第10話 アステロイドベルト
突然速報が入りました。
そもそも居住区の破壊という防衛システムを越えて攻撃が月に達したことが不思議だったのですがその原因が分かりました。
『本日、第三居住区への攻撃を受け第三居住区が消滅しましたが、その数分前にアステロイドベルト防衛ラインが一部破壊されていることが判明しました。地球と土星を結ぶ第二十四防衛ラインが無力化されていたのです。敵の攻撃は未知の武器を使用したと思われ依然その武器の正体は判明してません。防衛システムが復旧するまで月内部への避難をお願いします』
月内部にも居住区はありますが地下ですので閉塞感は否めないといわれました。息が詰まりそうですね。
臨時放送のすぐ後に校内放送で各自地下居住区へ避難するよう指示がありました。
「ノブ、一緒に避難しようぜ」
「おう、じゃあ、直ぐに準備するよ」
「当然私も一緒に行くわよ? ノブ、私の荷物持たせてあげる」
「ココ、ネネを一緒に非難しようぜ」
「酷ぉ~い! ノブ、最近冷たい!」
僕はずっと冷たいんだよ、それは気付いてほしかった。
まぁ、僕が冷たくすれば自然とココとネネが仲良くなるだろうことを見越して冷たくしてるんです。
嘘です。
「ノブ、冷たいぞ。ネネも一緒に避難しようぜ」
「うん、ココ大好きだよ」
あらあらお熱いことで。
「でもどうなるんだろうな。ノブ、どう思う?」
「アステロイドベルトは沢山の隕石で構成されてるんだけど、うちの国がどれだけの隕石に防衛システムを組み込んでいるか分からないけど、少なくはないと思う。おそらく、隕石を移動するだけで防衛システムは直ぐにでも復活するはずだよ。問題は敵の攻撃が何か分からないから防ぎようがないという点だよね。それが分かれば地下での生活も終わると思うけど」
「なんかお前おじさんぽいぞ」
悪かったな、仕方が無いだろ。
僕は無言で睨んだのでした。
地下へ到着すると学年ごとに集合です。まだ来てない者もいるのですが誰がどこにいるのかはすべて把握できてますので不安はありません。全ての人に存在するナノボットのお陰ですね。
「全員集合しましたね、ココ、今日は直ぐに来たのですね。あぁ、ノブが連れて来てくれたのですね、先生助かりました」
ココのクラスの担任に感謝されました、ココはいつも言う事を聞かない子みたいです。
「皆さん、静かにして下さい」
校長先生の話が始まるようです。
「本日北京が攻撃を受けました。知らない子もいると思いますが北京は地球の大都市です。中国という国の首都です。このことが意味することは既に地球は安全な星ではなくなったということです。安穏と暮らしていた地球人は敵が地球人以外にもいたことを知るでしょう。地球が一つの国になる契機となれば喜ばしいのですが、簡単ではないでしょう。その前にイントルーダーに滅亡させられる可能性も高い訳ですし。我が国の防衛システムをいとも容易く突破する攻撃システムを構築したイントルーダーの科学力には目を瞠るばかりですが我が国も簡単にはイントルーダーの目的遂行を許さないでしょう。皆さん暫くの辛抱です」
「あの校長先生、なんて言ってるか分るか?」
どうやら、小学生には内容が難しかったようです。あの校長先生も空気を読まない人なのかもしれません。ネネみたいに。
「なんか言った?」
ネネに睨まれました。感は鋭いようです。その鋭さを空気を読むことにも振り分けてほしいものです。
しかし北京ですか。
日本のすぐ近くです。
これは相続問題とか言ってる場合ではないのかもしれません。
相続と侵略が重なり、もう一刻の猶予もないのかもしれません。
早急に魔力が増える訓練が必要です。幸い、学校は暫く休校のようです。今の内に魔力を高めて転移魔法を使用可能にしなければいけません。
▼△▼△▼
「少しは賢くなったか?」
割り当てられた部屋で魔力を練っているとジョンに連れられた妹のスズがやって来ました。
相変わらず犬のくせに口が悪いです。
「アニ、日本行ける?」
「まだ無理だよ。心配なのは分かるがどうしようもない」
「紗菜逮捕された。このままでは死刑」
えっ?
逮捕?
殺されたのではなく?
「それ良かったんではないの?」
「なぜ? アニ馬鹿」
「だって捕まってる間は殺されないだろ?」
「ほう、なるほど、アニ賢い。でも死刑、殺される、このまま」
「それは僕が転移して真犯人を捕まえて無実を証明する」
「急げ、アニ期待」
「なんか中国人と話してるみたいだよ」
「むーっ! アニ、紗菜の代わり死ね」
警察にいる間は安心とは言え、日本の警察署なんてマシンガン持った数人で制圧できそうです。もし犯人が強硬に及び紗菜が殺されれば犯人死亡、書類だけが検察に送られ事件は終了となるでしょう。そうなれば真実は闇の中です。
でも、日本でそんな強硬に及ぶ人はいないでしょう。
100円を得るために100万円使うようなものです。プライドの為なら分かりませんが、利益の為ならしないでしょう。
暫くの間紗菜が殺されることはないと思われます。
「ジョン、スズを頼んだぞ」
「お前が守るよりも安全だ」
この犬はいつか保健所に送ってやりましょう。
『緊急速報です』
突然ホログラムモニターが立ち上がり緊急速報を告げてきました。
『イントルーダーの攻撃方法が判明しました。反物質の
遂に本格的な戦闘になりそうです。まるで休戦状態だった韓国と北朝鮮が戦闘を再開するようなものでしょうか。ここ数百年、本格的な戦闘には至らなかったのにここにきて本格的な戦闘になったのは地球の大気汚染が進みこれ以上別荘地予定の地球を汚染されるのはイントルーダー的には宜しくなかったのかもしれません。
モニターには格納庫の様子が映し出され、そこから月表層へ移動する戦艦が見えます。数百隻はあるのでしょうか。たったの一隻でも宇宙から攻撃すれば地球を滅ぼすことが可能な戦力を有しているそうです。核爆弾も防ぐシールドを船の周りに張ることができるので簡単には破壊されないみたいですね。
そのシールドの強化版ともいえる硬いドームが一撃で消滅したのです。イントルーダーの科学力が分かるというものです。
もうすぐ出発ですので既にかなりの数の船が月面に並んでいます。
後一時間程で出発するという時のことでした。
一筋の光が月の表面に走ったのです。
雷?
いえ、月では雷など発生しません。
不思議に思っていると戦艦が次々と爆発していきました。未だエンジンも始動せずシールドも展開していないとはいえ、ここもドームの中です。ドームが守っているのです。光はドームをすり抜け戦艦を攻撃したとしか思えませんでした。
そもそもドームは光を通さない物質で出来てます。地球人に発見されないためです。ですので可視光線は通過できないのです。しかしあの光はドームを超えてやって来たのです。
もう月基地は終わりかもしれません。
ただイントルーダーも月基地を破壊することはしないでしょうけど。
破壊すればイントルーダーが別荘地にしようとしている地球の環境が変わるのですから。
月基地が終われば地球人も終わりです。
イントルーダーは地球人を殲滅する予定です。
残される人は動物園のような場所で飼育されるか奴隷にされて扱き使われるのかもしれません。人権? そんな美味しいものはありません。
恐らく人はGのような扱いを受けることになります。
僕は魔力を練り上げます。体内の魔素含有可能量を増やすために、それをひとつ残らず魔力に転換できるように、その魔力を魔法に変換できるように。
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