第15話 先生の部屋にいたのは・・・・

 紗菜は先生と思われる白衣の女生ともう一人の女性の三人で待っていたのです。


「鈴江さん、暫く来てはいけないと言ってましたよね」


 紗菜の隣にいた女性がメイドの鈴江を戒める。


「はい、事情があるのです。紗菜様と三人で話したいのです。紗菜様も聞けば納得されると思いますが紗菜様には秘密にしていただきたいのです」


 鈴江さんがそう言うと僕達は隣の応接室のソファーに三人で座りました。


「ところでその子供たちは? 鈴江さんの孫?」

「いえ、こちらの‥‥」


 僕は鈴江さんをの言葉を制しその後を続けました。


「紗菜。私は信長だ。勿論織田信長じゃないぞ。お前の祖父の八条信長だ。生まれ変わった」

「はいはい、鈴江さん子供を使って私を騙すなんて冗談にしても過ぎるわよ」

「紗菜様、冗談ではないですよ。私が虎屋の羊羹を好きなこともご存じでしたし、そもそも騙すつもりならこんな外国人を使いませんよ」

「それもそうね。そっちの女の子は?」

「これは鈴だ。お前の母親だ」

「えっ、おっ、お母さん? 殺した人を恨んで彷徨ってたんじゃないの?」


 誰から聞いたんだよ? 分かるけど‥‥


 その時でした。

 隣の部屋の先生達が見ていたテレビ番組から速報が聞こえてきたのです。

 何と北京に続き上海まで隕石が落ちたとのことです。

 やばいです、何とかしないと月も地球も全滅です。

 既に転移を一度成功しているのです。またできるはずです。他の魔法もほとんどできるようになりました。後は転移を任意にできるようになれば戦えるはずです。究極魔法はもう少し魔力を練り上げ強くならなければ無理ですが。

 敵を殺すだけです。転移で近づき殺せばよいのです。艦隊を全滅させるわけではありません。恐らく成功するでしょう。まずは転移で月へ戻らなくてはなりませんが。


「また隕石が落ちたって、怖いわね」


 隣の部屋へ戻り一緒に速報に見入っていると白衣を纏った先生が同意を求めてきましたが、相槌を打つだけにしました。

 真実を地球人に知られるのは困るので何も言いません。隕石だと思っていてくれた方が都合が良いです。

 もう一人の女性は紗菜の高校時代からの友人の佐竹美桜さんです。


 なんでも、彼女は紗菜が命を狙われていることを知り、警察署を出ないようにしていてくれたらしいのです。しかし、なぜか突然釈放されて陰謀を感じた美桜さんは紗菜は死亡したとの誤報を流しここに匿っていたらしいです。


「伊織会長が殺害しようとしたのですか?」

「どうでしょう、会長は殺害は目論んでいましたが実行したかどうかは不明です」


 答えたのは紗菜の友人だという佐竹美桜さんでした。彼女は会長とは敢えて懇意にしていて、紗菜が不利な状況に置かれないようにコントロールしていたそうです。


「目論んでいたのなら伊織会長の殺害命令が実行されたと考える方がしっくりくるな」


 その時でした魔力が貯まったのを感じました。これなら転移できるのではないでしょうか。まずはジョンを取りに行かないと。ここで転移してしまうと月までは転移出来ないかもしれません。静江さんと一緒に電車で帰ります。


「ジョン、待ったか?」

「待たせ過ぎだ。さっさと帰るぞ」


 しゃべる犬を見た鈴江さんは漫画の様に目を丸くして驚いてました。



 ▼△▼△▼



 月へ戻ると戦争は激化していました。

 破壊された月の外殻から戦闘機が侵入し構造物を攻撃していました。既に人は中心部付近へ避難した後でしたので人的被害は少ないようです。

 我が国の戦闘機はある程度イントルーダーと渡り合えているようですが今一歩及びません。どんどん劣勢になって言っているみたいです。


「ジョン、スズを頼んだ。行ってくるよ」

「無駄だろうが、無駄と分かっても努力し続けろ」


 犬の辛辣な激励を聞き流し戦闘機の中へ転移します。


 残念。人は乗ってませんでした。外部で操作しているのかコンピューターの制御かのどちらかでしょう。中から破壊して離脱です。外殻は核爆発等の強力な攻撃を防げても内部からなら破壊出来ます。ユアーショックです。

 一台一台転移して破壊を繰り返します。月から地球への転移に比べればへでもない距離です。何度も転移破壊を繰り返し月からかなり離れた場所で指揮艦を見つけました。かなりの大きさです。

 パイロットが死亡し戦闘不能になった我が国の戦闘機を見つけたのでパイロットを月へと移動し僕が操縦します。


 ・・・・


 出来ませんでしたっ!


 ジョンを連れてきました、犬に戦闘機を操縦してもらいます。


「一人じゃ何もできないのか?」


 犬に嫌味を言われてますが気にしません。

 所詮あいつは改造犬です。


 指揮艦の近くまで飛んでもらい待機してもらいます。

 近くのイントルーダーの戦闘機は同じ手法ですべて破壊しました。


 指揮艦の中へ転移すると、慌ただしい様子です。走っていたのは人の形をしたトカゲ? リザードマンかと思いましたが恐竜から進化した高等生物でしょう。ラプトル系でしょうか?

 恨みはないですが焼いて行きます。


「フレイムアロー」


 取り合えず発動句を叫びます。

 勿論不要なのですが、雰囲気です。雰囲気は大事ですから。

 焼きトカゲの出来上がりです。


「ダイヤモンドウォール!」


 近くの燃えカスを利用し炭素を高温、高圧で結合したダイヤモンドウォールで背後を防御します。


 光線銃の光はダイヤモンドで屈折するので僕を狙えば僕には当たりません。壁を焦がすだけです。光は屈折するので僕の姿は見えないかもしれませんが、良いことです。


 正面からやってくる敵を剣で切ります。父の剣を持って来たのです。この剣は分子結合を破壊し切断するので良く切れます。

 刃が無くただの光の刃です、折れもしません、刃こぼれもしません。自在に伸びるので持ち運ぶ時はただの懐中電灯のようです。

 トカゲが三枚におろされていきます。胴のぶつ切りもお好みに応じて行います。内臓は敢えて取りません。

 もう魔力が尽きかけてきました。


 暫く隠れます。

 体をシールドで覆います。

 熱センサーも心音センサーも役に立たないでしょう。

 しばらく休みます。


「ジョン、暫く休む。通信も出来ないからな」

『早くその貧弱な体を何とかしろよ』


 この犬を地球の保健所に持ち込んでやろうとおもいます。


 周囲の喧騒をよそに備品室のような部屋で隠れて寝ます。煩いですがぐっすりです。

 どれくらい寝たでしょう。

 三十分は寝てました。魔力も少々回復しました。


「起きた。そっちは大丈夫か?」


 犬に連絡を入れます。


「あ!? ガキが心配するな。まぁ、無理だとは思うが、頑張れよ」


 応援してくれたのでしょうか?


 中心部に向かいます。

 恐らくそこにエンジンがあるはずですエンジンを破壊します。


 見つからないようにそぉーッと歩いて行きます。急がなければ月基地の被害が拡大するのですが時間をかけることで魔力も回復させているのです。

 宇宙で感じたのですが地球よりも魔力の回復がとても早いです。

 宇宙は魔力に満ち溢れているのです。

 恐らくブラックマターは魔力の塊なのでしょう。

 魔力を回復しつつ、敵を葬りつつ、喉が渇いたなと思いつつ中心部を目指します。

 敵に道を尋ねる訳にもいきません。

 言葉が通じるとも思えません。

 あ、そういえば、思考を読む魔法がありました。

 テレパスです。


「スタン」


 一人スタンで行動の自由を奪いました。

 さっそくテレパスを使ってみます。


『艦の中央はどっち、いや、エンジンルームはどっちだ?』

『誰が言うか。この宇宙人が、焼いて食っちまうぞ』


 余りの罵詈雑言に燃やしてしまいました。

 次を捕まえました。


『エンジンルームはどこ?』

『誰が言うかこのほうけ‥‥』


 燃やしました。

 まだ子供なので当然なのですがなぜかムカつきました。


 結局分かりませんでしたので中央と思われる方向に進んで行きます。

 あっ! やっと、やっとです、遂にエンジンルームに出ました。恐らくこれはエンジンでしょう。他の星のエンジンなんて見たことがありませんけどあたりだと思います。

 破壊すれば放射能が出るかもしれません。一度戦闘機に戻りジョンに事情を説明し船を離脱させました。

 エンジンを燃やします。燃えません。

 高温で溶かします。溶けません。

 叩きます。壊れません。

 頑丈です。

 どうしましょう。

 エネルギー過多にすれば壊れそうですが、あっ! 制御装置を壊しましょう。そうすれば壊れるはずです。

 場所が分からないのでまたスタンで爬虫類系人類とでもいうのでしょうか、もうリザードマンでいいです。彼らにも納得の名前のはずです。

 リザードマンを一人捕まえました。


「テレパス」


 頭に手を置き呟きます。まぁ必要ないのですが雰囲気です。


『なんだこの野郎。死ね。糞が。このたんし‥‥」


 燃やしました。

 なんだかムカつきました。

 誰も教えてくれません。

 こうなったら操縦室に向かいましょう。


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