優しい風に吹かれて

秋風にも似た乾いた優しい風が撫でた

街を見下ろせる山で僕は過ぎ日を回想する

何十回と書き続けた後悔の詩を

過ぎ去った誰かとのほんの少しの幸福を


「今」が足りないから過去を悔やむのだと

中古本屋で売られてる自己啓発本は嗤う

そりゃそうだ、僕を避けていく人達は楽しそうで

声を上げても一人として僕に気付かないのだから


それなりに付き合いがあった人もいたはずだ

あの雑踏の中には

けれどそれでも振り向かれないというのなら

僕はよっぽど嫌われ者だ


そんな事はもう大分昔から気づいてた

だからもう気にしたって仕方がない

それでもどうしても気にしてしまうのは

眼前を行く知り合いの笑顔が羨ましかったから


秋風が吹いた

もう涙も出ない心をからっ風が撫でた

いつかの傷が「くそったれ」と軋んだ

それがどこか優しかったからもうやってられない

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