた。君は、その容姿に見覚えがあっただろう。他でもない君の妹、マウアーだ。
ホープ:「……マウアー?こんな時間に何を……?」
GM:そしてその様子は、とても彼女のものとは思えないものだった。艶然と微笑み、脇目も振らずに駆けていく。そんな姿を、君は今まで一度だって目にしたことがなかった。
ところで。PC1(ホープ)の妹であるマウアーちゃんだが、当然妹なので、ホープより歳下な訳である。
なので。
ローランド:……ちょっと待って。マウアーちゃん六歳?
アルゲス:ピピーッ!
GM:おっ事案か?
実際、この後起きる出来事は(色んな意味で)事案ではある。
一応、マウアーの立場を姉に変えることで、年齢問題を解決するというのも考えたんだけど……まぁウィークリングならこの歳でも割と問題ないのかな……などと思ったりしたのであった。
GM:さておき。彼女が向かっている方角には、もう何千年も前から存在すると伝えられている、古めかしい石造りの神殿がある。周囲で散見される石壁の痕跡や像の残骸などは、村の子供たちに遊具として活用されているが、まさかこんな夜中に遊びにいく訳ではないだろう。
ホープ:「……何かあってからじゃ遅いよね。見に行ってみよう」
GM:では君は、気づかれないように後を追うことにする。さて、他四人はどうする?
ダシュア:夜警で村を離れていた、かな。
アルゲス:この後里内に入ったらアウトだろうし、一緒に夜警してた、が丸いかな……
なおこのプロローグ、かかる時間を考慮した結果、全PLに事前に目を通してもらってからセッションを開始している。
なのでPLは、プロローグで起こる出来事はなんとなく知っている。知った上で、じゃあPCにどう反応させようか、という趣旨ですね。
GM:ではローランド以外は、夜警に回っていたということで。セレスもそっちと一緒としておこう。
各自相談の結果、そのようになり。
GM:さて、件の神殿前。果たしてそこには、ホープが義兄として慕っているエルフの男、ニオが待っていた。
ホープ:「あれは……ニオ義兄さん?」
GM:マウアーが駆けてきた勢いそのままに、ニオの胸の飛び込むと……口づけを交わした後、開かれていた神殿の石扉の向こうへと消えてしまう。
ローランド:音もなく、ホープの後ろから顔をだす。「わお大胆……」
ホープ:「!?」
ローランド:「シッ。」にしてもマセガキがよ。
まったくである。六歳と十一歳のロリショタカップルが夜に秘密の逢瀬とは。
……まぁでも、だいたいの種族が十五歳で成人のラクシアにおいては、これくらいの年齢から結婚を見据えた恋愛をしていても不自然では……あるか……ニオはともかくマウアーにはまだ早すぎるよな。
ホープ:「……あれはいいとして……なんで神殿の扉が……?ローランにーちゃん、気にならない?」
ローランド:「確かに怪しいぞ。あの石扉を、子供二人で開けられるとは思えん」
ホープ:「……なんだか、胸騒ぎがする。ローランにーちゃん、すこし付き合ってほしいんだ」
ローランド:「ああ、いいぞ。」
ホープ:「ありがと!……じゃ、いこ。」と、ローランの右手をつかんでずんずんと歩きだす。
GM:ではそうして、足を動かそうとしたときだ。突然神殿の中から、断末魔のような、絶望と苦痛に満ちた金切り声のような音を立てて、慄然とした風が吹いた。それと同時に、君たちは左胸に、焼けた刃で斬りつけられたかのような、激しい痛みを感じる。
ホープ:「っ……!?」
GM:自分の身に何が起きたのか。確認しようとしても、月も星も、君の胸元を満足に照らしてはくれない。痛みのせいで、松明に火を灯したり、魔法を行使することも叶わない。そして……痛みに苦しんでいると、今度は本物の叫び声が聞こえてきた。それがマウアーのものだと、君たちは確信を持てる。
ローランド:「ニオ……お前は一体なにを……!」
ホープ:「マウアー……マウアーが……!」どうにか動こうとしてみます。
GM:ひきずるようにして身体を動かせば、神殿の中まで辿り着くことはできるね。
ホープ:では、這いずっていきましょう。
GM:そうすると、神殿の最奥に鎮座する女神像の前に、赤く輝く魔法陣があるのが見えた。その上には、赤黒い霧のような何かが、触手めいて怪しく揺らめき……そしてニオとマウアーは、それに囲まれていた。
ホープ:「なに、あれ……マウアー……義兄さん……!」
GM:マウアーはニオに抱き上げられており、ニオは……彼女の首筋に、人ならざる者の牙を突き立て、その血を啜っている。
ローランド:「吸血鬼……!?」
GM(ニオ):が、君たちの存在に気がつくと、口の端を吊り上げながら、ゆっくりと顔をこちらに向けた。『君たちは運がいい。どうせ、この子を尾けて来たんだろう?この神殿とその周囲は、我が神の腕のうち。死出の眠りへ誘ういと深き霧も、ここには届かない』
ローランド:あいつ……十一歳の語彙力じゃねぇ……!
わかる。いくつあればこの語彙力でも適切だと感じるようになるのか、要検証かもしれない。
GM(ニオ):そうして、狼狽する君たちに語りかけていたが……突然ひとり頷くと、楽しそうに笑い始めた。『いいことを思いついた。ねぇホープ、友情の証として、君には選択する権利をあげよう。マウアーだけは、花嫁として連れていくつもりでいたけれど、やっぱりここに残すことにする。そうすれば、いずれこの子は、血を啜り食らう魔物として目を覚まし、そして……君たちを殺す』
ホープ:「……!!」
GM(ニオ):『死にたくなければ、次の払暁に、この子を朝日の下に晒せばいい。そうすれば、この子は灰となって消える』
ローランド:「くそっ……ざけるな……」
GM(ニオ):『はは。殺すか、殺されるか。君の好きな方を……あぁ。後ろの彼と相談するのも、いいかもね?』最後にそう言って、高笑いをすると、ニオの身体は突然ばらばらに……いや。蝙蝠の群れへと姿を変え、君たちの傍らをすり抜けていってしまった。
ローランド:「まて……!」
ホープ:「マウ、アー……!」駆け寄れるなら、様態を確かめます。
GM:ではそうしようとした瞬間。身体か、それとも精神か、あるいは両方共が限界を迎えたのか、まるで糸が切れたかのように、君たちはその場に崩れ落ちてしまった。
ローランド:バタンキュ。
GM:やがて、老人の叫ぶような声で、君たちは正気を取り戻す。『……おい、しっかりしなさい!』他の四人もここから登場だね。
ローランド:「ゔ……こ、ここは……」
ホープ:「……マウアー……まうあぁ……」
フェルーザ:「お、目を覚まされた様でありますよ!」
ダシュア:「ま?ホプちとロラぴ、だいじょぶ?」
アルゲス:「大丈夫ですか、ワタシたちがわかりますか?」
ローランド:「命だけは、まだあるようだ。そっちの爺さんは……?」
GM(セレス):面識が全く無い訳では無いだろうけど、関わる機会はあまり無かった人かもしれない。『気をしっかり、二人とも。この方は、古老のワリム様よ』
ローランド:「どうしてここに?」
GM(ワリム):『どうしても何も。あの小僧……いや。吸血鬼に、してやられたのだよ、この村は』ちなみにマウアーは未だ意識を失っており、このままだと長くは保たなさそうに見える。
ホープ:「……そうだ!マウアーが……マウアーが……!」
ダシュア:「じーちゃん、マウちは?だいじょぶそ?」
GM(ワリム):『……大丈夫ではないな。少なくとも、この村では治すことはできん』
ローランド:「……って、そうだ。村に被害はないか?」
GM(ワリム):『ふむ。そうだな、事の深刻さを、お前たちにも伝えるよしよう』
アルゲス:「ワタシ達では、異常事態だ、という程度にしかわかりませんからね。感謝します」
GM:ということで、長話が始まります。全部やってるとこれだけで3時間くらい吹っ飛びそうなので要点だけまとめます。
ということで、例によって時間の都合上、ここはばっさりカットされた。
本当に長いんだよな話が。大判1ページまるっと使ってるもん。ソロならいざしらず、複数人でのプレイでこのシーンをちゃんとやるのは些かヘビーすぎる。
さておき、ワリムの話の要点は下記の通り。
・ニオが村の民を生贄にして吸血鬼になる儀式を行なったよ。そのせいで里は今瘴気の霧に包まれてるよ。中の人たちは多分無事じゃない(仮死状態)よ
・里から離れていた君たちは即死は免れたけど、生贄であることに変わりはないよ。ワリムはライフォス様の御加護のおかげか、生贄は免れたよ
・マウアーはこのままだと長くないので、ワリムが秘術で氷の棺(書き方的に【アイスコフィン】とは違うらしい)に閉じ込めてどうにか生かすよ。でも持病のせいで老い先短い身なので、保って一年だよ
・その間にみんなでニオを追ったり、オーレルムに伝わる秘宝のひとつ〈時の卵〉を見つけてきたりしてほしいよ
・肝心な〈時の卵〉の場所はわかんないよ。でもゼルガフォートにいるアシムという元商人の男から話を聞いたことがあるので、もしかしたら何か知っているかもしれないよ
・ということなので、まずは彼の元を訪ねるところから始めるといいんじゃないかな
といった感じ。
ちなみに〈時の卵〉とやらは、この地では有名な"黄金の魔法王"マイドゥルスが生み出した"黄金九至宝"のひとつとされている。
彼に関する話も、書籍内に詳細が載っているが……物語の中でもある程度明かされるので、ここではまだ触れないでおく。
フェルーザ:「時の卵!何とも興味深い響きでありますな……」と目を輝かせつつ。「とと、失礼、そうも言っていられない状況でありましたな」
アルゲス:「信じがたい話ばかりではありますが……それに縋るほかありませんね」
ローランド:「だけど、それも使い捨てだろ?」
GM(ワリム):『だが、それに頼る他あるまい。それとも一年の間に、この儀式の影響を消し去るだけの力を身に付けるのか?』
ローランド:「……マウアーか村か、どっちかしか救えないか」
ホープ:「……どうして……どうして、こんなひどい目に……」ぼろぼろと涙をこぼします。
ダシュア:「ま、とりま卵さんでどっちかは助けられるんやから。なんなら二個持ってくればええし!」
ローランド:「黄金九至宝……使えるのは、時の卵だけじゃないかもしれないしな」
フェルーザ:「そうでありますな。幸いにも時間も残されていることでありますし、そう悲観することは無いでありますよ」
GM(ワリム):『うむ。何も出来ぬよりは、余程良い。お前たちに任せきりにしてしまうのは、古老として情けない話だが』
アルゲス:「いえ、……この里に拾われた命として、その恩返しをさせて頂きます」
ローランド:「あぁ。これも何かの因果だ、受け入れてくれた恩は返そう」
ダシュア:「マウち守ってくれはるんやし、じーちゃんはそっちがんば!」
GM(ワリム):『……済まないな。せめて、この子の命だけでも、繋ぎ止めてみせよう』
ホープ:「……やってやる……どっちも……救う道を……ぜったい、みつけてやる。」
GM(セレス):「えぇ。……それじゃあ、早速、行きましょうか。一分一秒も、惜しい事態、なのだわ」
斯くして、PCたちは旅立つことを余儀なくされたのであった。
ちなみに、この裏で流れていた雑談タブでは。
アルゲス:ぬいぐるみが無いと寝れない27歳男性、睡眠不足確定
ダシュア:うちをぬいぐるみ代わりにつこてもええで?
アルゲス:ダシュアじゃワタシの血流れてないし……夜警の時もぬいぐるみ持ち歩いてる面白人物になるか?……あっ、だから両手使わないのかお前
ホープ:謎が解けたわね
GM:お前が一番不審な人物なんよ
パーティ最年長の男の睡眠に関する問題と経歴に関する謎について触れられていた。
◇ プロローグ(P.25~26) ◇
GM:さて、渡された簡単な地図を頼りに歩いていると、二日目の昼、馬車に乗った一人の男が、こちらにやってくるのが見えた。顔に見覚えのあった者もいるだろうか、彼はマカブに不定期に行商に来ていた商人・バセルだ。『おや。君たちは……マカブの人達だね。どうしたんだい、徒歩でぞろぞろと』
アルゲス:「……と、お久しぶりです。」一礼する。
フェルーザ:「おや!部品の取り扱いではかねがね」
ホープ:「……ここにいきたくて。」地図を見せます。
GM(バセル):『これは……ゼルガフォートに用事かい?それにしたって、いつもは馬車で来ていたと思うんだけど』
ダシュア:「マカブピンチで旅的な?」
フェルーザ:「と、そうでありました、大変なことに……」
GM(バセル):『大変なこと。……大事なお得意様の危機とあらば、きちんと聞かせてもらおうかな』
アルゲス:そういうことならかくかくしかじかしましょう。
ローランド:「で、俺達がここにいるわけだ」ニオに付けられた刻印を見せる。
GM(バセル):いあいあくとぅるー。『……にわかには信じがたい話だね。けど、君たちの様子を見るに、嘘では無さそうだ』
アルゲス:「信じて頂けるならありがたい限りです。流石に、確かめるためにマカブへ近づくわけにもいきませんからね」
GM(バセル):『……分かった。このままマカブへ行っても、その瘴気とやらのせいで、まともに商売はできなさそうだね。なら、ここで引き返すとしよう』
ダシュア:「せやね、行かへん方がええと思うよー」
GM(バセル):『……それで……乗っていくかい?幸運なことに、君たちが乗れるだけのスペースはあるよ』そう言いながら、幌馬車の荷台を指差すよ。
ホープ:「……いいの?」
アルゲス:「感謝します。今は返せるだけのものはありませんが……必ず、この恩に報いると誓いましょう」
GM(バセル):そうして君たちを乗せた馬車は、百八十度進路を変える。『ところで。話を聞いた感じだと、ゆっくり荷造りをする余裕もなかったみたいだね。……元々、村で売るつもりの商品だったんだ。なら、君たちが積荷を持っていくことに、何の問題もないか』
ローランド:「いいのか、じゃあありがたく。この恩は後日必ず返すよ」
ホープ:「毛布に松明に……盾も……うん。絶対、恩はかえすよ」
GM(バセル)『流石に、タダでとは言えないけど。役に立ちそうな物があるなら、どうぞ持っていって』ということで、ここで初期装備を揃えられた、という流れになるよ。
ある程度の荷物は元から持っていただろうけど、プロローグの記述的に、しっかりした装備品まで持ち出せてはいないのである。
なのでPC達は、この商人から色々と買っていったことになる。
GM(バセル)『村を吸血鬼から救った英雄達を、最初に手助けした名誉ある商人となれることを、今から楽しみにしておくよ』
ローランド:「あぁ。後悔はさせないぞ」
フェルーザ:「出世払い、というやつでありますな!」
こうして、バセルの助けもあって、彼らは無事にゼルガフォートへと辿り着く。
旅立ちから七日、いよいよ物語の本編の始まりである。
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