毎日配信2日目。女と男。

 「だ、大丈夫なの?」

 配信画面が映し出され––オープニングが流れている最中、大真は心配して俺に聞いてきた。

 昨日の配信を見ていたようで、初めて気圧されている姿を見て驚いていた。

 

 「ま、なんとかなるでしょ」

 大真にそう言うと、ヘッドフォンを装着し––

 「こんばんは~、夕焼空だよ」

 配信を開始した。

 「さ、この配信は烈火さんには言ってないし、事務所にも言っていないからどうなるかわかんないけどやるお~」

 酒も飲んだし、なんとかなるでしょ。

 配信は、烈火さんのいないままで数分がたった。

 炎上しているとはいえ、配信まで荒らす輩はブロックするなどの対処をしていたので少しだけ見やすくなっていた。

 

 「あ~、でも……あまり過激な状態になったらメンバー限定にするんで」

 そう言って、保険もかけた。

 

 「な、なんですかこれは!?」

 俺が配信して、コミュ限にすると同時に––四時プロの爆弾の烈火さんがやってきた。

 「昨日の仕返しです」

 「あれ?今日はローションを尻に塗るって配信だと伺って––」

 「んわけないでしょ!」

 早速の爆弾を俺は華麗に避ける。

 「でも、男性の尻って開発するとヤバいって聞いたことがありますよ?」

 「…へ、へぇ」

 「なんで、今度ローション送りますね!?」

 「俺の配信だからって何でもしていいわけじゃないですからね!?」

 「え~?」

 「今日は、烈火さんと“もっと仲良くなる”ために質問をするから、正直に答えてもらってもいいですか?」

 そう言って、俺はこの連続爆弾の手を止める作戦にでた。

 すると、烈火さんも「いいですよ~」と答えてくれたので質問をすることにした。



 「まず……好きな食べ物はなんですか?」

 「すき焼きですかね」

 「次、好きなアニメは?」

 「最近までやってた、可愛いヒロインが出てるアレです!」

 ……あー、千里がヒロインのやつか。

 「次、好きな同人誌は?」

 「当然、何でも!」

 「次、好きな体位は?」

 「は!?」

 「好きな体位ですよ!?体位!!」

 「あー…大尉…軍艦ものとかいいですよね」

 「え?」

 「え?」

 ……あー、BANになってもいいから爆弾を消してやろう。

 「え?だって、ローションを尻に~とか言ってたじゃないですか」

 「う~」

 今まで見せたことのない、烈火さんの姿があった。

 まあ、何となくだけど––案外、脆い人って自分が聞かれないように予防線張るっていうもんな。

 そこから、烈火さんはもぞもぞとした声で「…せ、せい––」答えてくれた。

 

 「え?聞こえないんですけど」

 「いいじゃないですか!」

 「じゃあ、次は好きな異性は?」

 「いませんけど」

 「じゃあ、好きなキャラは?」

 「テツ君!」

 某バスケ漫画のキャラかな?

 「……じゃあ、そんな人が好きなんですね?」

 「いや、それは…わ、わかんないです」

 「え?」

 「え?」


 質問を何個もしていてわかった。

 烈火さんはドMなのかもしれない。


 「烈火さんって言葉責めすきですよね」

 「…!?」

 俺の言葉に、過剰に反応したことで確信にかわった。

 だから、なんだって話だけど。


 「あ~、何か面白くなくなったんで終わろうかな?」

 「え!?」

 「だって、烈火さん話してくれないじゃないですか」

 「いや~、だって~……ねぇ?」

  もぞもぞしている烈火さんの通話を切った。


 「さ、配信終わるね」

 そう言って、短いけども任務を遂行した俺は配信を閉じた。

 大真は隣で聞いていたらしく、俺に向かって軽蔑の顔と称賛の拍手をしていた……これ、どうとらえるべきだ?

 

 翌日。

 この事がネットニュースにはならなかったが、烈火さんのファンからの批判と称賛で––俺のチャンネルは少しだけ荒らされていた。

 なので、俺は玩具になりかけている烈火さんに向けたタイトルの配信名にした。


 【烈火。男をしりたいか】

 当然、炎上した。

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