女装Vtuberの毎日配信

エロ爆弾

 「……まあ、配信はしなきゃだよね」

 使命感となってしまった、毎日配信を本日から開始する。

 後には引けない理由があって––大真が告知しているのだ。


 俺は嫌々な気持ちを何とか振り払おうと、俺のパソコンの前に座るのだが……やる気がでない。

 「大丈夫?」

 あまりにも元気のない––うかない顔をしている俺を心配して、大真は俺の部屋に入って声をかけて来た。

 「大丈夫だよ。大真は依頼とかを終わらせないといけないからね?頑張れ」

 「う……うん」

 復帰後忙しくなっている大真の事を思い、俺は大丈夫じゃない大丈夫を言ってしまった。

 いや、配信自体はいいんだけど……まさか、四時プロのVtuberの爆弾といきなり関わることになるとは……。

 俺は大真が自室に戻ることを確認し、ため息を何度も付きながら配信開始を押した。


 

 

 配信が開始され、アニメとかでいう“オープニング”を流している。

 その間に、俺は何度もため息を吐きつづけた。

 ……そして、オープニングは終了し––

 「どうも~、夕焼空だよ~?配信久しぶりなんだっけ?」

 ・久しぶりじゃん!

 ・あの配信みたよ~

 ・動画で馬鹿してたねぇ

 等、アンチコメも見受けられるが……喉元過ぎれば熱さを忘れるってことなのか。そこまで誹謗中傷はなかった。

 

 「今日から毎日配信をすることになってるんだけど~…何も考えてない!ノープラン!」

 ・大真言ってたね

 ・大真さんの告知見てきた

 ・おい、デブ

 ……色々なコメントを俺はスルーしながら、喋り続ける。

 

 「なんでね、今日はゲストが来るっぽいので~…そこまでは最近の話をしよっかな」

 いつ凸が来るかわからないが、今までの事––大真さんの事や四時プロとの関わり等を俺の口で説明しつつ、好きなアニメの話等をしていた。

 

 すると、そんな話を約15分程度した時––着信音が鳴り響いた。

 俺は……その着信音を、何回かスルーした後……出た。

 「はい」

 「遅いですよ!!……あ、どうも~はじめまして!」

 「どちら様でしょうか?」

 「え?大真さんから聞いてないんですか?」

 「あ~……」

 「ま、いいや。私は四時プロ所属Vtuberの爆弾女こと!烈火(れっか)ちゃんです!!」

 ……この子、大真さんと一度コラボした時のアーカイブ見てたけど……あれは放送事故だよな。


 「ちょっと!何か反応してくれません!?Mな私でも性癖には刺さりませんよ!?」

 「……」

 「そういえば、大真さんは元気してます!?さっき配信見てましたので元気しているのは知ってますけど!」

 ……超短い自己完結してる。

 「で!で!!大真さんの配信復帰記念に~、先輩の吹雪さんの代わりに~……私が空さんの配信をジャックしたいと思いましてね!?」

 「ジャック?」

 「絶対に!空さんって男性的な思考と女性的な思考兼ね備えてますよね!?女装姿似合ってましたし!」

 「ど、どうなんでしょうか?」

 「いつ、四時プロの男性Vtuberとあんなことやこんなことするんですか!?するって聞いてるんですけど!!?」

 「しないです!」

 「え~?だって、空さんの尻は……まだ未開は––」

 「通話きりますよ?」

 あまりのテンションの高さに、烈火さんから来ていた立ち絵を配信上に載せるのを忘れていた。

 それに、コメントも「どう反応すればいいんだ…?」という感じでコメントが、アリの大群に息を吹きかけたように––ぐちゃぐちゃになっている。

 

 「ちょ!!ちょっと!!!」

 「じゃあ、一度落ち着いてもらっても?」

 配信をBANにされないためにも……俺の心に余裕を持たせるために、烈火さんの話を無理やり遮った。

 この烈火さんは……自称するほど“爆弾女”で、BANすれすれのエロゲ配信をするなどの下の方にヤバい配信をソロ、コラボでもやっているのだ。


 そんな、烈火さんだが俺の言う通りに一度何かを飲むような音が聞こえ––

 「落ち着きましたぁ」

 そう言って、先ほどのテンションを10とするなら……今は3程度くらいに落ち着いている。

 「じゃあ、改めて自己紹介をお願いします」

 「はい。私は四時プロ所属している烈火(れっか)と申します」

 「俺は空と申します。どうぞ、よろしく」

 「わぁ~!本当に、空さんって受け声ですよね」

 「……もう一度深呼吸します?それとも、通話切ります?」

 「ええ!?褒め言葉じゃないですか!?」

 「なんでだよ!」

 初対面だけど、ツッコんでしまった。

 「だって、受けって全ての始まりですよ?会話だって、注文だって、電話だって……エロだって」

 「最後の言葉だけ言いたいだけでしょ?」

 「……よくわかりますね!?」

 「いや、わかるだろ!?」

 ……そんな会話をしていると、「漫才みたいだな」等のコメントが見受けられる。

 「ほら~、空さんのリスナーさんが言ってますよ!?“マング”––」

 俺は通話を切った。

 

 その後も、烈火さんからの着信はあったが無視をし––あまりの疲労で短時間ではあったが毎日配信の初日を終了した。

 これが数日も続くのかよ……俺の心持たない気がする。


 次の日、ネットニュースが更新された。

 【四時プロの爆弾女が夕焼空、大真の所属する事務所の配信に爆弾投入!BANもあり得るか?】

 ……毎日配信初日から、早速炎上してしまった。

 なので、俺は今日の配信を

 『烈火!いいよ!こいよ!!』

 昔に流行った動画の言葉を引用し––炎上に油を注いだ。

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