初配信2~質問受付~

 「空君さんいいですよ!凄く良い!!ダークヒーローじゃないですか!」

 荒れている配信を落ち着かせるため––トイレ休憩をとっている間に鈴さんから連絡がきた。

 正直言えば…俺は怒られると思った。だってそうでしょ?有名若手声優をダシに何度も使って––今回なんて大炎上も不可避な状態っていうのに。

 

 「まだまだです!まだまだ油をまいていきましょ!!」

 

 鈴さんのラインを見て…ため息と覚悟が渦巻く。

 俺の一言で俺の人生を…いや、千里の人生だって変えてしまうかもしれない…怖い。

 「…っしゃあ」

 俺は再度持ってきた缶酎ハイを一口すすり、配信画面を切り替え––配信を再開させた。


「あー、めっちゃ出たわぁ。皆はトイレいっとる?トイレは行かんとダメよ?……あれ?まだ荒れてるの?暇人でしょ~」

・その報告なんだよw

・暇人なのはお前だろ

・出すのは毒素だろ

・おもろいなコイツww

 色々来てるけど、それにしても…千里のファンって怖いもんだねぇ…他のSNSでもめっちゃ来てるじゃん。

 この配信の閲覧者は軽く5000人は超えているみたいだが、つぶやくサイトの方で実況中継している輩がいるらしく––新しく作ったアカウントでも攻撃が開始されていた。


 「はぁ~暇人さんのために…そだ、今から質問募集受け付けるからさ!質問してきてよ!ま、全部答えるかは別だけどね!」

 そう言って、俺は女装している2Dの隣に質問箱なるものを設置し、そこをクリックすると直接俺の方に質問が届くように設定した。

 すると、瞬く間に10件以上の質問が届いてくる。…あれ?これ関係者とかもいるんじゃね?




 『千里様を馬鹿にするな!お前はバカだけど!!お前みたいな底辺が軽々しく言っていいものじゃないんだぞ?千里様は今回メインヒロインで素晴らしい活躍してるってのに…水を差すんじゃねえよ』

 ふーん、信者か。

 俺はこの質問を画面上に広げ––

 「この質問した奴さぁー、お前が軽々しく声優の山田千里を語るんじゃねえよ。じゃあ、お前が信者とか言うんならテロップにも載っていないアニメとか言えるのか?俺は知らねえけどw それを知らないで今出ているアニメだけで判断して“あー、天使だ~”とか言ってるんだったらお前こそが馬鹿だわw アニメや番組出るためには色々な覚悟を持ってやってるわけ!だから、今回の件だって俺じゃなくても何時かやるだろが。……わかりやすく言ってやるよ。あの国民的アニメでもある青い狸のやつあるでしょ?あのメインキャラだって、『自分の方が優れている』ってアピールするために道具を借りて、蹴落としてんじゃん。…あ、これ言っちゃうと消される?」

 …もしかすると、人によっては“論点ずらしだ”とか言われそうだけど。

 結局、誰かを利用するのって誰にでもあるでしょ。それを言いたいわけ。


 コメントはそれでも荒れ続ける。

 「あー、まだ読んで欲しいの?しゃあないな」

 そう言って、缶酎ハイに再度一口飲み––質問を広げる。

 『そもそも、何故今人気の山田千里を使おうと思ったのでしょうか?別にもっと有名な声優や俳優、芸能人もいたと思うのですが』

 「あー、そこくるぅ!?来ちゃうよなぁ~。……別にさ、誰でもよかったっちゃよかったわけ。でもさー、ついこの間アニメを見ててさ『あなたにお仕えします』っとか言ってるキャラいたから気になってみてたら、山田千里でさ~…窮屈そうにしてんなって思ってね?そんな奴よりも女装している自分の方が数倍可愛いじゃん?だから!」

 詳しく言えないもんな…ヤバいこと言いそうになっちゃったし。


 

「ってかさ~今酒飲んでるんだけど。これ、君達のせいだからね?酒飲ませてしまってすいませんって言ってよ!」

・は?

・イミフすぎ

・お前の事はどうでもいいんだよ

 閑話休題として言った言葉をもろに受け止める人が多くて困るね––まあ、今言っても意味はわかんないと思うけど。

 

 俺は缶酎ハイを啜る––あれ、質問が100件近くなってない?

 …まあ、大半が誹謗中傷だけの質問だから無視するんだけど。


 「あ~、めんどくさ。…っと、もうすぐ1時間くらいになるし…やめよっかな」

 正直言って、めんどくさくなってきた…大手の人って本当耐えることできるな~尊敬するわ。

 まっ、鈴さんも「もうすぐ配信終わりましょうか」と書いてたし…いいよね。


「ってなわけで、初配信はこれで終わり!気になる人はフォローとかチャンネル登録しといてねぇ!!次の配信は…えっと、呟きの方で書くから!チェックしといてくれ!」

 …といって、コメントは未だに荒れていたが––配信を終了させた。






 「お疲れ様でした~!!」

 配信終了したと同時に鈴さんからラインがはいった。

 「大丈夫でしたか?」

 俺は終了した安堵感と不安ですぐさま返す––

 「大丈夫です!!まあ、千里の名前とか出してたのは少しだけ本人の方にも攻撃はあるでしょうが、悪い事は言ってませんし。なんとかなりますよ」

 そう鈴さんから来た…俺はそれを見て、トイレへ駆け込んだ––飲みすぎた。

 

「今度の配信に関しての話をしたいんですけど」

 鈴さんから来たラインを確認したのは––トイレを熱く抱いた…次の日だった。

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