第9話 ダンジョンに潜る日常
今日は”ミスリルのダンジョン”の3階層に居る。横にはニコニコしたクラウディア姫、後ろにはブスッとしたジーナ。僕たちを守るように周りには20人の騎士。
3階層の魔物はミニミニミスリルゴーレム、ここに居る者ならワンパンレベルの雑魚た。
「姫様、こちらにミニミニゴーレム2体です。」
「わかりましたですわよ、では参りますわよ。」
騎士さんは僕とジーナを引き連れた姫様を魔物のもとに案内する。そこには魔物が逃げないように見張っている別の騎士が1人。
「姫様、こちらです。」
「ありがとうございますですわよ。ではユーリ様、ご一緒にですわよ。」
「では、せーの、でいきますね。」
「「せーの!」」
ミニミニミスリルゴーレム2体は倒れた!!
『接待だ!』
「では戻りますですわよ。」
3日に1回、クラウディア姫様とこのようなミスリル集めを行っている。初日に渋滞が起きたので護衛の数を減らして欲しいとお願いしたら、姫様の御付きの人に滅茶苦茶怒られた。しかも初日はそれなりの時間ダンジョンに居たのだが、女性は夕食の前にしなければいけないことが色々あるのだからもっと早く切り上げないとダメだと、これも滅茶苦茶怒られた。当然毎日ダンジョンに行くなんて以ての外です、と釘を刺された。
2回目以降は、姫様とのダンジョン探索は1回2~3時間に制限されたため下層に行けないので、かなり物足りない感じだが3階層で活動している。護衛は多すぎて逆に邪魔なので、姫様の帰り道の安全を確保するという名目の元、1階層および2階層でミスリル集めをしてもらっている。
「ユーリ様、今日は沢山集まりましたわよ。」
姫様はニコニコ顔だ。僕もニコニと微笑み返す。僕は小市民だから王族に言い返すなんて考えも及ばないし、姫様の様に高貴で美人に微笑まれれば、こちらもうれしくなってくるのは本音だ。
後ろの無表情なジーナが怖いが今は気にしないことにする。確かに今日の成果は1,2階層で集めて貰っていた分を含めても、姫様がいない日に僕とジーナが集める量の1割にも満たない。姫様同行のダンジョンは姫様の接待以外にほとんど用を成していない。
姫様のレベルは40とのことだが、どうやってレベルを上げたのだろう?
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しばらくした別の日、僕とジーナと騎士2名は”ドラゴンのダンジョン”の10階層にいた。最近、姫様の接待が無いときには1泊2日でドラゴン狩りに勤しんでいる。と言ってもドラゴン系はやはり強く騎士2名は10階層まで来たらキャンプの用意をしてそのまま帰りまで待機、ジーナは1日目に僕と一緒に15階層まで行って2日目は騎士と一緒に待機、僕が2日目に20階層まで行ってベビードラゴンを狩って戻ってくるという流れだ。
「じゃあ、ベビードラゴン退治に行ってくるよ。」
「はあ、あたしたちが護衛のはずなのに、お留守番なんてね。」
「まあまあ、いつもの事だし。昨日も16階層にチャレンジしてみたけどやっぱりダメだったじゃないか。」
「あんたがおかしいのよ、あの攻撃を見切れるなんて!あたしだって最近レベルがぐんぐん上がって42になったのに、あんたがレベル30なんて詐欺よ、詐欺。」
16階層に出る魔物はベビーワイバーン、ベビーと言っても尾を入れず1m程度の大きさで群れで出現する。15階層までと大きく違うのは16階層の天井が高くベビーワイバーンが自由に飛び回れるということだ。
ここ10階層は階層ボスとして、ワイバーンが1匹出現するが、ここは天井が低く近接戦闘に持ち込み易いためジーナ1人でもなんとか倒すことが可能だ。
「レベルを測っているのはエッダさんなので、詐欺疑惑については僕は無罪だ。」
「あんたが、魔物を全滅させれば、あたしも安全に通れるんだから、気合入れて全部倒しなさいよ。」
「16階層から19階層は似たような感じで群れででてくるし、しかもあいつ等最初の一撃の後は、なかなか手の届くところに降りてこないから、真面目に相手する時間はないよ。」
「ああ、真面目に答えなくていいから、ちょっと言ってみただけよ。でも2日で帰らないで、もっとじっくり攻略した方がいいと思うんだけどね。”ミスリルのダンジョン”に行くのはもうそろそろ止めにしない?」
「まあ姫様が許してくれないからねぇ。」
「あんた相変わらず姫様に何も言えないのね。今から尻に敷かれてると大変よ、今からでも考え直したほうがいいんじゃない。」
「取り敢えず、問題はできるだけ先送りする主義なんだ。」
「主義って胸張って言えることじゃないでしょ!いい、今すぐ考えなおすのよ!」
「はいはい。」
「”はい”は1回。」
「はいはい、じゃあ時間無くなるから行ってくるよ。」
「ばかぁ、逃げるなー!」
何度となく同じようなやり取りを聞いている騎士2名は、今日も平和だなぁ~と思うのだった。
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