元四時プロVtuberの転生と配信開始前
大真さんが描いたデザインは直ぐに具現化された。
有能な人が鈴さんの後ろにいるのだろう……これ、マジで凄い事なんだけど。
「わぁ~!!凄い凄い!!」
競馬で大金を手にした大真さんは、四時プロ時代から稼いでいた分と合わせてパソコンと防音マットを購入した。
そのパソコンが今日届き、大真さんの部屋にて一緒に組み立てた。
……決して、女の子の部屋に入って興奮したとかは無いぞ…?
そんなパソコンなのだが、スペック等色々とあるが……見るからに“高級ゲーミングPCだよ”っていうのがわかる。本体も周辺機器も何か発光してるんだけど。
「ショップの人に勧められた物全部買ったらこうなっちゃった」
少しだけ照れたように言う大真さんの横顔を見て、やっぱり可愛いと思った。
「さて……私を動かしますか」
鈴さんの方から、具現化された大真さんのデータを受け取り––大真さんのパソコンに2次元の大真さんが映し出された。
「おお~…やっぱ、凄い」
「多分、簡単な3Dもできるはずなんですよねぇ~……っと」
そう言うと、2Dの大真さんだったのが3Dへと変化した。
すると、3次元の大真さんの手の動き等を認識し––画面先の大真さんも手を動かす。
「時代はすげぇなぁ…」
「顔の表情も認識してくれるんですよ?」
そう言って、にこっと大真さんが笑うと––パソコンの大真さんもにこっと笑った。
「……俺のパソコンだと手動だからうらやましいよ」
俺のパソコンもまあまあの値段したんだけど……皆が高いパソコン買いたがるのが凄くわかったよ。
前は無理して体との連動したけど、異音したから諦めたんだよなぁ。
「これから微調整とかしなきゃですね」
大真さんはパソコンで色々と設定をいじりはじめた。
俺は邪魔しちゃ悪いと思い、部屋を出た。
そして、鈴さんから連絡が来ていたことをここで知った。
「空君さんこんにちは~。お時間あります?」
……未だに、筋肉とか魚とかの芸能人みたいに––君付けからのさん付けをするのかよ。
いつツッコめばいいんだ?
「えと~…まあ、はい」
鈴さんが凄すぎて無理だわ。
「今後の配信に関してなんですけど、四時プロの誰とコラボしたいとかありますか?」
…推しはもういないもんなぁ。
ってか、あんだけキャラ濃い人ばかりだとキツイな。正直。
「別にいないですかねぇ…」
「わかりました!なら、こっちで決めますね?」
「わかりました」
「あと、今日大真さんが配信すると思うんですけど––」
ああ、今調整しているもんね。
「空君さんは出ないでください。大真さんの為にも」
……なるほど?
鈴さんはそこから少し長文で追加してくる。
「今回の件は凄く大真さん自身負担が大きかったと思います。残るにしても、脱退するにしてもキツイ選択でした。その選択を後悔させないためにも、新しい道を歩んでもらうためにも…初配信は自分の力で配信してほしいんです。まあ、大真さんもそれは理解しているとは思うんですけどね」
…真面目な話をした後にさ、“だっちゅーの”とか昔流行った奴のスタンプ連続で送ってこないでよ。
俺は既読スルーをかまそうとすると、再度文字が打たれた。
「千里の配信とか諸々とあるんで忙しくなってしまう可能性がありまして……返事遅くなったらすいません。あと、空君さんのコラボ相手はドMの腐女子Vtuberにしようと思ってます」
…あ?え?
「今日は千里もイベントとかあるんで、大真さんの配信はアーカイブで拝見しますね!」
俺のコラボ相手の件はガン無視して、会話が終了した。
「ふぅ~…終わりました~」
「お疲れ様」
鈴さんとの会話が終了した後、俺は未だに配信の設定等をしている大真さんの為に、夕飯に肉じゃがを作ってあげた。
前に料理漫画で“コーラで肉じゃがを作る”っていうのがあったからやってみたんだけど…どうなんだろ?
そんな、味がわからない物を誤魔化すために、総菜も買って豪華な食事となった。
「この後、配信するんですけど…あ、美味しい」
不安だった肉じゃがを一口食べた大真さんは、美味しそうな顔をしてくれていたので嬉しかった。
でも、何か不安そうな表情も垣間見えた。
「大真さんなら大丈夫だよ」
四時プロの時の経験もあるんだし、本当に大丈夫だとは思う。
それでも、大真さんの表情は段々と緊張に押しつぶされていくような感じがする。
「大丈夫…ですか。なんでしょうね?この気持ち。四時プロの時とは全然違います」
……それは、そう。
自主的なものと、やらされているものは絶対に違うし––今回は否定的な意見だって目につくもんな。
「ごめんね。本当」
「…うぇ!?何で空さんが謝るんですか!?」
「ここまで大きくなるとは思ってなかったからさ」
俺のチャンネル登録者は20万人を超えている、四時プロの吹雪さんのお陰で更に増加した。
それに伴ってか、俺の今までの事もあってか––火は所々に上がっていた。
それは……大真さんにも火の粉が降りかかっているのだ。
「まあまあ、これは私が選んだことなんで。大丈夫ですよ」
「…ごめんね」
「…じゃあ、一ついいですか?」
段々と暗くなっていく会話の中、大真さんは提案してきた。
「私の初配信が上手くできたら……今後、ため口で話しませんか?一緒に生活しているのに、何か距離がありますし」
「ため口がいいの?」
「あ、いや!そうすれば、もっと仲良くできるかな~って思ったし、そ、それに!何かご褒美がある方が頑張れるじゃないですか?」
「そっか。別にいいですよ」
「…やった」
小さなガッツポーズを大真さんはしたんだけど…やっぱ可愛いな。
…そう言えば、こんな見た目しているけど同い年なんだよな。普通はため口でも許されるのか。
不安だった、肉じゃがも綺麗に平らげ。
今は配信前の休憩となっているのだが、緊張はやはりしている様子だった。
俺と大真さんのスマホが同時に鳴り、見てみると––グループ会話で千里と鈴さんが“頑張れ!”とスタ爆していた。
「うるさ」
着信音がずっと鳴り響くことに少しツッコむと、大真さんはクスっと笑ってくれた。天使かよ。
「……じゃあ、配信頑張ってきますね」
そう言って、水とお酒を持って––大真さんは自室へと入っていった。
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