第11話『ここだけの話』
二人の里人は、男性がフィリップ・アスペクター、女性がテルミ・プレイナーといった。
フィリップが呆れ顔で言った。
「あんたら、最近の活躍が裏目に出たんじゃないのか? いつもぬる~い仕事しかしてないのに、突発の魂浄めの仕事なんざさせられたら、誰だってそうなるぜ」
口いっぱいにナポリタンをほおばりながら、ポールが言った。
「そうは言うけどさ、成り行き上仕方ないじゃんよ。初めに発信者になったからには、依頼は基本ウエルカムでしょうが」
「だからさ――担がれたんじゃないのか? 笑話の里に。「自分たちはこういう仕事もしなくちゃいけないんだ。NWSにできるのか」ってさ」
「笑話の里の抗議だって?」
ナタルも小さく手を上げた。
「俺もちょっと思った。もっとユーモアで解すれば、納涼肝試しセットみたいなもんかな、と」
「なにそれ? もしそうなら夕べ必死こいておもちゃを浄化した僕らがバカみたいじゃん」
キーツが鶏の照り焼きを歯で引きちぎって憤慨する。
「まぁまぁ。私たちは確かに不慣れな作業でまごついてしまいましたが。対処しきれずに被害を被るよりはずっとよかったですよ。そう思いませんか?」
ランスがなだめたが、キーツはぶすっとして言った。
「納得いかないなぁ」
フィリップが同情して言った。
「あんたらだけじゃ手に余るんだろ? だったらほかの団体に仕事を振っちゃどうだ。みんな文句たらたらだぞ。なんでNWSばっかり! ってな」
「……まぁ、NWSじゃなきゃダメってこともないしね。それはいいけどさ、前面に出てくれないんだから、仕事の振りようがないよ」
ポールが言うと、フィリップがニッと笑った。
「俺が仲介してやるよ。NWSが仕事発注したいって言ってるってな。そうすりゃ生産修法の仕事だって、もっと協力してもらえるはずだぜ。国内には大した仕事が残ってないんだから、食いつき早いぜ、きっと」
「なるほどね……みんな、それでいい?」
ポールが仲間に聞くと、口々に賛成の声が上がった。
「夕べのことで計画に無理があったことは明らかだからな。ここらで方向転換は必要だと思う」
マルクはテルミに麦茶を注がれながら言った。
「そうだな、生産修法に支障が出るような仕事は努めて避けるべきだし、そういう仕事は別枠で長期的に取り掛かった方がいいだろう」
アロンも苦々しく言った。
「負けは認めた方がいいわね。確かに笑話の里の仕事は、私たちには務まらないわ」
「そうですよね……あのおもちゃにしたって、ほんの一部でしょうから」
トゥーラが潔く言うと、ルイスも同意した。
「ごめんね、みんな。私があの仕事を受注したから――」
オリーブが目を伏せて頭を下げると、ポールがあっけらかんと言った。
「なんだ気にしてたの? あれは俺たちの実力不足なんだから、連帯責任でしょうが」
「そうだよ。笑話の里に対する無意識の劣等感がこの事態を招いたんだから、いつかは表面化してたと思うよ」
キーツも言うと、ナタルも頷いた。
「無事に終わってよかったじゃないか。あんまり気にしないで、心尽くしをいただこうよ」
「うん、ありがと」
その成り行きを見ていたフィリップが言った。
「本当にあんたらは人が好すぎる」
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