起承転結の.....承!

絶対に解けない問題

第2話 解けない問題

それから3ヶ月経った。

季節が巡ったのだが。

何故かそれでも窓の外には石橋。

石橋は諦めない。


俺は100回.....断った。

告白を、だ。 

付き合うのは、キャンセルしたい、と。

その理由は簡単だ。


俺と石橋は釣り合わないから、だ。

だからキャンセルしたのだが。

それを石橋は首を振って否定する。

どういう事か。

つまり俺と付き合いたい、という事だ。


「.....あのなぁ。石橋。もう諦めろって」


「嫌です。それだったら何の為にこの場所に来たかも分からないです」


「.....いやいや.....お前は同級生とか居るだろ。.....こんな犯罪者もどきと付き合ってどうかなるぞお前.....」


「先生は無実です!!!!!」


絶叫する石橋。

その影響で.....外の通行人がビックリする。

俺は慌てながら、分かった!、と慌てる。

それから、でもこうして待っていると11月だから寒いだろお前、と言うのだが。

石橋は、大丈夫です。私はヘッチャラです、と言う。


「.....私は貴方が好きです。.....だからこのチャンスをずっと待っていました」


「.....いやいや.....お前.....」


「.....山芝さんが良いんです。私.....山芝さんが好きなんです。認めてくれるまで諦めません!」


「う、うーん」


俺は悩みながら、分かった。じゃあチャンスを与えるよ。.....俺と付き合いたいなら.....俺の制作した問題を解いてもらおうか、と言ってみる。

石橋は?を浮かべながら、それって何ですか?、とやる気に満ちる。


「石橋。.....俺の数学の問題だ。.....それに答えたら付き合ってやるよ」


「.....数学.....苦手です。.....でも先生が作ってくれた問題なら.....!」


「そうか。.....じゃあ問題を出すから.....ちょっと待ってろ」


「はい!絶対に嘘じゃ無いですよね!先生!」


「当たり前だ。嘘は吐かん」


と言っても。

これはコイツには解けない。

何故なら俺は.....問題をネットで調べた世界で解けてない.....7大問題から出そうと思っている。

だから正解なんてないのだ。

つまり.....石橋には負けてもらう。


そのつもりだ。

それが互いに幸せなのだ。

だから石橋には申し訳ないが。

得意不得意とかじゃなくて。

石橋の幸せを願いたいのだ.....俺は教師じゃなくなったとしても、だ。


「.....先生。私.....しっかり勉強してきます」


「.....おう。期待してる」


「.....だから約束。必ず叶えて下さいね」


「配慮する」


俺は笑顔でブンブン手を振ってから去って行く石橋を悲しげな目で追う。

それから明日に向けて問題を調べる事にした。

全くな、と思う。

これだけ手間を掛けさせるんだから幸せになってほしいもんだ。

思いながら.....石橋の事を考えた。



「問題は1問だけ?.....そうなのですか?」


「ああ。1問だけだ」


「.....そうですか。それだったら余裕ですね」


「.....そうだな」


それから俺は控えめに問題の記載された、というか印刷された問題を出した。

そして制服姿で急いでやって来た様な感じで問題を石橋は解き始める。

だが、こ、これ数学ですか?、と目を丸くする。

現在は事情があって教科書に載ってない数学だな、と言う。


「.....嘘.....こんなの解けない.....高校3年でも習ってない.....」


「.....」


それをもう知っている。

敢えて解けない問題なのだ。

だから.....コイツには別のところで幸せになってくれ、と思いながら見つめる。

すると涙を浮かべ始めた。

ギブアップをしたい様だが.....それに耐えている感じだ。


「.....ギブアップか」


「.....ち、違います。私は.....先生とお付き合いするまでギブアップなんかしません」


「.....そうか」


「.....」


そして悩んでいる石橋を見る。

すると石橋はふとハッとして呟く。

先生。答えあるんですか?、と聞いてきた。


予想外の質問だ。

答えは.....擬似的には俺が解いた様な嘘の答えがあるが.....。

だが次の言葉に俺は心底ギクッとした。

それから汗が噴き出る。


「先生。もしかしてだけど嘘を吐いてませんか?こんな変な問題は先生も実は解けないでしょ?先生も」


「.....な、何故だ?そんな事を言ってない」


「.....じゃあ先生。.....何故こんな長文1問だけに絞ったんですか。質問内容」


「.....そ、それは.....」


まるで先生が私が答えるのを阻止してますよね、と言ってくる。

俺はギクギクッという感じで愕然とする。

すると涙をみるみる浮かべ始めた。

そして石橋は、先生の馬鹿!!!!!、と飛び出す。

それから外を掛けて行く。


「.....すまんな。石橋。.....俺とは付き合えないんだよ」


そんな言葉がふと浮かんで口にする。

それから天井を仰いでいると。

何故かふと石橋の悲しげな顔が浮かんだ。


今までずっと3ヶ月ぐらい.....ずっと来ていたしな。

でもこれで良かった。

アイツにはもっと良い男がいる筈だしな。

これで、だ。

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