いつかこの恋は

第2話

理香と付き合っちゃった。

小学生の頃から想い続けた彼女と、

まさかこんな日が来るとは！

胸が高鳴る、今この時は何をやってもうまくいってしまう気がする。

あの後、理香と何件かメールを送り合い、明日からは一緒に登校することになった。

理香は毎朝早く学校に行って勉強をしているから、明日からは早起きしなくちゃいけない。

幸せだ、この幸せが一生手元から離れなければいいのに。

その次の日、僕は理香と一緒に高校までの通学路を歩いていた。

僕が数分遅れてしまったが、理香は笑って許してくれた。

朝の日差しと霧がかかった大通りの一本道は、まるで今の心の中みたいにきらきらと輝いて見えて、美しく見えた。まだ人が出歩いていないからだろう。

理香はスマホを構えて、その美しい様子を写真に収めようとしていた。僕は少しイタズラをしてやろうと、ピースをして写真の隅に指を2本、映り込ませた。

理香は嬉しそうに笑って、「秋君の指」というアルバムをスマホ内に作った。

少しバイオレンスなアルバム名な気もするが、自分しか知らない理香の一面を知って、なんだか、胸がいっぱいになるような、嬉しさを感じた。

それから、他愛もない会話をして、高校まで向かった。出来ることなら、この時間が一生続いて欲しかった。それでも数十分で学校まで着いてしまった。

高校では僕と理香が付き合っていることは隠す事にした。理香も茶化されるのが嫌みたいだし、今はまだ、こんな僕なんかが、胸を張って理香の彼氏を名乗れないと思った。

たまに学校の中で理香と目が合うと胸が跳ねる。彼女は少し笑って目を逸らす。

そんな彼女はたまらなく愛おしかった。

そんな調子で、今日は全く授業の内容が頭に入ってこなかった。気づけば放課後だ。

理香は部活だろうし、先に帰ろうとしていた時、後ろから誰かに背中を押された。

「なんで先に帰っちゃうの？」

僕の背中を押したのは理香だった。

「あれ、なんで、理香は部活じゃないの？」

「部活なら、辞めたよ。」

「え？」

理香があれほど夢中になって取り組んでいたはずの部活をどうしてなのだろう。

聞く前に理香は答えを言ってくれた。

「だって部活をやっていたら秋君との時間が減っちゃうでしょ？」

「でも、部活だってあれだけ頑張ってやっていたじゃん」

「部活なんかより秋君の方が大事だよ」

それは、嬉しい反面、申し訳ない気持ちにもなった。僕のためだけに大切だったはずの部活動を辞めてしまうなんて。

理香はここまで尽くしてくれているのに僕はどうだろうか。理香を待つことなく、先に帰ろうとしてしまった。

その日は喫茶店に入って適当な飲み物を飲んだ。なんとなく申し訳なくて、僕が奢った。

尽くすっていうのは、そういうことではない気がするが。