第2話 卑屈な少女

何回ブリーチしたの?と聞かれるほどの金髪ロングと大きめのグラサンが目立つ、ジャージ姿の女が一人、茶色いレンガの壁を見上げてため息をつく。

「あや、おはよう。」

高校の時の友達がサークルで出会ったらしい男の先輩と門をくぐっていく。

「おはよう…」

さすが大学生、手が早いな。

毎日が合コンみたいなものなのか。


家からこの茶色いレンガに到着するまで1時間弱、原付だったら15分のところをわざわざ遠回りして電車で通学している。

原付の免許も原付自体も高い。

バイトはしてるけれど、服、化粧、ヘアサロン、飲み代などと出費があるから、あんまり貯めれたもんでもない。

絶対に原付の方が楽なのに、重い腰が上がらず結局電車で通学といった感じだ。

私はそういうところがある。

悪いところだとわかっているけど、まぁいいか〜なんて思ってる。

まぁ何事もなんとかなる。


大学に入って1ヶ月、想像以上にブスと大学デビューと呼ばれる人間が多くてうんざりした。

こんなにも頭の悪そうな見た目をした私が、クラスで1位の成績なのだ。

頭が悪いのに、ヘラヘラしながら男の話や特別可愛くなれていない化粧の話をしているのを見ているとイライラしてしまった。

卑屈な考えが顔に出ているのか友達もできず、今日も今日とて一人で茶色いレンガを進んで教室に入る。

時計を見ると12時40分を指していた。

あっ!と気づきスマホを見ると、【こうちゃん】の文字。


『昼休みなう、先輩たちマジでだるい。早く帰てぇ。』

こうちゃんからのメッセージ。

なんだかんだ毎日こうして連絡をくれる。

ふふ、また愚痴ってるなぁ。

『私も早く帰りたい、どうせ授業聞いてても後ろの奴ら煩いし。』

返信しながら授業に必要な教本を揃えて先生を待つ。

どんどん喧しい人間が増えてきた。

身長が低めの少年のような見た目をした金髪の男の子がダボダボの黒いスーツを纏って教壇の前に立ち止まって友達に何やら話している。

「今日、オールでさ。仕事後だっつーの!ねみぃ〜!」

これ見よがしに大声で夜職宣言。

マウント取り?なんのための?

『早く終わらせて会おうぜ〜』

こうちゃんに早く会いたい。

こんな馬鹿な奴らの顔しばいてやって欲しい。

『そうだね、でも今日も夜からバイトだから、少しの時間になっちゃうかも。』

『そっか。とか言って、他の男と浮気してんじゃねーだろーな』

『んなわけないじゃん。今もボッチだよ。』

『本当かぁー?俺はいつでも怪しんでるよ。写真でも送ってきてみ。』


「今?」

そんなことしてたら、授業前に自撮りしてるやばいやつじゃん…

そうは思いつつも、渋ったら疑われそうだしそれでこうちゃんが安心するなら、とボッチ写真を送るのだった。

『ガチじゃん!』と笑顔のスタンプ。

これで機嫌良くなるのならいいか。


さあ、授業は寝ない程度に適当に聞いて、さっさと帰ってこうちゃんとご飯食べに行って、バイトに行こう。


「あ、ドレス忘れないようにしないとね。この間忘れて汚い貸しドレス着る羽目になったしね。」


うんざりした顔で入室してきた先生に向き直り、出席の確認を取られる。


「つじうら あや、…グラサン外しなさい」

「はぁい」


金髪ロングのジャージ女は気だるそうにサングラスを外すのだった。

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