2回目の配信~Vの定義~

Vの定義~マックは美味い~

 マックってさ、美味いよね。安いし。

 サイドメニューのポテト、ナゲットだけでもお持ち帰るくらいに人気なんだもんね~!マジで凄いですわ!マック様!!



 ……さ、お腹いっぱいになってきたし…配信すっかなぁ。

 あ、ピクルス嫌いなのに食っちゃったじゃん。

 俺は口に残った嫌な感覚をコーラで流し込み––パソコンを立ち上げ、配信開始手前まで準備を終えた。

 「あれ?マジか」

 昨日の配信よりも待機数多いじゃん。

 俺は少しビビりながらも、著作権フリーのBGMを流し––配信を開始した。

 「おっはー!どうもぉ~、夕焼空だよ!!覚えてる??……あっ、挨拶とかマジで考えなきゃいけないよねぇ…次までには考えとこ!リスナーからも募集しておくから送っといて!!」

 なんて挨拶をすると、リスナーのコメントが一気に流れていく。


・お、また女装か

・今日もヤバそう

・荒れてるぞ~

・呟きトレンド入りしてるってマ?

 

 …ほお、トレンドか……これでトレンド入るなんて何か複雑。

 「トレンド入りありがとー!!今日も酒飲むよ!!?だって、ストレス社会に打ち勝つには酒でしょ!?酒!!」

 そう言って、さっきのピクルスの欠片が歯に挟まってたようで……それをほろ酔い缶酎ハイで流し込んだ。

 「っかあああぁあああああああ!!!……今日さ、マック食べてたんだけどさ。マックって本当に神だよね~~!ジャンクフード万歳!!ってか、酒も美味い!!」

 俺の分身である、画面先の女装したVはニッコリ笑顔で事を伝えた。


 「さてさて、本題~~~…っと。あ、今日は凸もあるからね。どんとこい!」

 俺は冗談っぽく、自分なりの面白い風に言うと––コメントは「お、きたか」と言ったような感じで俺を煽る。


・今日はVtuberの事でしょ

・Vの何を言うつもりなんだ

・他のVの活動大丈夫か? 


 「はいはい、リスナーさんよ。落ち着きたまえよ。昨日みたいに暴れモードになるのは…いやでしょ?なら、一度深呼吸しよ、深呼吸。…ッスー……ッハーー」

 俺も、Live2Dの女装の俺も、深呼吸をする。

 「さ、話していきましょうか。えっと…?Vの定義でしょ?君達の推しは誰なの?……あー、あの大手のとこの!いいね!可愛いもんね!!この前の『神経衰弱を一回もミスらないで全部捲る配信』は神だったよね~。……うんうん。推しって尊いもんねぇ~」

 俺は缶酎ハイを再度飲み、残りのポテトを頬張りながら––

 「でもさ、Vtuberっておかしくない?昨日の配信の切り抜き動画を見てたんだけど…“顔出ししてる奴がVtuberするな”ってコメントが来てるんだけど。どう思うよ?これ」

 コメントは色々なコメントが流れるが…無視しよ。

 「リスナーもさ、Vtuberの子も来ているんでしょ?言いたいんだけど……“現実を良い具合に入れてうやむやにすんじゃねえよ”。マジで!まずは、リスナーよ!?夢を見るんじゃねぇよ!お前らの言っている事全てが正解ではないんだからな?“あれして”“この配信して”とか言ったり、セクハラとかよく見るけどさぁ~!道具にしたいんなら〇ナホとか買って妄想しながらしごけよww」

 何かヤバい単語言ったかな?まあ、ヤバかったらそこだけ消そう。

 コメントは更に加速しているけど……まあ、まだ言い足りないし、無視していこ。

 「で?vtuber?…君達だって、『バーチャルなんですぅ』とか言ってるくせにバンバン現実世界を出してるじゃん。干芋?とかも普通に載せているし、呟きサイトの方で自分の手とか3次元の物を載せているのに、都合の良いときだけ“バーチャルだ”って通用するわけないだろww」

 あー、酒ないじゃん。コーラのも。

 「……っはあ、じゃあさ、何が【Vtuber】なわけ?良い道具にしているじゃん。それはリスナーもだけど、Vの本人も。それなのに、顔出ししている人がVtuberしたら“Vが汚れる”とか言うんだろ?Vtuber本人も苦言言ったりもするの見るけどさ……じゃあ、君達が好きな活動者や芸能人が“Vtuberデビューします!”って言ったら歓迎する!!とか…は?腐っとるわ」

 コーラの味わかんねぇ…一気に酒飲みすぎたか。


 

 俺の発言をした後の配信は……まあ、さっきよりも荒れている。

 でも、きっと思っていた人もいるのだろう––俺の意見に賛成する方もいた。


 「結局はさー、あんたら都合の良い事しか見ないじゃん。それに対して反することに対しては反発する~…まっ、それはしょうがないんだけどね」

 一応、反発する側の意見にも同意している体……は出さなきゃね。

 「ってなとこで、俺の意見だけでは配信面白くないもんねぇ!凸しましょうか!!」

 そう言って、俺は自分へ通話可能になる設定を配信画面に載せた。

 「俺への意見あればバッチコーイ!!……あ、ヤバい奴と思ったら即切るんで」

 画面上の俺は笑顔のまま、手を振り、通話が来るのを待った。



 

 プルプルプル

 画面に載せて数分。初めての凸がきた。

 「はいはーい。私、夕焼空でございます~」

 「お!きた!…おい!お前!!うっ––」

 「はーい、切りまーす」


 プルプルプル

 「はーい、こちらは夕焼空ですー」

 「Vtuberを馬鹿にしてます?」

 「馬鹿にしてませーん。君みたいに簡単に“馬鹿”とか言うほうが馬鹿にしてると思いまーす。ってか、簡単に言うってことは推しにも言ってるんでしょ?あー、可哀そう」ガチャン


 プルプルプル

 「はい~、今日も夕焼空です」

 「はじめまして~…夕焼空さんですよね」

 「そうです」

 「めっちゃ話してみたかったんですよー!!……いやー、本当。夕焼空さんの女装…………可愛くないですね(笑)」

 「君みたいなブスよりは可愛いでーっす」ガチャン

 

プルプルプル

 「明日も夕焼空です」

 「世界観を持っているVtuberだったり、現実世界とは隔離してやっているVtuberさんもいますよ?」

 「確かに!ごめん!!……まあ、でも少数だよねぇ…。都合の良いときだけアピールしているvもいますよねぇ…凸者の推しはどうなんですか?」

 「大丈夫です。この前、困ってるようだったので〇マゾンで物資を––」ガチャン


プルプルプル

 「あ、今日も見えた!夕焼空です」

 「千里さんの件に関してまだ許してないのですけど」

 「何が許さないのよ」

 「勝手に画像使って、似合わない女装してさ~…恥ずかしくないわけ?千里さんの事をあんだけ傷つけておいて––」

 「は?言っておくけどさ、君が言える立場なわけ?事務所の関係者なの?関係者じゃない一般ピーポーが色々言っても意味なくね?」

 「ファンだからいいだろ?それに、そういったらお前だって言う立場じゃないだろ」

 「じゃあ、張本人も事務所関係者もいないココで言う必要あるの?意味なくね?……ってかね、千里さん以外で一般人でやってたら同じこと言えるのか?」

「…………」ガチャン



 「あー、めんどくさ」

 俺はこの後にも沢山の凸が来た……返事するのは疲れるけど、俺はマメだからね。返したよ。

 でも、キツイ……大半は批判みたいな感じだったし。



 「さて、これくらいにしよっかなぁ……んー、マックって神だわ。文句も言わないし」

 俺はシナシナになったポテトを一つかみし、無料でもらえるケチャップにつけ、食べた。

 「んー!美味い!!さ、今日は配信終わろっかな」

 ……本当は上手いこと言いたかったけど、無理だったわ。


 「ってなわけで、今日も来てくれてありがとー!チャンネル登録とかしてくれたら嬉しいな!!」

 といって、俺は配信を閉じた。



 数分後。

 俺のスマホに通知が来た。

 「空君…!!君って奴は本当に凄い奴だ!!」

 

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