第2話 乙姫と会う

 カメの背に乗りめぐる海中は、さまざまな色の光がまたたく夜の中、自分のからだが重いようなでも浮かんでいるような非日常。タロウはそれを楽しんでいた。

 前方にまばゆい御殿が見える。

「竜宮城です」

 カメが言う。城に着くと美しい女人が出迎えた。

「私は乙姫。竜宮城へようこそ。カメを助けてくれた貴男をお迎えできて光栄です。さあ、どうぞ」

 きらきら光る衣装や飾りを身にまとう乙姫の黒々とした髪やつやつやした肌の白さは海底にしかない輝き。見たこともない艶めかしさだが、警戒したくなるほど妖しい。

 とまどうタロウだったが、カメに「さあ、こちらへ」と促され、城の中に入っていった。


 広間でタロウ歓迎の宴が始まる。

 浮遊するクラゲたちが色とりどりの光をふりまく中、タイやヒラメが舞い踊る。楽の音が切れ目なく反響し、夢の中にいるよう。やがてタコがおどけたふりを見せ墨を吹き笑いが起こる。

 乙姫も大きく口を開けて笑ったが、その歯がするどく尖っていることにタロウは気づいた。

 居心地の悪さを覚え、隣のカメに聞く。

「あの、かわやに行きたいんだが」

「かわやですか。こちらです。わたしについてきてください」

 大きな声で答えると、カメはタロウを連れて宴会場から出た。

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