第94話 転生歴女を読んで自分の現実と向き合っちゃいました。
●今回の読書作品
【作者】 平沢 ヌル 様
【作品名】 転生歴女 (エブリスタ・小説家になろう)
●今回の読書会参加者
加納友美:動物と話せる高校生。オールジャンルOK なりきりスキル発動によりどんな作品も対応可能。
ハリモグラのサッチャーさん:友美さんが出会った、動物界随一の天才のハリモグラ。世界ランカー級の実力を持つ人間とのオセロ勝負では神の一手を指し切れず絶命。
電気ウナギの電気ッチ:アマゾン川で捕獲され日本に来た、マイペースなデンキウナギ。法則がわからないビリビリと言うのが口癖。目が見えない為、読書会では友美さんが読み聞かせている。
既に読書会が始まり4時間。
私達は今回の作品を全て読み終え、なんとも表現しがたい余韻に浸っています。
「友美ちゃん。今回の作品は事前に作者様から、簡単な作品全体の区切りを頂いているのよ」
ハリモグラのサッチャーさんはテーブルの上に陣取り、タッパーに入った解凍した冷凍のアリをモグモグと摘まみながら話しています。
「え?そうなの?どんな内容なの?」
「その前にまずこの作品は全七章からなる異世界転生恋愛作品よ。そしてSF要素もある作品ね。あらすじにはペダンティックの文字の記載もあるわ。とても私好みの作品よ。そして事前に頂いたのは以下の様な内容よ。解説も加えるわね」
●一章の七話まで→キャラの把握
「私はここまでで既にキャラの心情イメージは固まったわ」
●一章の終わりまで→物語の構造把握
「各キャラの恋愛の行方、帝国滅亡に追いやった災厄と言う物の謎。大きく分けてこの二つが物語の中枢だと思ったわ。結果的にそんな単純な物語ではなかったけどね」
●三章終りまで→作品の本領発揮
「あっと言う間に引き込まれたわ。凄かったわ」
●その後最後まで→物語が大きく動く
「一言で言うと良い意味の絶句ね。ハアハア……」
(サッチャーさん……息遣い荒いけど大丈夫かな……)
「これからこの作品を読む人達は、これを念頭に置いて読むといいと思うわ」
電気ッチも、狭い水槽の中にも関わらず、大満足の様子で話に入って来ました。
「ビリビリ。でも一度読み始めたら、ビリビリきっと止まらなくなると思うわよビリビリ」
「うん!すごくいいお話しだったね!」
「友美ちゃん。あなた馬鹿にしてるの?相変わらず知識のなさを露呈した発言は止めなさい」
「え?」
「この作品をいいお話しって言う、安っぽい言葉で終わらせないで頂戴」
サッチャーさんは背中の針を全開に逆立たせて、怒りを露わにしています。
「ビリビリ。そうだわ。今のはビリビリ友美ちゃんのビリビリ発言がビリビリ不用意だったとビリビリ思うわ。針のモグラさんがビリビリ怒るのは無理もないわビリビリ」
「…………」
(電気ッチ……いつもより口癖多くない?あとビリビリ友美ちゃんって、なんか嫌だな……)
サッチャーさんは針を逆立たせたまま、話始めました。
「良く聞きなさい。まずこの作品なんだけど心情描写の部分に秀でているわ。各キャラ達の現在の心境がしっかりと起承転結、つまり現状の感情に至るまでの形成の様子が段階を追って細かく、しかも哲学的に描写されていると感じたわ。それが結果的に各キャラを深く掘り下げる事に繋がり、自然とキャラ達に感情移入出来る作品に仕上がっているわ」
「そうねビリビリ。自分が物語の中に入ってビリビリ神視点で傍観している様に感じたわビリビリ」
「電気のウナギさんもそう感じたのね」
「ええ。ビリビリ」
(そんな短い返事にも口癖入るの?)
「この読書会はネタバレは極力厳禁の方針だから、内容について細かく語れないのは残念だけど、唐突に描写されたSF要素のある世界観は、この作品に深みと円熟味を与えているの。それが一つの物語としての虚構の秀逸さを掘り下げているの。こんな物語よく考え付いたわね……と絶句したわ。あと、これは誤解されるから言うのを迷っている事があるんだけど、言っていいかしら?」
「ビリビリ。針のモグラさんお願い。ビリビリ」
「………」
(え?電気ッチの仕切り?ちょっと待って……読書会の主催者は私なんですけど……)
「まず前提として言っておくけど、この読書会で取り上げた作品は、全て作者様の魂がこもった、楽しく、素晴らしい作品ばかりだわ。だから順位と言う概念はないと認識して欲しいのだけれど、この転生歴女と言う作品は読書会で取り上げた作品の中でも文芸的完成度と言う意味では、LeeArgent様とアンデッド様、筆折作家No.8様の作品に並ぶ作品だと個人的に思うわ」
「ビリビリ。それに七章の第二話は、この作品屈指のビリビリ神回だわビリビリ。友美ちゃん、あと5回くらい読み聞かせて頂戴。ビリビリ」
「確かにその回は凄かったね!」
「そうね。本当に凄すぎて的確な言葉が見つからないけど、衝撃の事実、そして葛藤や二人の掛け合い、自分自身とどう向き合い、自分の気持ちにどう結論をつけるか……未来の事、過去の出来事、苦しみや愛情……。本当に素晴らしいわ」
「ぜひ最後まで読んで欲しい作品だよね!」
「そうね。作品全体を読んでこそ、この作品が何を訴え、問いかけているかが初めてわかるわ。最初はスロースタートで進むんだけど、しっかりと世界観の土台が脳裏に植え付けられるから、心情描写が多くても読みにくいと感じた事はなかったわ。最初は私、敢えて言うなら女性向け作品なのかなと思ったけど、緻密な描写は男性に共感を得られるとも思うわ。とにかく凄い作品ね」
「ビリビリ。視点が変わるエピソードもあるけど、進めて行くとちゃんとわかるわねビリビリ」
「そうね。タイトルや前書きに、○○視点と言った様に補足してくれている作品もあるけど、この作品に関しては全体の雰囲気から考えるといらないわね」
「そうだね!………ん?」
サッチャーさんはアリの入ったタッパーの蓋を被せて、突然私に向き合いました。
「友美ちゃん。この読書会も100話で…つまり、もうすぐあなたが東京に進学するからおしまいね?」
「あ、う、うん………」
「私もこの読書会の参加は今回で最後よ。死後の世界からの参加と言うご都合主義による物だったけど、もう一度あなたに会えて良かったわ」
「え?」
「そして、最後の参加でこの作品に出会わせてくれてありがとう。この作品はもちろん、今まで読んだ作品の事は死後の世界へ戻っても絶対忘れないわ」
「…………サッチャーさん………」
「友美ちゃん。本当にありがとう。あなたの事は頭が悪いと馬鹿にしてばっかりだったけど、過ごした時間は本当に充実して楽しい物だった。もし、別の生物に生まれ変わってもあなたと出会いたい。出来れば今度は人間として……ね」
「サッチャーさん!もう会えないなんてやだよ!」
「泣くのは止めなさい友美ちゃん。信じていれば必ずどこかで出会えるわ。それは、今日この作品を読んでわかったはずよ。だからその想いを信じる力に変えなさい。私も信じ続けるわ」
「…………」
私は泣いていました。
止めなさいと言われても、涙と言う鉄砲水はどんな堤防をもってしても止める事が出来ません。
「針のモグラさん。ビリビリ。友美ちゃんの事は任せておいて頂戴。ビリビリ」
「ええ。お願いね。電気のウナギさん。それじゃあ、本当にさよならね」
「あっ!!いやだよー!!………」
私の叫び声を無情にも無視して、サッチャーさんはまばゆい光と共にその姿を消し去りました。
「…………」
「友美ちゃん。ビリビリ。泣いちゃ駄目よビリビリ」
「う、うん。ありがとう電気ッチ」
(サッチャーさん。あなたの厳しさと誰にも負けないって強い意志……。忘れないからね。いやだけど……バイバイ……)
私はその後も少しの間泣き続けましたが、電気ッチの『泣いたら水槽の中に手を入れて放電するわよビリビリ』と言う優しい言葉に救われ、朝までサッチャーさんとこの作品の事を語り明かしていました。
作者 平沢ヌル 様
今回はありがとうございました。
今回の作品はこちらからどうぞ。
https://estar.jp/novels/25978664 (エブリスタ)
https://ncode.syosetu.com/n7244hv/ (小説家になろう)
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