2人目 K応BOY 樹・・・文化祭は恋の始まり

あれから何事もなく復活した訳ではなかった。

一気に情報が流れ込んできて44キロあった芽衣の体重は37キロまで落ちたり、友達との会話にも上の空だったり・・・。


そんな中でも時間は残酷に過ぎていく。


大好きなGLAYの歌の歌詞1つ1つに自分を重ねてみたり。


愛していると嘘の言葉の繰り返し


無限のこの宇宙で出逢う奇跡のような大切なぬくもりが今この腕を離れてゆく


でも意外と自分は強かなんだと気付いていた。


ただ彼氏が欲しかっただけ。


女子高生というプレミアがついている「今」この瞬間にまたキラキラした恋をしないともったいない。


そんなわけで芽衣は同級生春奈の誘いであの有名大学K応の文化祭に来ていた。

「芽衣には元気になってもらいたくて!今日は楽しもう!」

「ありがとう!制服で来たからかやたらと注目されてるね・・・」

「まぁ大学の文化祭だしうちらみたいな田舎の高校生が珍しいんじゃね?」

制服で来たのには訳があった。


単純に「女子高生」をアピールするため。

制服で個性を出すため。


そして一番は「目立つ」ため!


確かに大学の文化祭というだけあってどちらかというと私服の人が多かった。

「やきそばいかがですか~?」

「フィーリングカップルやってま~す!!」

「イケメンカフェでーす!」

さすが高校生の文化祭と違ってクオリティが違うしお金もかかっている。


「ドーナツ食べよ!あ!プリクラもあるよ!」

「も~春奈ばっかり楽しんでんじゃん(笑)そんなに買ってたら電車賃なくなるよ!」

「大丈夫!何かあったらここの友達に出してもらうか(笑)」

元々は春奈の友達がK応に通っていたよしみで招待されたのだった。

「ふーん。春奈って男友達多いよね。」

「そんな事ないけど~後で紹介するね!」

160センチ超えの芽衣と違って春奈は154センチと低身長で見た目も所謂いわゆる可愛い系だ。

話し方がというかあざとい所もあって、そういう所にもてない男どもは騙されるのだろう。

「おーい春奈!!」」

後ろから知らない男の声がした。


「あ~!坂田先輩!探してたんですよ~!」

うそつけ、ドーナツとかプリクラ言うてたやん!と突っ込むのは後々めんどくさくなるからやめておこう。

「ごめんな、春奈が友達連れて来るっていうからさ。俺も変なやつ連れてこれないじゃん。」

坂田先輩と呼ばれた人は背は高いがハッキリ言ってそこまでかっこよくはなかった。

見た目、服装、どれを見ても「普通」という言葉が当てはまる。

春奈に寄って来る男はみんなこんな感じだ。

「どーも、春奈とは中学が同じでした!坂田って言います。失恋したお友達ですか?」


は・・・?


「ちょっと春奈・・そんな事まで言ったの!?」

「まぁまぁ!で、坂田先輩、その人が例の人?」

「そうそう。同じ1年の法学部。」

春奈が自分の恋愛事情を他人にペラペラ話していた事にイラつく暇もなく、新しい恋の予感が訪れた。

坂田先輩の隣に居たのは少し明るい髪色に切れ長の目。

「1年の新島樹にいじま いつきです。」

まぁ・・・いいか。


少し好みのタイプだった。


その後は4人で抜けてカラオケに行った。

坂田先輩はどうせ春奈を狙っているのだろう。

だからか樹は私の方を気にかけてくれた。

坂田先輩は春奈がドリンクを取りに行く度「俺も手伝うよ。」と金魚のフンみたいについて行った。


「芽衣ちゃんは高2なんだね。」

「そうです!」

声のトーンでさっきより明らかに自分のテンションが上がっているのが分かった。

「坂田の奴さっきの子狙う口実にオレの事呼んだみたいだね。オレらだけなんかカヤの外みたいだし除け者同士番号交換しない?」

樹は坂田先輩と仲良いのだろうか、こうは言っているが目元は優しかった。


連絡先を交換した樹と私は、春奈達が戻ってくる間に今度は2人だけで会う約束をした。


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