第11話『魂浄め』
夜になった。
噴水広場には大勢の人が駆けつけ、魂浄めに参加することになった。
もちろんNWSのリーダーたちも気合い十分だ。
噴水の前、祭壇に置かれたおもちゃたちは、綻びを繕ってもらったり、ペイントを塗り直してもらったりして、見違えるようだった。
そして、周りには里人の心尽くしの暖かい料理やお菓子、花束などで埋め尽くされていた。
光のオーブがそこら中を乱舞している。
還ってきた子どもたちの魂が癒された証拠だ。
長老がてくてくと祭壇の前にやってきて、粛然と言った。
「では、そろそろ始めようかの。ナタル君、指揮を頼むよ」
「は、はいっ!」
思いがけない指名だった。
ナタルは大勢の前でカチコチになりながらも、目だけは希望に輝いていた。
「ナタル、頑張って」
オリーブが両手を組んで小さな声で応援する。
ナタルは短く挨拶した。
「それでは皆さん、心を合わせて唱和をお願いします」
スウッとナタルの両手が顔の高さまで上がって止まる。
「1・2・3、はい!」
そこで始まったのは、呪文でもお経でもない、歌。それもアカペラだった。
おもちゃが発してる波動がメロディとなって低く流れている。
それを聴き取って、みんながメロディーを追って輪唱するのだ。
繰り返し繰り返し同じメロディが流れる。
すると、そのうち光のオーブが子どもの幽体となり、小さな胸を反らせて銀霊鳥となって羽ばたくのだった。
魂の容れ物だったおもちゃも一つ二つと光の世界へ還っていく。
胸の詰まるような荘厳な光景だった。
光を散らして銀霊鳥が噴水広場を旋回し、最果ての星の野原を目指して飛び立っていく。
最後の一羽を見送ったみんなの心の中で、美しい思い出となって彼らは生きていく。
「……引き受けてよかったな」
タイラーが呟いたが、それはみんな同感だった。
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