女装Vtuberは普通の姿でも炎上はする

 「ほら!ココだよね!!?」

 大真は真っ赤な顔になりつつ、俺達は某有名なアニメショップへとたどり着いた。

 改めて、ここにくると驚かされることがある。

 「……人多いな」

 「だねぇ」

 入口の近くにあるガチャガチャに多くの人がいて、この店が大繁盛しているのが理解できる。

 「でも、ここでしかもらえない特典あるから」

 大真は俺の手を引っ張り、店内へと入っていった。

 

 店内は各ジャンル毎にフロア分けされていて、たくさんの作品のグッズや本が展開されていた。

 俺が来た時は……もっと小さい店内で––階段では人肌が当たる程だったはずなんだけどなぁ。

 

 大真はそんな新しい店舗の上から順に好きな作品の本やグッズを見境なしに購入していく。

 案外、多くのvtuberのグッズが展開されているんだな……。

 「ほら!私!!」

 大真はVtuberのグッズを見ている俺の肩を叩き、自身がやっていた四時プロ時の自分を見せてきた。可愛いな。

 「買う?」

 「ん~……いっかなぁ……」

 別に買わなくても、会社の方からプレゼントしてくれる事もあるらしいから……持ってたりするのかな?

 「ま!今日は色々買うものあるからね!」

 大真はそう言って、四時プロのグッズ売り場にそのグッズを置いた。


 ……そこから、約一時間。

 俺は大真の買い物に付き合う事になるのだが、苦痛ではなかった。

 ましてや、“この時間が続けばいいのに”って思うほどだった。

 「ね!今日はイベントしてるみたいだから行ってみよっか!」

 大量のアニメグッズを両手に持った大真は––俺の手を握るために、片方の手に全て持とうとして……落とした。だから、俺が代わりに持ってあげた。

 「……で?イベントだっけ?」

 「あ、ありがと。……うん。何かコスプレイベントが開催しているんだって」

 あー、だからこんなに派手な人達がいるのか。

 有名アニメショップの前には、Vtuberみたいなコスプレだったり、有名アニメのキャラのコスプレをしている人がいたけど……ファッションとかじゃないのか。

 「普通に考えたら、こんな派手な人がいないでしょ?」

 俺の心を読んでいるかのように、俺の顔を見て大真はツッコんだ。

 ……そ、そうだよね。

 俺は、大真のツッコミに返事はしなかった。


 某アニメショップから5分もしないうちに––俺達はコスプレ会場へとたどりついた。

 移動中は俺の手を軽く握っては、「重くない?持つよ?」と大真は何度も聞いていた。

 まあ、こんなにも買うとは思わなかったんだけど……でも、大真の笑顔が見れているのが嬉しいからどうってことはなかった。

 それに、池袋が異世界のような……コスプレイヤーでごった返している空間が凄く不思議で時間が止まっている感覚があった。

 「……うわぁ」

 「すごいね」

 開催場所にくると、それは更に濃くなる。

 目の前には、クオリティーの高いコスプレの方々が撮影していたり、交流している。

 俺が好きだったアニメや、千里が演じていたキャラのコスプレもあったりして––正直、凄く興奮してしまった。

 それを、大真は同じように思っていたのか––

 「ほら!吹雪さん!!」

 大真が指差した先には、四時プロのVtuber達のコスプレしている集団を見つけて興奮していた。

 勿論、中の人(?)のコスプレではなくてVtuberの煙火吹雪さんのコスプレなんだけど。

 「写真撮ってもいいのかな!?」

 「やめたほうがいいよ」

 大真はそう言って、コスプレイヤーさん達に声をかけようとしていたので……俺は止めた。

 コスプレイヤーのルールがあるとか聞いたことあるからね。

 「ん~!!!」

 止めた俺に対して、不満そうな大真の顔は凄く可愛かった。


 「……あれ?」

 そんな俺と大真の––はた目から見たらイチャイチャカップルのようなやり取りを一人のコスプレイヤーが怪訝そうに見て、呟いていた。

 「もしかして、夕焼空さんじゃないですか?」

 そして、俺にそのコスプレイヤーは声をかけてきた。

 「……いえ、違いますけど?」

 「え……えー……?」

 違うと言った俺に対して、自身のスマホで何かを検索し始めた。

 ……もしかして、ヤバいのでは?

 

 危険を察知した俺は––興奮している大真の手を思いっきり引っ張り、池袋を出た。


 翌日、つまりタイムリミットの日。

 ネットには『デートか!?』という俺と大真の顔をモザイク処理した物が何故か掲載され、俺がプチ炎上した。

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