はい、アーン。

 はぁ〜い、ご飯出来たよ〜。なんと、今日はカレーです! えへへ。好きでしょ、カレー? 奮発しちゃった。はい、アーン。どうどう? おいしいでしょ?

 ……うん、流石にバレちゃうか。そうです。これはただのレトルトカレーです。ち、違うよ? 料理が得意なのは本当だよ? ただちょっと、今はたまたま食材の持ち合わせがなくて……ああっ、もう! そんな疑いの目で見ないでよ! 本当ったら本当だから! また今度、ちゃんとした料理もするから! その時は、またカレーが良いかな? 君の好みに合うように、腕によりをかけて作るからね。でも、今日はごめん。本当にそれしか無くって……私、もっと頑張るから。もっと君のために頑張って、おいしいもの作るから。だから、見捨てないで……。

 あっ、ごめん。手が止まってたね。はい、アーン。……うん、そっか。おいしい、って言ってくれて嬉しいよ。うん、どんどん食べてね。遠慮しない遠慮しない! はい、アーン。うんうん、良い食べっぷり。君がおいしそうに食べてくれると、こっちまで嬉しくなっちゃうな。えへへ。


 えっ、私は食べないのかって? あーいや……君が食べた後に食べるよちゃんと、うん。う、嘘じゃないし! ただちょーっとダイエット中、っていうかね? 今でも十分細いって? ど、どこ見てんのバカ! ……わかった、わかったよ。私も一緒に食べる。それで良いでしょ?

 あー、ぱく。……ん〜〜〜っ、おいっしい! そっか、カレーってこんなにおいしかったんだ。こんなまともな食事するの、随分久しぶりかも……って何でもない何でもない! 違うの、君ととる食事は最高だねって言ったの。ほら、大事なのは何を食べるかじゃなくて、誰と食べるかだって言うじゃん? ……君は知らないんだよ。孤独で何もなかった私が、どれだけ君の存在に救われて来たか。私にとって君が、どれほど大切な存在なのか。狂ったこの世界で、私にはもう、君しかいなんだよ。君のためなら私は、どんな犠牲だって……。

 って、ごめん。食事中にする話じゃなかったね。さあ、食べよ食べよ? せっかくのカレーが冷めちゃう前に。はーい口開けて〜。あーんっ。

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