第2話 早速初めてのダンジョンに行きました
次の日、僕は柔らかなベッドで目覚めた。残念ながら1人だ。
昨夜、僕とお姫様一行は王都での拠点とする高級宿に移動した。王宮の中にも帝国のスパイがいるための処置とのことだ。
エッダさんと1人の少女が僕の部屋にやってきた。
「ユーリ殿、おはようございます、お元気がない様ですが?」
「…エッダさん、おはようございます。」
「ユーリ殿には、本日から王都のダンジョンに入って頂き、この世界の魔物と戦って頂く予定になっております。」
生返事を返す僕を無視してエッダさんは話を進める。
「この者がダンジョンにお供します。本日はわたしも同行させて頂きますが、明日よりはこの者と2名で行動するようにお願いいたします。」
「ジーナです。よろしくお願いします。」
赤髪ポニーテール、ちょっと”ふにゃ”とした感じの小柄で可愛い女の子だ。目の覚めるような美人というわけではなく、会いに行けるアイドルといった感じ。
「この者はわたしの姪になります。では出かけましょう。」
エッダさんとジーナに、金属の胸当てや小手等の装備を付けさせられ、有無を言わさずに連れ出された。
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エッダさんに引きずられるようにしてダンジョンにやってきた。
僕のテンションは最低だ。何故って?
昨日、宿に移動してから気付いたのだが、髪が”真っ白”だったのだ!
齢19才にして、総白髪だよ!
エッダさんは「綺麗な銀髪ですよ。」と言ったけど心が全然籠っていなかった!
しかも、「僕19才なのに!」って言ったら、「失礼ながら19には見えません。どう背伸びしても16才です。16才ということにしておきましょう。」だって!
異世界召喚されたのに、イケメンにならないどころか、若白髪で幼くなって、しかもなんとなく背も縮んでいる気がする。オーマイガー!!だよ。
僕の目の前にはダンジョンの不思議な光景が広がっている。ダンジョンの中なのに明るい。入口はあんなに小さかったのに、入ったところに大広間、しかも天井が見えないくらい高い。これ絶対に空間が捻じ曲がっているとしか思えない。
しかし、若白髪のショックが大きすぎて、初めてのダンジョンの感動が沸いてこない。
「では先に進みましょう。1階層に出るのはスライムです。特に注意事項はありません。」
『スライム!!序盤雑魚モンスターのど定番!!』
僕のテンションは少し上がった。少し探すとスライムと簡単にエンカウントした。
スライムが現れた!
勇者は様子を見ている!
スライムは跳ねた!勇者はほっこりさせられた!
勇者は様子を見ている!
スライムの色が変わった!勇者はびっくりした!
勇者は様子を見ている!
エッダの攻撃!「何遊んでるんですか!」頭を叩いた!勇者に1のダメージ!
スライムは分裂したそうにしている。分裂しなかった!勇者はドキドキさせられた!
勇者はスライムを凝視している!
ジーナは呆れている。
エッダの攻撃!「早くしてください!」頭を叩いた!勇者に1のダメージ!
勇者はスライムを突っついた。スライムは倒れた!
スライムの死体は消えてしまった。スライムの魔石1を手に入れた!
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「は~~」
僕たちは3階層に来ていた。1階層スライム、2階層ホーンラビットを倒し、僕のテンションはかなり高くなっていたのだが、この階層で遭遇したのは、”グリーンキャタピラー”、そうイモ虫だ。しかもデカい、抱き枕くらいのサイズだ。
『虫って小さいときには平気なのに何故大人になるにつれて苦手になるんだろう?』
しかも、4階層は”ゴブリン”らしい。ど定番中のど定番だが、画ずら的に楽しい要素が何もない。
「階段です。」
「1階層、2階層でかなり時間を食っちまったから、先を急ごう。」
エッダさんの言葉遣いが素がでてきたのか、ちょっと変わってきた。
4階層に降りても、これまでと同じ風景が広がっていた。広間があって真っ直ぐ進むと下に降りる階段。広間から人が2人ぐらい並んで入れるくらいの横道がたくさんあって、その横道を進むと魔物がでてくる。
しかし、4階層では異なる展開が待っていた。
広間の道を進み始めた途端、左右の岩陰から、矢とファイヤーボール?が雨のように僕らの上に降ってきた!
「ちっ!ジーナ!ユーリを護れ!」
2人は僕の盾になろうとする。全身鎧装備のエッダさんはまだしも、ジーナは僕と同じく胸当てと小手ぐらいしか身を護るものがない。
「危ない!」
身体が勝手に動き、ジーナの方に向かってきた攻撃を全て剣で叩き落とした。
『ファイヤーボールは剣で切れるんだー。』
見れば、こちらも攻撃を全て叩き落としたエッダさんは重装備と思えない速さで、岩陰に潜むゴブリンを殲滅して回っていた。
しばらくして、ゴブリンを全滅させたエッダさんが戻ってきた。
「ケガはないようだな。」
「おばさん、これからどうする?」
「ちょっとマズい感じだな。ここでゴブリンがあんな数で出たのは聞いたことがない。しかも我々が入るのを待ち構えてやがった。一旦戻ろう。
それと勤務中はおばさんではなく、隊長と呼びなさいと言ってるだろう。」
「わかりました、おばさん。」
「……」
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僕とジーナは冒険者ギルドにやってきた。エッダさんは騎士隊内で対応を協議するため別行動となった。
僕とジーナはギルド内の食堂兼酒場で遅めの朝食をとっていた。
この世界では朝一仕事終えてから、がっつりと朝食というかブランチ、長い休憩を取り、午後に働いて、夕方に軽食というか一杯飲んで、暗くなったら就寝という流れで、一日二食がスタンダードだ。
「今日はもうダンジョンには入れないわね。明日も無理かも。」
「どうなるのかな?」
「多分、騎士隊がダンジョンの掃除をすることになると思うの。」
「騎士隊が?」
「普通は冒険者がやるんだけど。ここに来てみて分かったけど、今王都には下層まで潜れる冒険者がいないみたい。」
「それを確認するためにここに来たんだ。」
「そうよ、何だと思ったの?」
「いや、そんなこと思いつかなかったからジーナは賢いな、と思って。」
「ジーナ”さん”でしょ。あたしのほうが年上なんだから。」
「ジーナは幾つ?」
「17よ。」
「じゃあ1つしか違わない、って違う、僕は本当は19なんだって!」
「またまた~。あんたの外見だとちょっと頑張れば、姫様の着替えを覗いても笑って許してもらえるわよ。」
『……ちょっと考えてしまった。やりまーせん!』
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