大真の復帰配信
「こんばんは。大真です」
俺のパソコン上に––ショートの茶髪、青色を少しくすませたような眼。小さな体は中性的な服に身を包んでいる大真さんがいた。
四時プロの時よりも、明るく見える印象に……リスナーは凄く驚いている様子だった。
配信直前に、俺は吹雪さんに「大真さんが配信します」という告知をしたのんだけど、吹雪さんは運営に何も聞いていないだろうという速さで––RTをしてくれた。
それのお陰なのか、大真さんの配信は瞬く間に1万以上を記録した。
「まず、こんなことになってしまい申し訳ありませんでした!」
そう言って、3Dバージョンになった大真さんは土下座をした。
…これ、昔のテレビで誰かやってた気がするな。
「再度報告させていただきます……私、大真は四時プロを脱退させていただきました!」
土下座のまま言う美少女は、大々的に宣言をする。そして––
「今後は、夕焼空さん達の事務所で活動しますので何卒!!」
そう言うと、満面の笑みを見せて、土下座を解いた。
「…ふぃ~…スッキリした」
手元にある水か酒かを飲むようなモーションが映し出されているのは、慣れていないかもしれないけどご愛敬ってやつだよね。
「さ~って、久しぶりの配信って本当わかんないね…えへへ」
・可愛い
・待ってたよ!
・印象変わった
……そんな嬉しいコメントがいくつも流れているが、やはりネットは怖い。
“そんなことしてて、よく平然と復帰できたね”
そんなコメントを連投する奴がいるのだ。
それを、大真さんは軽く流すようにしていたのだが––
「うっさい!マジでうるさいですよ!?」
酒を飲んでたんだろう、少しだけ饒舌になっていく。
「感謝はしてますけど!?でも、君だって自分のしたいことを蓋されたらどうよ!?ねぇ!?!?嫌でしょ!?」
酒をどんどん飲んでいる様なモーションが何度も映し出され––小さなげっぷが聞こえたのは、きっと切り取り動画が出るんだろうな。
「––でさ」
その後もリスナーと軽いバトルを繰り広げながらも、四時プロの時とは違ういきいきとした大真さんの表情が語りだした。
「今後はもっと色々なことに挑戦したいんだ。デザインとかだけじゃなくって、歌のMVとかジャケットのデザインとか。なんか、この事務所ならできそうな気がする」
嬉しそうに語る大真さんは本当に可愛い存在だと思った。
俺は所々作業があって……いや、何か恥ずかしくなって全てを見る事ができなかった。
元推しで、一緒に住んでいる人が配信をする……なんて凄い状況なんでしょう?
そんな中で正気でいられるわけないじゃない?
なので、俺は聞き逃した言葉があった。
「ん~…好きって感情は––」
「終わった~」
軽い雑談をメインとして、今回配信していた大真さんは自室から出てきた。
顔が少し赤いのは––やっぱり、配信中に飲んでいたのだろう。
「お疲れ様」
「あっ~、ご褒美忘れてない?」
「あ、そうでし…そうだった」
「じゃ、これからはタメ口にしようね?」
「うん」
大真さんの顔は配信終わり以上に嬉しそうだった。
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