第12話『5つの仕事』

 コホン、と咳払いするマルク。

「まぁ、みんなも知っての通り、俺たちは先日手掛けたオーバーワークで、体制の見直しを迫られたわけだが――実はここ1週間で聞き取り受注した案件が、ここにちょうど50件ある。里ごとに分類してピッタリ10件ずつになる。これを団体ごとに分担して引き受けてもらいたい。まずはNWSで仕事をファイリングしたものを公表する」

 そう言ってマルクが5つのファイルを並べた。

 表題があり、こう記されていた。


①笑話の里の湖底供物浄化の仕事

②神話の里の衣服の仕立て作業

③空想の里の悪霊退治

④民話の里の民芸品テクスチャーの整理

⑤風刺の里の風刺画編纂作業


「……気合いがいるのから日用品まで、玉石混交ですね」

と言ったのはイサクだった。若さなのか、NWSにも遠慮がない。

「表題だけ見ると単なる手作業に思えても、中身は難しいよ。特に神話の里の衣服の仕立てなんかは、世界の大変革までに急ピッチで進めないといけない仕事だし、民話の里の作業も難易度が高い文芸員の仕事だ。甘く見ない方がいいぜ」

「脅かさないでくださいよ、アロンさん!」

「さてと、この仕事は里ごとに分かれてるから、都合全部やってもらうことになるが――どうやって決めますか?」

 フィリップがまとめに入る。

「いや、これは向き不向きがはっきりしてる。例えば、俺たちギビングスカイロードが衣服の仕立てをやっても成果は上がらないし、グロリアスポスタリティーが悪霊退治じゃ荷が重すぎる。ですよね、フミナさん」

「そうねぇ。やっぱりウチは平均年齢が高いし、神話の里のお仕事をさせてもらえたら士気が上がると思うわ」

 ロバートは穏やかに指摘し、振られたフミナは年長者らしくおっとり構える。

「だったらまず希望を募りますか。じゃあロバートさんから……」

「俺たちギビングスカイロードは笑話の里か空想の里の仕事を壮年らしく希望する」

「はい、次はフミナさん」

「グロリアスポスタリティーは神話の里の仕事を希望するわ。どうも収まりがいいようですからね」

「ハンス、どうぞ」

「ランドスケープオブメルシーはなんでもござれ。なんでもするつもりだから余ったのでいいよ」

「フム――じゃあイサク」

「シンプルハートディグニティも、笑話の里か空想の里を希望する」

「最後にリサ、どうぞ」

「私たちトラディショナルオークツリーは、民話の里の仕事を希望するわ。みんな難易度の高い仕事をしたくてうずうずしてるのよ」

「なるほど。それじゃあ3団体は決まりですね。グロリアスポスタリティーは神話の里。ランドスケープオブメルシーは風刺の里。トラディショナルオークツリーは民話の里ということで」

 フィリップが言って、3団体代表は問題なく了承した。

「それで笑話の里と空想の里の仕事ですが、2団体とも強いて言えばどちらを希望しますか? ちなみに笑話の里はホラー&肉体労働系で、空想の里はホラー&アクション系なんですが……」

「ロバートさん、お先にどうぞ」

 イサクが謙虚に年長者に譲る。

「じゃあ、お言葉に甘えて。そうだな……先日のNWSの仕事に感動したから、笑話の里の仕事かな」

「よし、決まりですね。ギビングスカイロードが笑話の里で、シンプルハートディグニティが空想の里ということで」

 受注する仕事が決定すると、安堵した空気が流れた。
















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