いつかこの恋は

第3話

理香と付き合い始めて一ヶ月ほど経っていた。

一ヶ月間喧嘩することもなく、円満で幸せな状態が続いていた。

近々高校では生徒会選挙が行われる。

理香は生徒会長として立候補し、僕は書紀として立候補した。

正直、僕も理香もまだ一年生だから当選するとは一切思っていなかった。

でも、理香のスピーチは完璧だった。

人を惹きつけるような力を持っていた。

その結果理香は一年生ながら生徒会長となった。

僕の方はと言えば、書紀に立候補したのが僕だけだったからそのまま書紀の位置に就くことになった。

その日の帰り、僕達はまた寄り道をして他愛のない話をした。

あの一本道が今は夕日に照らされている。

オレンジ色の光が、並木の木の葉の緑をより映えさせている。

朝の様子も美しかったが、こっちも負けず劣らず美しく見える。

理香が写真を撮ろうとしていたので、僕はまた指を入れ込む。

後ろを振り返ると僕と理香の影が二つ並んでいる。

大した事ではないように感じるかもしれないが僕にとっては特別な物に見えた。

「そういえば理香、おめでとう。凄いね、三年生の先輩も抑えて当選なんて」

「まあ当選なんて当然！」

そういえば最近彼女は日本語ラップがお気に入りだ。

「秋君もおめでとう。これから一緒に頑張ろうね！」

歯を見せて彼女が笑う。

「それにしても理香のスピーチは凄かったね、泣いてる子だっていたらしいよ」

「私は昔からああいうの得意だからね〜」

僕は少し昔のことを思い出した。

確かに理香は昔からスピーチや、その類のことを得意としていた。

でも、あの選挙のスピーチは小中学生の頃とは明らかに違っていた。

なにが変わったんだろう。

理香のスピーチは素晴らしかった。

少し恐怖を感じるほどに。

「ねえ、秋君」

「え、どうしたの？」

しまった、少し考え事に夢中になっていた。

「秋君にはさ、私と付き合っている間だけでもいいから、信じていて欲しいの。」

「え？どうして急にそんな…」

「約束してくれる？」

「もちろん、信じるよ」

「秋君だけが私の支えになってね」

いま、この言葉で僕の中のなにかが揺れた気がした。

とても美しくて、でも何故か僕の神経が震えた。

「理香…大好きだよ」

咄嗟に出た言葉だった。

理香は優しく微笑んでいるように見えた。

「ねえ、秋君、今家に誰もいないの

　この後家にこない…？」

彼女は悪戯っぽく笑った。