事務所始動!千里のデビューは3D
「っっっかぁぁぁぁぁ!!!!ビール美味い!!!」
千里は俺と大真、マネージャーの鈴さんを––とある場所へと呼んだわけなのだが……何故か缶ビールを飲んでいる。
「おま、もうすぐデビュー配信するんじゃなかったのか?」
「するする!だから飲んでるんじゃん!」
「はあ?」
「だって、Vtuberって飲酒して配信するのがデフォなんでしょ?」
「違う!」「違います」「飲みたいだけでしょ」
各々が千里にツッコミをいれていた。
……本来は、千里のデビュー配信は『四時プロの元祖煙火吹雪との対談』という流れで鈴さんは組んでいたらしいのだが、俺の炎上の件で急遽変更したと––毎度遅刻してくる千里を待つ間に聞かされた。
「……で?ここは?」
「え?スタジオだけど?」
缶ビールを鈴さんに取られないように、隠しつつ飲む千里は俺に向かって平然という。
俺以外はここがどんな場所なのか、知っている様で––言葉足らずの千里に代わり、大真がココの場所を説明してくれた。
「アキバのスタジオを知らない?ここって“Vtuber御用達3Dスタジオ”なんだよ。個人勢のVから大手Vまでココで配信や動画撮影しているんだよ」
「……あぁ~」
俺は何気なく見た個人Vtuberさんの動画で説明していたことを思いだした。
こんな場所にこんな風にあるんだね。意外。
「––ってかさ、君達!昨日の配信はどういうことだね!?」
仕事終わりのサラリーマンのような絡み酒で、千里は俺達に絡みだした。
「えっと~」「あのままですけど」
互いが互いの言葉で返答するものの、千里は鈴さんに取られる前にと一気にに飲み干した。
「––っか~……。はぇ?んじゃ、付き合ってるん?」
「どうなんだろ?」「……」
勢いで告白し、ネタみたいな返答をされたので困ってる。
大真は大真で、何故か返答をすることはなかった。
「っま、いいか。カップリングとかもあって良いって吹雪っち言ってたし」
「吹雪っち?」
「毎日話してたもんね」
「へぇ」
あんなに毎日配信とかしている方と忙しいはずの声優がねぇ……わからん世界はあるもんだ。
「千里、そろそろ配信時間なるけど」
鈴さんはスマホで時間を確認しつつ、いつの間にかいた配信スタッフと連絡をとっていた。
千里は「あ~、もう?」と隠し持っていた酎ハイに手をつけようとしたところで……スタジオ内へと誘導された。
俺と大真は手持無沙汰になる……かと思ったのだが––
「ほら!君達も来なきゃダメじゃん!!」
そう言って、俺達もスタジオへと半ば強制的に入れられた。
さ、ココで君達に問題です。
Vtuberって案外お金がかかるもんだけど、3Dになるのって無料でしょうか!?
否!金かかるわ!!
っつか、デビュー配信で3Dとか普通ないからね?
「……あれ?俺らって3Dのモデルあるっけ?」
「ないはずだけど」
「天の声みたいな感じで出るのかな?」
「どうなんだろ?」
俺達は、スタジオの端にあるパイプ椅子に座るように指示され、座った。
千里は、スタジオの中心に立ち––配信が開始するのを待っている様子だった。
「じゃあ、今から配信開始しまーっす!!!!」
鈴さんの声がスピーカーから流れ、指でカウントダウンをし––配信開始のキューをだした。
「ごきげんよう、お初にお目にかかります。私、この度“コエライブ”からデビューしました……“センリ”と申しますわぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
……キャラ崩壊させすぎだろ。
ってか、色々と情報量がありすぎだろ。
「おっと失礼。配信初めてだからさ!?ねぇ!?」
未だにぬるぬると動きまわる千里は謝罪をする。
「自己紹介とか諸々としなきゃだよね?スマソスマソ……グエェ」
……酒飲んで配信するからだ。
そこから、千里––呼び名を“センリ”と言う3Dの美少女の代わりに、天の声兼進行を鈴さんが事務所の事やセンリの事を説明していく。
「今回、私共はバーチャル業界に参入しました。名前を“コエライブ”と申します。某有名な事務所に似てますが、姉妹協定等は結んでいないのであしからず。また、この事務所は“バーチャル界に希望を”をモットーにしておりまして、女装Vtuberの夕焼空さんと元四時プロで全てのママでもある大真さん……そして、この配信上にいるセンリが“コエライブ0期生”として活動開始をいたします」
……へぇ、知らなかった。
ってか、それは連絡してくれよ。
「今回、この配信でデビューしたセンリですが。“己の欲求に忠実な癒し系アホ”です。つまりは、アホです」
……鈴さん、そんなデビュー配信にしていいのか?
鈴さんが、代わりとなって事務所の説明と自己紹介をしている中––センリというVtuberは配信ではわからないはずだが“お前、酒飲んでるよな?”というモーションで何かを飲んでいた。まあ、俺らは何を飲んでるかわかってるんだけど。
ってか、センリの姿は本当に残念美少女に見えるから……流石、大真。
“金髪ロングの美少女で、ロリっぽさが少し見えるお嬢様”という感じはギャップがあって、正直中の人を知らなかったら推せるレベルだった。
「っふ~……美味い!あ、今日はね?めっちゃゲストとか来てるんでね?待ってって!」
センリはそう言うと––手を振って、ローディング画面風のCMへと移行させた。
「じゃ、先に吹雪っちだから!もう少し待ってて!」
俺ら2人に、中の人の千里は言うと––鈴さんが水を無理やり飲ませ、トイレへと直行させた。
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