第12話『会食』

 話し合いは30分で事済んだ。

 視界のフィリップが締める。

「それでは、担当が決まったことですし、NWSからは先方に外注した旨を伝えてもらって。その後は担当団体が直接交渉してもらいたいと思います。お疲れさまでした」

「お疲れ様でした」

と、そこへ入れ違いに入ってきたのは、NWSのリーダーたちである。

 時刻は11時半。今日はみんなで報告も兼ねた会食を開こうと集まったのだった。

 時間があるフィリップとイサクが残ることになり、賑やかに料理が円卓に広げられた。

 野菜やチーズ、ハムをたっぷり挟んだサンドイッチ。天ぷらや唐揚げ、漬物がのっかったおにぎり。瑞々しいレタスや水菜、パプリカやスライスオニオンのサラダ。ジューシーな骨付きチキン。豚肉のアスパラ巻き。ローストビーフ。ワインやシャンパン、炭酸水、麦茶、ジャスミン茶など飲み物各種。

 そしてデザートは、ナタルの奥さん特製マンゴーシフォンケーキ。

「俺やトゥーラがいないのに頑張ったじゃん」

 ポールが明け透けに言うと、オリーブが笑った。

「三人寄れば文殊の知恵、六人集まれば文句なしのチームワークってね」

「うまい! 座布団一枚」

 調子に乗ってポールがおだてる。

「マルク、アロン、会議はどうだった?」

 タイラーが聞くと、二人は譲り合ったが結局マルクが話す。

「ものの30分で終わったよ。仕事は里ごとに分かれてるし、特色もあったからな。受注した団体の年齢層、技術力、得意分野も誂えたようにぴったりだ」

「へぇ」

「あとは団体の仕事次第だな。俺たちはいい仕事をしてもらえればそれでいいけどさ」

 アロンが言うとイサクが割り込んだ。

「任せといてくださいよ! NWSが悔しがるくらい、いい仕事しますよ」

 すかさずタイラーが言う。

「相変わらず威勢がいいな、イサク。張り切り過ぎて大失態なんてことになったら目も当てられないぞ」

「酷いなぁ、タイラーさん! 俺だってもういい歳ですよ、分別くらいありますって。あ、でもNWSにはいい歳してガキみたいなのもいましたっけ」

「フン、どうだか」

 反応したのはキーツである。

 キーツとイサク。

 この二人、NWSの初仕事の時、同じチームになって方針をめぐり火花を散らしたという因縁がある。

 イサクが聞き漏らすはずがなく――。

「なんだテメェ、やるか⁈」

「空気読めないやつ。食事が不味くなるよ」

「なにを――っ⁈」

「やめろイサク。招待されてんのにキレるな」

 フィリップが諫めると、ナタルもキーツをなだめた。

「キーツ、抑えて抑えて」

「フン!!」

 二人して特大のケリをつける。















 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る