第12話『妥当な結論』
「やけにあっさり決まったな」
ハンスが言うと、イサクが続いた。
「年齢層と得意分野がはっきり分かれてるからじゃないか。仕事内容も見事にバラバラだし、決めやすかったよな」
ポールが口を挟む。
「名のない力のイメージを本化する仕事は一切なかったんだけど、みんなそれでいいの?」
これにはリサが答えた。
「ああ、だってそれは里の花形の仕事でしょ。みんなその仕事がしたいために外注してるんだから。おたくだってそうじゃないの?」
アロンが異議を唱える。
「それは語弊があるな。俺たちの中でもその仕事に向いてるのはポールだけだし、NWSは人数が多いから、それを活かす仕事じゃないと」
「あら、失礼」
リサはあっけらかんと言った。
「生産修法の仕事を完成してもらうのに、NWSはうってつけだが――。君たちこそ、俺たちに任せてしまっていいのかい? 信用問題にも関わってくると思うんだが」
ロバートが配慮すると、マルクが答えた。
「この五つの里の仕事は、俺たちにとっても未知の仕事ですから。アロンが言うように大人数なので前準備も必要です。それと、信用は人と人が繋ぐもので、団体はブランドみたいなものですから、いい仕事をするかしないかによると思います。ですから、NWSの体面はお気になさらず、独自に活路を見い出していただきたいです」
「さすが余裕だね」
ロバートは感心して言った。
「自由にやらせてもらえるんなら、願ったり叶ったりですけどね」
イサクが後頭部で腕を組んで胸を反らせた。
「まぁそこは良心の許す限りって注釈つきだが」
フィリップがイサクの行き過ぎを止める。彼はシンプルハートディグニティの所属だった。
「もちろんいい仕事を心掛けますよ。皆さん、元気が取り柄ですから意気軒昂に乗り切ってしまうでしょうが。私はね、じっくり丁寧に取り組んで仕事を完成させる喜びを忘れたくないんですよ。まるで縫物をするようにじっくりとね」
フミナはそう言って楚々と笑った。
リサがファイルを斜め読みしながらこう言った。
「ウチもやるからには徹底的に仕事させてもらうわ。特化した技術が必要なら必要で、及第点以上を目指すつもり。そうじゃなかったら、NWSならもっといい仕事をしたかもって言われちゃうでしょ。それじゃ仕事を受注した意味がないわ」
ハンスはそれを聞いて言った。
「なるほどね。俺たちのスタンスはもっとフランクで、肩に力を入れないでやろうってことになってるんだけど、それもいい仕事をするためには必要だろ? 作業効率とか進捗管理とかはもちろん必要だけどさ」
あまり気負った考えのないランドスケープオブメルシーだった。
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