3人目 ロマンス王子 雅紀・・・息する度に気障が出る

友達の紹介で「雅紀」とメッセージのやり取りを始めて2週間が経った。

雅紀を紹介された理由は「音楽の趣味が合いそう」というだけだったため、やり取りの内容は趣味の話が大半を占めていた。


やり取り続けてはいるが、知り合った頃と内容が変わらず、未だに会う話に発展しないでいた。


共通の友達カイトからの情報しかなく、お互いの顔は分からない。


カイトが言うには「不細工じゃない」「歌がうまい」「背は低い」らしい。

歌がうまい以外は褒めているわけじゃないが、紹介してくるということはいい人って事だと思いたい。


顔も知らない相手との初対面は何となく緊張するから、友達を交えて2対2で会う事にした。

あまりにも話が進まないから芽衣の方から切り出したのだ。


池袋に夕方の18時に集合した。

雅紀の友達はてっきりカイトが来ると思ってたのに違う男子が来る事になって、友達の典子はちょっとテンションが下がっていた。

典子はカイトの事を気に入っていたのだ。

「まぁでも今回は芽衣の彼氏作りがメインイベントだからカイトが居なくても我慢するよ。」

「うん・・・彼氏作りって‥(笑)。まだ分からないけどね。」

典子と芽衣は小学校からの付き合いで、高校は別になったものの、バイト先でまた再会して連絡を取るようになった。

カイトとも典子と一緒のティッシュ配りのバイトで知り合ったのだった。


「姫様たちどうもお待たせしました。」

深くお辞儀をしながらHMVの入り口で待つ芽衣達に声かけて来たのはどうやら雅紀らしい。

雅紀は黒のロングコートに黒いハットを被って、ショーの前の挨拶のようにお辞儀をしていた。

「芽衣(笑)ちょっとこの人うちらの事姫様ってwwwウケる・・・!!」

典子は笑いをこらえながら小声で芽衣の肩を叩いた。

「典子やめなよ・・聞こえるから!」

雅紀達は典子の陰口は気にせず男子2人並んで前を歩いていた。


確かに雅紀の第一印象は、少女漫画よりも非現実的な話し方だったり、何かの役に入り込んでいるような独特の雰囲気だ。

話をしていても「人からどう見られているか」を常に気にしているように表情を作っているように感じた。

典子はそれが所謂「ナルシスト」に見えたのだろう。


「芽衣ちゃんはさ・・・」

こんな風に私に問いかけても、雅紀はガラスがあればさりげなく自分の前髪を気にしていたり、常に表情の確認をしていた。


ナルシストなのもそうだけど、自意識過剰過ぎかも。

そんな数分で変わんねぇよ!っとツッコんでいいのか。


でも褒め上手だし悪い人ではないんだろうな~

実際に芽衣の事も写真より可愛いとかこちらの気分が良くなるような事をたくさん言ってくれた。

その分自分の話も多いのだが(笑)


友達も合わせて何人かで遊んだり、二人で会ったりを繰り返し、芽衣と雅紀は付き合う事になった。


「この命をかけて、生涯あなたをお守りします。どうか私と付き合って下さい。」


これが雅紀の告白の言葉でちょっと笑ってしまったが、芽衣はこの気障な言葉に心地よさを感じて、雅紀と交際する事にした。









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