酔っぱらいのデビュー配信は混沌とする
「さ~って、ここからは尋問タイムだよ~!!ささ!!ここで止まって!!」
センリこと千里は––いつの間にかできていた俺達の3Dモデルを無理やり配信画面へと登場させ、“ここからが本番”と言わんばかりにハイテンションで自己紹介を促してくる。
「ど、どうも」「こんばんは」
「おいおい~!何でテンション低いんだ~い!?私のデビューなんだよ!?盛大にいけよ!!!」
「「え~」」
凄い巻き込み事故じゃね?これ。
ってか、配信に出て何をしゃべれってんだよ。
「昨日の空君の配信見た人いる!?マジで空君ってヘタレだよね!?」
俺が脳内で何を話すか会議をしている中––センリは昨日の配信の件を喋りはじめた。ヘタレじゃねえし。
「––マジでね!?空君はヘタレ女装野郎なんですよ!聞いてくださる!?」
「ちょ、ちょっと!」
「……センリは少し黙ろうか」
天の声の––ドスのきいた声がスタジオ内に響き渡った。
勿論、それは配信にものっていたようで––
・幽霊!?
・なんか聞いたことない声
・心霊体験できたわ
なんて、様々な憶測が飛んでは––萎縮してしまったセンリを見て、視聴者は“草”と書き……落ち着きを取り戻していった。
鈴さん……ありがとうございます。
「……ね?ね?どうなの?」
「え?何が?」
……センリは諦めずに聞いてくる。
「付き合ったの?どう!?」
「た、大真に聞いて!」
「は!?」
「……はあ、きたよ、このヘタレまん」
センリは場が白けた配信上で、酒を飲んではブツブツとその後も小言を言う。
大真は大真で……自分に投げられた質問に––質問してきた俺へと冷たい目線で答えてくる。
「ま、まあ!そこは内緒にするべきじゃね!?」
「え~?私のデビュー配信でそりゃないでしょ!?」
「え~」
配信前にはあやふやでもいいスタンスだったじゃねえかよ。
「まあ、これで決めりゃいいか……っと。天の声さん~お願いします~」
センリは、3缶目のストゼロを一気飲みし––鈴さんにあるものを用意させよとした。
呼ばれた天の声こと鈴さんは––10個以上のシュークリームを台車に乗せて持ってきた。
……これ、どっかのVtuberでも見たぞ?え?これするん?
「さ、今からこれを空君にぶつけまーっす」
食べるんじゃないのかよ。
ってか、マジで!?
「––ん~美味い!酒の肴になるよね~……さ、大真ちゃんもやるんだよ?」
配信画面には無色透明の物を胃袋に入れていくセンリと、段取りがめちゃくちゃすぎて混乱している可愛い大真の姿が映し出されていた。
俺はというと––何故か俺の背後をとって、縄みたいなもので両腕を縛り上げている鈴さんに抵抗できずに配信外へと連れ出されている。
「……ちょっと!え!?え?……え!?」
「空君さんが悪いんですよ?」
俺の耳元で囁く、小さな体をしたマネージャーの声に少しゾクゾクした。
––まあ、でもこの状況ってマジで意味わかんないよな?
俺は配信外でシュークリームをぶつける……配信上では無色透明だから何かもわからない。
……これ、マジでするのか?
「さ~って、やりますか!!……あ、天の声さーん、目隠しお願いしまーす」
センリは俺の後ろで逃げないように抑えている鈴さんに指示を出し––鈴さんは言われた通りに俺に目隠しをした。
「ちょ、ちょっと!!マジですんの!?」
「あったり前じゃ~ん!?」
「え~……」
「リスナーさんには想像で楽しんでもらいましょ~」
「……地獄じゃ––」
俺の小さな叫びは––俺の口元に来た異物と共に飲みこまれた。
「お!ストライク!!」
「んご!!」
「ねね!甘いでしょ?」
「……んっ、ま……まあ」
「ほら!大真ちゃんも!!」
「うぇ!?た、大真はしないよね?ね?」
「……」
俺はいつ異物が飛んでくるのかドキドキしながら待った。
……しかし、いつまで経っても何も反応はない。
「……あれ?大真?」
「……大真ちゃん?」
俺とセンリは––何も行動も発言もしない大真に目をやる。俺は何となくの場所だけど。
「あ、そうそう。いいものがあるから!」
センリは何かを察したかのように……鈴さんに小さい声で「アレある?」といって何かを準備させた。
俺はというと、どんな状況かも理解できないし––ましてや、配信外ということで黙り込むことにした。
……そこから、約1分程だろうか。
何か硬い……機械のような物音を立てながら、戻ってきた。
「んっしょっと……ひっひっひ!これを使うの怖いんだけどね~」
「え?なになに!?」
「じゃ、大真ちゃん!これの……ココ、そう……ココを押すといいよ」
「え?……ココですか?」
「……え!?ちょ、ちょ––」
目隠し状態の俺に––餡かけが襲ってきた。
……やけどをしないギリギリラインで来るから、俺は反応に困った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます