第11話『他の団体との兼ね合い』
フィリップたちが行ってしまうと、十人は車座になって話し始めた。
「童話の里の他団体から見て……NWSって閉鎖的な上に手柄独り占め状態だったんだね」
ナタルが言うと、アロンが続いた。
「今回のことで帳尻が合ったのかもな」
「でもさ、鬱屈した思いをぶつけられても。僕らは自分たちの立場で一所懸命仕事してるだけなんだから。他の団体の下手に出るのも変だし、仕事欲しいなら欲しいで、ちゃんと申し入れがあってもいいんじゃないの?」
キーツが不満を口にすると、トゥーラが冷静に言った。
「そうね。でもこの場合、NWSは強い立場なんだから、よく言われるように少数にへりくだらないと。フィリップの申し出は順当だわ」
「いつからそんなに羨ましがられていたんでしょうか? 代表が世界の大変革の中枢を担うようになってからですかね?」
ルイスが首を捻って言うと、マルクが言った。
「いや……おそらく修法者の傘下で安定した仕事が貰えるようになってから。つまり、NWSの結成当初から潜在的にあったんじゃないかな。代表は優秀な修法者だっていう箔もついたし、そこからは落ち込み知らずの業績だったからな」
「なるほどな。他の団体からすればやっかみがあって当然だし、考えてみようともしなかったが、NWSの傘下に入るというのは自尊心が許さない、ということか」
タイラーが思い至ると、ポールも言った。
「そっか。俺たちはと言えば、ツキまくってることに麻痺しちゃって、団体の維持に必死になってる少数派には目もくれなかったもんね――そりゃ妬まれるよ」
「フィリップさんの呼びかけに応じてくれるでしょうか?」
ランスが気にかけるとアロンが言った。
「大丈夫でしょう。他団体は何はともあれ仕事が欲しいんだから、それこそ一所懸命こなそうとすると思う。それと、NWSの傘下じゃなくて、推薦したい旨をクライアントに伝えれば、NWSと肩を並べる機会を得るわけだ。それは願ってもないチャンスだよ」
オリーブが少し考えてから言った。
「……NWSはポールが言ったように、ツキまくりすぎて今回みたいな横風に弱くなってることに気づかなかったのね。精一杯仕事してるつもりだったけど、それだけじゃダメなんだわ」
タイラーが気を引き立たせるように言った。
「今回のことはさっきも誰かが言っていたが、俺たちの実力不足が原因だ。——世界の大変革の騒ぎですっかり置き去りになってるが、俺たち自身の技術向上も視野に入れた方がいい」
「その間に他団体に頑張ってもらうというのはどうでしょう? 幸い俺たちは経済的には困ってないですし、旗色が悪くなるようなこともないと思いますけど」
ルイスが言うと、アロンが一言。
「どっちにしても、世界の大変革の後だな」
「うん」
全員が頷いた。
「もうみんないいくらい反省したよ。そろそろ休憩を切り上げて仕事に戻らないかい? 今頃、長老たちに預けたおもちゃも、里の人たちの手できれいに直ってるよ。魂浄めには参加しないと」
ナタルが言って「それもそうだ」ということになり、その場をお開きにして十人は生産修法の仕事に戻った。
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